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次元トンネル内にて2

渚の口調を変更します。

 「・・・。」

 一方の渚は、一人、深刻そうな顔つきで、黙り込んでいた。何かを考え込んでいるかのようだった。

 『・・・渚。そんな顔をして、どうしたのですか?』

 そんな渚の様子が気になったのか、エリアスは渚に声をかける。

 「・・・風子ちゃん、無理矢理家族と引き離されて・・・何も知らない世界に連れ去られて・・・邪神の道具にされて・・・。そんな酷い目に遭っていたのに、私は何も知らないで、死んだとか、現実を受け入れろって・・・。・・・最低だな、って。」

 『・・・あなたは何も悪くありません。悪いのは、ヤミーです。あなたが気に病むのは、おかしいことです。』

 「・・・でも、あの日から、風太の家族は、おかしくなっていったの。風太の両親は、喧嘩ばかりするようになって、とうとう離婚したのよ。風太はおばさん、ああ、お母さんの方に引き取られたけど・・・近所の人達から白い目で見られるようになって、肩身の狭い想いをしてたの。・・・私の家族が助けなかったら、自殺していたかもしれないって聞いた。・・・風太だって、あんな風になっちゃった・・・。風子ちゃんがいた時は、優しくて、友達も多かったのに・・・。」

 『・・・あの男にそんなことが・・・。』

 エリアスは、意外だというような表情で、風太をチラッと見た。

 「私にできたのは、風太に風子ちゃんがいないという現実と向き合わせようとすることくらいだった。おばさんは、なんとか受け入れて、前に進もうとしていたから、私もそれが正しいと思って、風太にそうするように言ってきた。・・・でも、風子ちゃんが生きてたって知って・・・。」

 『自分の行動は、あの男のためではなく、単なる独りよがりだった、とあなたは考えているのですね?』

 「・・・風太は、警察が捜査を打ち切っても、ビラを配ったり、聞き込みとかしたり、できることは何でもしてた。・・・私は、風太のそんな行動を、現実逃避だって言って、無理にでも死と向き合わせようとした。・・・でも・・・。」

 『緑川風子が生きていたと知って、自分の行動が彼女を殺すのと同然の行為だった、と。』

 「・・・本当に最低・・・これじゃあ、私も風子ちゃんを攫ったヤミーと同じよ・・・。」

 『・・・。』

 エリアスは、やれやれといった様子で、大きく溜息を吐くと、渚に語り始める。

 『・・・渚。あなたはヤミーとは違います。ヤミーは、人を道具程度のものとしか思わぬ邪神なのです。あの男を立ち直らせようと必死だった、あなたと同じところなどありませんよ。』

 「・・・。」

 『自信をもってください。あなたは、この水竜エリアスが、主と認めた者なのですよ。』

 「・・・ありがとう、エリアス。」

 渚は、まだ険しい表情を崩していなかったが、若干それは和らいだ様に見えた。

 『・・・しかし、それを聞いたのなら、尚更ヤミーは許せませんね。緑川風子自身はおろか、その家族でさえ不幸にするなど、外道の所業です。』

 「・・・絶対助けないと・・・!」

 『・・・そろそろトンネルを抜けます。』

 進路の先に、光り輝く穴の様なものが見えてくる。エリアスはそのまま、その中に入って行った。

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