メタリアルの追加機能
『闇獣とは、闇の神が己の力の残滓より生み出した魔物です。いえ、魔物モドキというのが正確ですね。あれは、命のないただの人形にすぎません。』
機内に戻った風太は、スペリオルサンダーバードにこの先にいる敵の情報を話してもらっていた。
「で、その闇獣が、グロバーに行こうとする奴を上空で待ち受けているってわけか。」
「どれくらいいるんだい?」
『そこまでは・・・ですが、我が一族より多いのは確実かと思います。』
「お前の一族は、どれだけいる?」
『千はいます。・・・ですが、敵は千では足りません。万・・・いや、最悪、もっとかと。』
「・・・万を超す敵・・・か。前に王都を攻めてきた戦力と同じか、それ以上ってことだな。」
風太は、以前の王都防衛戦のことを思い出す。あの時は、敵が弱かったこと、ソウの介入があって何とかなったなと、風太は思い返す。
(でも、あの時と状況は違う。あの時は、俺と渚しかいなかったし、五大竜の力も大して引き出せていなかった。でも、今は焔や震もいるし、俺達自身も強くなっている。おまけに、五大竜の力も相当引き出せているし、三体もいる。負ける要素がないな。)
「・・・そのくらいなら問題ないな。いざとなれば、フィード達を召喚して突破すればいい。」
「だな。三体の五大竜がいれば、何てことねーだろうな。」
「でも、油断は禁物だよ。ひょっとしたら、Sランク相当の敵が万単位かもしれないよ。」
「そうなると、エリアス達は大丈夫でも、メタリアルが壊されてしまうかもしれないね。」
「・・・それは困るな。」
メタリアルは、単なる移動手段ではなく、拠点である。もし、万が一にもメタリアルを失うことになれば、グロバーでの戦いは、厳しいを通り越して不可能に近くなるだろう。そう思うと、風太も楽観視できなかった。
「ふふふ。安心して。そんな簡単にやられるメタリアルじゃないよ。それに、いい機会だ。メタリアルの強さを見せてあげるよ。真白、あれを使うよ。」
「分かりました。」
真白は、操縦とは別の操作をする。すると、風太達の前に、台座が現れる。
「・・・何だこれ?」
「この台座にサモンカードを置くと、その魔物の属性をメタリアルに纏わせたり、攻撃に利用することができるんだ。置く魔物が、強ければ強いほど、強力になるよ。」
「こんな凄いの付けたのか!」
「まあね。あと、これは複数のカードが置けるけど、置くのは同属性にした方がいい。別の属性だと、相性の関係で弱体化してしまうおそれがあるからね。」
「なあ、早速使ってみようぜ!」
「敵もいないのに使うのはどうかと思うけど・・・。」
「まあ、試し撃ちと考えればいいんじゃないか。」
「どのカードを使うの?やっぱりフィード?」
「さすがに、フィードで試し撃ちはオーバーだろ。・・・そうだな。」
風太は、どの魔物を使うか考えた。試し撃ちなのだから、そこまで強くなくてもいいとは思うが、あまりに弱ければ、それはそれで参考にならないと思った。
しばらく考えた風太は、スペリオルサンダーバードのカードを置く。
「スペリオルサンダーバード。お前の力を見せてほしい。頼めるか?」
『分かりました。光の神の眷属の力、お見せしましょう。』
「真白、頼む。」
「分かりました。メタリアルキャノン、発射準備。」
すると、メタリアルの口の部分に、光が集まり出す。
「おお!あそこから出るのか!・・・まあ、竜型だから出すとしたらあそこしかねーか。」
「撃っても影響のない所に撃ってくれ。」
「分かりました。・・・3、2、1、発射!」
メタリアルの口から、目も眩むほどの強烈な閃光が放たれる。閃光は、遥か水平線の彼方へと飛んでいく。数十秒、いや、数秒のことだったか。閃光は徐々に細くなり、消えていく。
「・・・すげーな・・・。」
何かを破壊したわけではないため、正確な威力は分からないが、閃光の眩しさと規模、あと感じ取った魔力から、おおよその推察はできた。当たれば魔王であったとしても、ひとたまりもないであろう。
「Aランクの魔物でこの威力だ。もし、Sランクの魔物や五大竜となれば・・・。」
「・・・世界、終わるんじゃねーか?」
「・・・ソウ。メタリアルキャノンは必要な時以外、封印だ。」
「・・・だね。」
風太達は、メタリアルキャノンを封印することに決めるのだった。
「じゃ、じゃあ、次のメタリアルに纏わせるって機能を試してみてよ。これなら安全だと思うよ。」
「・・・真白。その機能を頼む。くれぐれも、慎重に。」
「・・・分かりました。エレメントシールド、展開。」
真白が何を操作すると、メタリアルの周囲に光の壁が展開する。光の壁は、電気を帯びていた。
「おお!こいつはすげー!」
「なるほど。属性を付与した障壁か。これなら、相手次第だと防御だけでなく、攻撃にも転用できそうだ。」
「これいいな!さすがは真白!」
「いえ・・・これはソウさんのアイデアです。私は、指示通り作っただけです。」
「それにしても、よくこんなこと考え付いたね。」
「ああ、これね。これは、風太達の世界にいた時に読んだ本を参考にしたんだよ。確か、SFとかいうやつだったかな。」
「なるほど。どおりでどこかで見たような武器だと思ったよ。」
メタリアルの武器の起源に、風太達は思わず笑うのだった。