グロバー解放軍との接触
「・・・凄い・・・こんな乗り物見たことがない・・・!」
メタリアルに搭乗したエルフ、ドワーフ、獣人の三名は、内部の様子にただただ圧倒されていた。
「これで俺達は、ワルド大陸から来ました。」
「・・・なるほど。これほど凄い乗り物なら、ヤミーの軍勢を突破できてもおかしくない。」
「・・・この乗り物の素材・・・材質はミスリルとオリハルコンの合金か!?驚いたな!これほどまで完璧な合金は見たことがない!」
「・・・それに、乗り物と思えないほど揺れがないわね。ここ、空の上なんでしょう?」
彼らは口々に、メタリアルの凄さを称える。それを聞いていたソウの表情は、どこか自慢げである。
「まあ、それは企業秘密で。・・・ところで、皆さんは何者なんですか?見たところ、ヤミーと敵対しているようですが?」
「・・・我々は、グロバー解放軍の者だ。」
エルフの男性が、自分達の正体を明かす。
「グロバー解放軍?」
「グロバー大陸を解放するため、グロバーにあった国の生き残りが集まって結成された軍だ。」
「こっちのエルフはウッド、ドワーフはストン、私はキャトよ。元々は、それぞれの種族の王国の軍に所属していたんだけど、国が滅ぼされてからは一緒に戦っているの。」
獣人の女性が、自分達の名前と過去を風太達に告げる。
(・・・国王の言っていた、抵抗活動を続けている人達というのはこの人達だな。)
「そのレジスタンスの人間が、どうして魔兵士に襲われていたんですか?」
「それは・・・。」
「迷子じゃねーのか?」
「君じゃあるまいし、それはないだろう。」
「場の空気和ませるジョークだ。」
焔の言葉にツッコミを入れる震。焔は、それを冗談だと返すが、機内には微妙な空気が流れるだけだった。
そんな空気を振り払うかのように、ドワーフのストンが口を開く。
「・・・わしらは食料の確保のために外に出たのだ。」
「食料の確保?」
「わしらレジスタンスは、あらゆる点で事欠いている。戦力はもちろんのこと、食料も物資もだ。だから、定期的に食料調達に出て確保している。」
「事欠いてるって、どんだけねーんだよ?」
「首脳部である王族ですら、満足に食えん状況だ。ましてや、一般の兵士になると、一日一食、食えればいい方だ。」
「・・・そんな・・・。」
(・・・こんな極寒の土地じゃ、色々不便だろうな。ましてや、ヤミーから隠れているんだから、もっと不便だろう。)
レジスタンスの辛い現状を知り、風太達は心を痛める。
「私達は、ヤミー侵攻前から仲が良かったから、よく一緒に組んで仕事していたの。今回もその一環だったんだけど・・・。」
「運悪く、ヤミー軍の部隊に見つかってしまい、あの様だ・・・。情けない・・・。」
自分達のミスで役目を果たせずに終わったことに、ウッドは項垂れてしまう。
「・・・風太、どうしよう?レジスタンスの人達は困っているみたいだけど・・・?」
「残念だけど、僕達の物資を分け与えるのはできないと思うね。メタリアルにある物資は、僕達が使うことを想定した量だ。数人程度ならともかく、数百、数千、下手をすれば数万かもしれない。そうなると無理だ。規模は分からないけど、おそらくそれだけの規模の人員がいるんじゃないのかな。」
「その通りです。現在、解放軍の人数は、戦士や非戦闘員を含めて一万人ほどです。避難民なども含めると、その十倍、いえ、もっといくかと。」
「十万以上って・・・。」
「・・・俺達のもの分けてやるのは無理だな、それじゃあ。」
あまりの多さに、渚も焔も無理だと認める。
「か・・・考えはある!魔物を狩り、その肉を食料にするという手がある!それならこの状況でも食料の確保が・・・!」
「魔兵士にフルボッコにされてたあんたらが、マトモに狩りなんてできんのか?」
「う・・・!」
焔のストレートな感想に、ウッドは何も言えなくなってしまう。それを見た風太と渚は、慌ててフォローに入る。
「ま・・・まあ、ランクGかHの魔物なら、狩れるかもしれない!」
「そうそう!ヘッドバードとか!」
「・・・緑川風太、青野渚、フォローになってない。そんなランクに低い魔物じゃ、食用に適さないか、大量に狩らないと足しにもならないよ。労力もかかるし、数が増えれば敵に見つかるリスクが高まる。頭のいい方法とは言えないね。」
「・・・。」
震に正論を言われ、フォローしようとした風太と渚はおろか、助けた三人まで黙り込んでしまう。
「・・・まあ、手がないわけじゃない。」
「?・・・それは・・・?」
「僕達が強い魔物を狩って食料にすればいい。強い魔物なら、数が少なくてもかなりの量になるはずだ。或いは、敵の拠点でも潰して物資を奪うとかかな。」
「そいつはいい!敵を倒せて、食い物の問題も解決できるなんて、一石二鳥だな!」
「馬鹿な!そんなことできればわしらはこんな苦労はせん!」
震の提案に、ストンは怒る。それができないからこそ、こんな状況なのだから。
「大丈夫だぜ、おっさん。俺達なら、拠点を潰すくらいわけないぜ。なあ。」
「はい。俺達に任せてください。」
「・・・。」
あまりに自信満々な彼らに、三人は不安を覚える。確かに、あれだけの数の魔兵士を倒したことは、素直に凄いことである。しかし、拠点となれば、あの数の比ではない魔兵士がいる。おまけに魔兵士の比ではない強さの魔将軍もいる。とても潰せるわけがない。そう考えていた。
だが、それから数時間で、彼らは自分達の認識が間違いであったことを知るのであった。