トラブル発生
出発してから一時間ほどが経過した。メタリアルは、ワルド大陸を離れ、海上を移動していた。
「・・・もう大陸を離れたか。予定より早いな。」
「試運転時よりスピードが出ているらしいからね。・・・にもかかわらず、機内にいてもそうは感じないんだから、凄いものだね。」
「真白のおかげだ。こんないい感じに仕上げてくれて、ありがとう。」
風太は、メタリアルを完成させた真白に礼を言う。真白はその言葉を聞き、顔を赤らめる。
「そんな・・・私は・・・ソウさんの言う通りにやっただけですから・・・大したことはしていません・・・。それに、元々メタリアルは、ソウさんが作ったものです。私は・・・少しだけ手を加えただけです。」
「んなことねーって。寧ろ、真白のおかげでこいつはマトモに飛べるようになったんだ。ソウよりお前の方がすげーって。」
「・・・傷付くな・・・。」
焔の言葉に、ソウは床を指で弄る。
「・・・?皆、レーダーに何か映ってる。」
「え?」
渚に言われ、風太達はレーダーを見る。このレーダーは、真白の提案で設置されたもので、魔力の反応を映すように作られていた。それを見て、風太達は驚く。メタリアルの進行方向に多数の反応が見られたのだ。
「・・・ソウ。これは・・・?」
「・・・反応と数からみて、魔物だね。おそらく、飛行系の魔物の群れだね。」
「飛行系・・・鳥系か?」
「・・・これだけじゃ分からないね。あくまでこれは、魔力の反応を映すだけだから。数と強さしか分からないよ。」
「どれくらいの強さなんだ?」
「そうだね・・・ランクで言うならEかF程度だね。でも、一体だけAがいるね。」
「Aランク・・・会話ができるのなら、何とか回避したいね。」
「或いは、迂回するのも手かもしれない。ひょっとしたら、僕達の進行方向は、魔物の縄張りの可能性もある。」
「・・・真白。魔物の群れを迂回して、グロバーに向かってくれ。無駄な戦闘をしている余裕はない。」
「分かりました。」
真白は、魔物の群れを避けるように進路を変更する。だが、しばらくして、魔力反応が移動を始め、再びメタリアルの進路を塞ぐように表示される。
「!?これは・・・明らかに俺達を遮るように動いている!」
「縄張り内の移動でないのなら、僕達を妨害するために送られたヤミーの刺客かもしれないね。」
「・・・ソウ。メタリアルは戦闘ができるのか?」
「一応はね。でも、最低限だけどね。ただし、防御に関しては、力を入れているよ。魔法障壁を張っているし、機体の装甲材もミスリルとオリハルコンの合金だ。ちょっとやそっとじゃ壊せないよ。」
「なら、下手に戦うより強行突破した方がいいんじゃねーか?」
「そうだな。よし、真白、スピードを上げて魔物の群れを突っ切ろう!強行突破だ!」
「分かりました。スピードをもう少し上げます。」
真白は、スピードを更に上げる。しばらくして、魔物の群れが風太達の視界に入る。それは、全身が光でできた、鳥の形をした魔物だった。
「・・・あれは、サンダーバードだ。光属性の鳥系の魔物だ。」
「確か、雷の身体を持っていて、武器とかで攻撃したら、逆にダメージを受けてしまうって本に書いてあったような・・・。」
「メタリアルは大丈夫なのかよ?金属は電気を通すんだろ?」
「ミスリルやオリハルコンは、普通の鉄とは違うよ。電撃だって通さない。それに、魔法障壁があるから、機体に触れることはないよ。」
「なら、安心だな。このまま行こ・・・。」
「・・・真白、一旦止めてくれ。」
「え?」
このまま突破しようと言おうとした焔の言葉を遮り、風太は真白にメタリアルを止めるよう言う。
「おいおい、何考えてんだよ?メタリアルなら大丈夫だって言われただろ。」
「光属性の魔物は、まだ契約していない。あいつらのボスと話をして、契約する。」
「別に、無理して契約する必要はねーだろ。それに、ヤミーの手下だったら契約できねーだろ?」
「いや、まだヤミーの手下と決まったわけじゃない。何か別の理由があるのかもしれない。それに、魔物との契約は、テイマーを強くする。強い魔物なら、なおさらだ。契約できる魔物とは、契約した方がいい。それに、サンダーバードは役に立つ。契約すべきだ。」
「ありがとう、ソウ。真白、頼む。」
「分かりました。お気を付けて。」
真白は、メタリアルを停止させると、ハッチを開く。
「じゃあ、行ってくる。もし、まずくなれば、フィードを使う。」
風太は、仲間達にそう言うと、外へと出て行くのだった。