勇者達の帰還
第4章開始です。最初はワルド大陸にいますが、メインはグロバー大陸になります。
「勇者殿、此度の活躍、誠に感謝する。勇者殿の協力により、このワルド大陸は解放された。」
王都ドランに帰還した風太達は、国王から感謝の言葉を受けていた。国王の側には、騎士団長やモーゼを筆頭に、多くの人々がいた。
「いいえ、国王陛下と騎士団の協力あればこその戦果です。俺達だけではできませんでした。」
「謙虚だな。だが、第一戦功は勇者殿達であることは、紛れもない事実。大陸に住む、全ての住む者達を代表して感謝の意を伝える。本当にありがとう。」
国王は、深々と風太達に頭を下げる。それと同時に、周囲に控えていた人々も頭を下げる。
「・・・何だか照れるな。」
「でも、悪い気しないね。」
「・・・ああ。」
風太は、ここまで感謝されることに戸惑うも、何か温かい気持ちになっていた。
「勇者殿。勇者殿はこの後、グロバー大陸へ向かうと聞いたのだが。」
「はい。敵がセイクを手に入れたのなら、すぐにグロバーに行って、ランドと契約しなければ手遅れになります。俺達は、ヤミーより先に、ランドに会いに行くつもりです。」
「うむ。だが、勇者殿達は激戦に次ぐ激戦で消耗しているはずだ。まずは、城で英気を養うのが先決だ。」
「でも、それじゃあヤミーに・・・!」
「私の部屋を使えばいい。あの部屋なら、どれだけ休んでも外の時間は経たぬ。」
「うむ。あそこならば休むのに最適だ。」
「・・・。」
「緑川風太。国王陛下の言葉に甘えよう。大陸を解放して回ったんだ。肉体的も精神的にも消耗している。今回は身体を休めるべきだ。それに、グロバーは敵に完全に制圧されているんだ。侵入すれば、補給は一切期待できない。十分に作戦を練って、準備も万全にしないと駄目だ。」
「敵の陣地に殴り込み、しかも、援護はなしときてるんだからな。震に賛成だ。」
「風太。ヤミーと戦った時、魔力が切れたでしょ。歩けるくらいは回復したかもしれないけど、行くならちゃんと回復してからにしないと。風子ちゃんを助けるためにも、今は休もう。」
「・・・そうだな。・・・分かりました。しばらく、お世話になります。」
「城の設備は、好きに使って構わん。勇者殿の力になるのなら、惜しみはせん。」
「ありがとうございます。」
風太達は、国王の言葉に甘え、城で休息をとることにするのだった。
「・・・。」
モーゼの部屋にある小屋の一室。その部屋のベッドに横になる風太は、手に持つ紙を眺めていた。それは、ヤミーに攫われた子供達の事件に関する資料だった。警察のデータベースを覗いた際、念のためにと震がコピーしておいたもので、風太は震に頼んで受け取っていたのだ。もらう際、色々言われたが。
既に、部屋の中では数日が経過していた。身体も魔力も十分に回復し、風太以外の面々は、各々自分のやりたいことをやっていた。渚は、ミリィと魔法の訓練を。焔は、騎士団と武芸の訓練を。震は、グロバー大陸に行くための準備を。だが、風太だけが、未だに部屋に閉じこもっていた。渚達は心配するものの、まだ体調が優れないと言う風太の言葉で納得していた。周囲には隠してはいたが、あの時の風太は、今までにないほど消耗していたのだから。
「・・・よし。」
意を決した風太は、小屋を出ると、モーゼの部屋から出ようとする。
「どこに行くんだい?」
「!」
いきなり声をかけられ、風太は振り向く。そこには、ソウがいた。
「何だ、ソウか。脅かさないでくれ。」
「脅かすつもりはなかったよ。それで、どこに行くんだい?」
「・・・白名光の家族に会う。」
「・・・それは、やめておいた方がいいと言われたはずだよ。」
「・・・分かってる。・・・でも、今もあの子の家族は、あの子を捜しているかもしれない。何でもいいから情報が欲しいはずだ。俺は、そうだった。」
「すべての人間が、君と同じとは限らないよ。諦めて、新しい人生を歩んでいる家族だっているはずだよ。」
「・・・それでも・・・俺は伝えたい。・・・そして、家族が望むなら、俺は力になりたいんだ。」
「・・・まさか・・・。」
「・・・皆には秘密にしてくれ。じゃあ、行ってくる。」
そう言い残すと、風太はモーゼの部屋を後にする。残されたソウは、ため息を吐くと、いい言い訳はないか考えるのだった。