いざ、グロバー大陸へ
「物資の積み込み、終了しました。」
兵士が風太に、メタリアルへの積み込みが終了したことを告げる。
「ありがとうございます。」
「いいえ、勇者様のお役に立てるのなら。」
兵士は誇らしげに言う。
「・・・これで、準備完了だな。」
「おう。いつでも出発できるぜ。」
「じゃあ、行こうか。」
「勇者殿。そろそろ行かれるのかな?」
今まさに出立しようとするその時、国王が姿を見せる。
「国王陛下。はい。体力も回復しましたし、グロバー大陸に行く準備も整いましたので。」
「そうか。まだ、何か欲しいものがあれば、遠慮なく言ってくれて構わない。即急に用意させよう。」
「大丈夫です。食料も薬も、十分すぎるほど頂きました。」
国王の更なる申し出を、風太は断る。未だ、メタリアルには余裕はあるものの、既に、十分すぎるほど物資は積み込んである。これ以上、出立を遅らせる必要は感じなかった。
「そうか。それならよい。・・・勇者殿、今更だが、余は謝らねばならん。」
「?どうしてです?別に、陛下が謝ることなんて・・・。」
「本来なら、ヤミーの件は我々の手で解決せねばならぬこと。それを、異世界から来た勇者殿達の厚意に甘えているのだ。危険を押し付けてしまっている。・・・恥ずべきことだ。」
「陛下が気にすることはありません。俺達にも、戦う理由がありますから。」
風太は、この世界の人間に強制されたのではなく、自分の意志で戦っていることを国王に伝え、気にしないようにと言う。
「・・・ありがとう。」
「では、そろそろ失礼します。」
「・・・勇者殿、厚かましいとは思うが、最後に一つ、頼まれてはくれないか?」
「?はい、何ですか?」
「グロバーは今は完全にヤミーの手に落ちたが、かつては国があった。ワルドとは違い、複数の国が。」
「知っています。本で読みました。」
「実はな、その滅ぼされた国の生き残りが、今の抵抗を続けているという噂があるのだ。もし、その噂が本当なら・・・。」
「彼らに協力してほしい、と。」
「うむ。勇者殿の力は、ワルド大陸を解放した。彼らにも、可能な限り手を貸してほしいのだ。」
「分かりました。俺達も、できる限りのことをしましょう。」
「・・・ありがとう。では、これを渡しておくとしよう。ラグン国王である、余の書状だ。これを見せれば、勇者殿達が何者なのか、相手に伝わるだろう。」
「分かりました。・・・では、今度こそ行ってきます。」
国王の書状を受け取り、風太はメタリアルに入っていく。風太が入ると同時に、ハッチが閉まり、メタリアルは浮上を開始する。そして、十秒も経たないうちに、遥か上空へと舞い上がる。
「・・・勇者殿、ご武運を!」
それを見届けた国王と兵士達は、風太達の無事を祈るのだった。
王都が小さく見えるほどの高度まで上昇したメタリアルは、向きをグロバー大陸の方向に向け、待機していた。
機内では、風太達がコックピットに集まり、話し合いをしていた。
「それじゃあ、行こう。目的地は、グロバー大陸だ。」
「どれくらいで着くかな?」
「そうですね・・・。試運転の時と同じなら、一日ほどで到着します。」
真白は、試運転時の速度での到着時間を告げる。
「一日もかかるのか・・・結構遠いんだな。いや、はえーと言うべきか。」
「時間が惜しい。全速力で頼む。必要なら、フィードに風でも起こして推進剤代わりにする。」
「その必要はありません。先ほどの到着時間は、試運転時の時と同じスピードです。今のメタリアルなら、それよりもスピードが出せるので、もっと早く到着できます。」
「そうなんだ。じゃあ、それで行く?」
「ああ。真白、頼む。」
「分かりました。では、グロバー大陸に向けて、発進します。」
真白は、メタリアルをグロバーに向けて発進させる。メタリアルは、試運転の時とは比較にならないスピードで、飛んで行くのだった。




