異世界に行った少年
「・・・そんなことが・・・?」
「信じられません・・・異世界だとか、邪神なんて。」
風太からの話を聞き、真白と母は困惑する。とてもではないが、本当のこととは思えなかった。
「嘘のように思えますが、これは本当のことなんです。・・・簡単な証拠をお見せします。【サモン・ヘッドバード】!【サモン・ファイアバード】!」
風太は、母娘の目の前で、ヘッドバードとファイアバードを召喚する。母娘の目の前に、二羽の鳥が出現する。
「!?これは・・・!?」
「鳥が・・・突然目の前に・・・!?しかも・・・何なんですか、この鳥!?」
「これが、俺が異世界に行って習得したテイマー魔法です。魔物と契約し、使役できます。・・・お望みなら、もっと凄い魔物を召喚してみせます。・・・家の保証はできませんが。」
「わ・・・分かりました!信じます!あなたは、本当に異世界に行ったのだと!」
このようなものを見せられれば、信じざるえない。風太は間違いなく、この世界とは違う世界のことを知っているのだと。
「・・・つまり、あなたは、仲間と一緒に攫われた妹を助けるため、ヤミーという邪神と戦っているのですね。」
「はい。・・・でも、その過程で、俺達は攫われたのが妹だけではないことを知りました。その一人が・・・。」
「・・・光・・・なんですね。」
「はい。・・・そして、この間、俺達は、あなたの妹さんと会いました。」
「!光に!?光は、光は無事なんですか!?」
妹と会ったと聞いた真白は、最初に会った時のように風太に詰め寄ろうとする。風太も今度は想定していたのか、落ち着いて対応する。
「・・・無事です。・・・ですが、ヤミーに操られています・・・。」
「・・・そんな・・・!」
あまりに残酷な答えに、真白はガックリと肩を落とす。
「安心してください。妹さんは俺達が助けます。」
「でも・・・聞いた話の通りなら、相手は世界を滅ぼせるほどの怪物なのでしょう?あなた達でどうにかなるのですか?」
「手はあります。でも、その前に、出会えた彼女の家族に話をしておこうと思い、俺は来ました。」
そう言うと、風太は魔物達をカードに戻すと立ち上がる。
「突然来て失礼しました。俺は、これからアナザーワールドに戻ります。」
「・・・もう行くんですか?」
「はい。仲間には、秘密で来ていますから。それでは・・・。」
「待ってください!」
立ち去ろうとする風太に、真白はそれを制する。
「・・・私も連れて行ってください。」
「真白!?」
「光がその世界にいるなら、私も連れて行ってください!」
「何を言っているの!?この人の言う通りなら、危険なのよ!」
「でも・・・!」
「・・・連れて行って、あなたはどうするつもりですか?」
「それは・・・。」
「彼女に会うということは、必然的にヤミーの手下と戦うことになる。あいつらは凶暴で残虐です。最悪、命を落とすかもしれない。事実、俺達は何度も死にかけました。操られたあなたの妹と戦った時もそうです。俺達は、風子達を助けるか、死ぬかの二択しかない道にいるんです。その覚悟が、あなたにありますか?」
「・・・。」
「・・・はっきり言います。覚悟がないのなら、付いてくるなんて軽々しく言わないでください。・・・それでは。」
風太は深々と礼をすると、部屋を立ち去る。真白は、そんな風太を見ていることしかできなかった。
今日は、二話投稿します。