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白名光の家族

 「・・・真白ましろ。ご飯、ここに置いておくわね。」

 「・・・。」

 白い髪の女性が、ベッドに顔を埋める自身と同じ髪の色の少女に告げる。少女は、無言で何も返事をしない。

 「・・・今日は、お父さんが早めに帰ってくるから、晩御飯はお父さんと一緒に食べましょう。」

 「・・・。」

 「・・・ちゃんと食べてね。」

 「・・・。」

 女性は、心配そうな面持ちで真白を見つめながら、部屋を後にする。

 「・・・。」

 女性がいなくなったことを確認した少女は、枕元から何かを取り出す。それは、カッターだった。

 「・・・。」

 少女は、生気のない目でそれを見つめていた。


 彼女の名は、白名真白。ヤミーに攫われ風太達が戦った、白名光の姉である。

 五年前、風子が攫われたのと時同じくして、彼女も妹をヤミーに攫われた。何も知らない真白は、妹がいなくなったのは自分のせいだと責め、そのまま引き籠りになってしまったのだ。おまけに精神を病み、自傷行為を繰り返すようになっていた。彼女の精神と肉体は、既にボロボロになっていた。唯一の救いは、彼女の家は家庭崩壊せず、両親にしっかり支えられていることである。

 だが、それももう、限界にきていた。彼女は今日、自らの命を絶とうと考えていたのだ。

 彼女は、カッターの刃を最大まで出すと、自身の首元に付けようとする。

 ピンポーン

 その時、家の中にチャイムの音が響き渡る。真白の手が、ピタリと止まる。

 「・・・。」

 「は~い。」

 遠くで、母親が応対する声が聞こえる。普段なら、何気ない日常の光景だが、この時の真白は、何故か訪ねてきた人間が気になった。

 「・・・。」

 真白は、部屋を出ると、玄関へと抜き足差し足で歩いて行く。

 玄関の近くにまで来た真白は、訪ねてきた相手を密かに窺う。それは、自分と同い年くらいの少年だった。髪は緑色で、どこかの高校の制服を着ていた。

 「・・・あの・・・あなたは?」

 突然の来訪者に困惑しつつも、真白の母は、訪ねてきた少年に尋ねる。

 「俺は、緑川風太と言います。白名光さんの家族の方ですね?」

 「ええ・・・。・・・でも、あの子は・・・。」

 「知っています。五年前に失踪したことを。・・・俺の妹と同じように。」

 「!?」

 風太と名乗る少年の言葉に、真白は虚ろな表情から一転、鬼気迫る様相で玄関に駆け付けると、少年の肩を掴む。

 「それ、どういうことですか!?あなたの妹と同じって、どういうことですか!?」

 「ま・・・真白!?」

 「・・・落ち着いてください。それを話しに来ました。」

 「・・・。」

 少年に落ち着くように言われ、真白は少年の肩から手を放す。

 「・・・まず、これを見てくれませんか?」

 「?これは?」

 「警察の調査資料のコピーです。ここに、あなたの妹のことが書かれています。」

 「・・・!同一犯!?」

 「あなたの妹も、俺の妹も、同一の犯人に攫われました。他にも、大勢の子供達が攫われていたみたいなんです。・・・俺は、妹を救うため、そいつらを追っています。」

 「あなたが?まだ、高校生でしょう?どうやって?」

 「・・・話しても信じられないかもしれませんが、それでもいいですか?」

 「・・・お願いします。話してください。私には、光を見つけるための情報が必要なんです。」

 真白は、深々と少年に頭を下げる。

 「・・・分かりました。・・・お母さんの方は、どうですか?」

 「・・・この子の気が済むのなら、お願いします。」

 「・・・はい。」

 真白と母は、少年を家に招き入れる。普通なら、こんな知らない人間を家に招くなどあり得ないことだが、手掛かりが全く見つからず、命まで絶とうと思い詰めていた真白にとって、手掛かりを持っているかもしれない少年を帰すという選択肢はなかった。それに、真白の母も、娘がこれ以上壊れてしまうのをどうにかしたがっていた。その結果、少年は家に招かれることになったのだ。

 (・・・ここからが正念場だな。)

 少年-もちろん風太-は、彼女達にしっかりと話を付けるべく気を引き締めるのだった。

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