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援軍到着

 『セイク!』

 体勢を崩したセイクを、羽交い絞めにするようにブレイは拘束する。

 『何やってんだ!兄弟を殺す気か!?』

 『・・・。』

 ブレイはセイクに訴えかけるが、セイクは正気を失った目で睨むのみだった。そんなセイクの様子から、ヤミーに完全に洗脳されていることをブレイは改めて認識する。

 『・・・くそ!やっぱ完全にヤミーにやられちまってやがる・・・!』

 「・・・こいつが・・・光竜セイク・・・?」

 「これじゃあ光竜じゃなくて、邪竜だね。」

 『・・・お前ら・・・!』

 『・・・。』

 『!』

 背中に乗っている焔と震も、セイクの異様な様子に困惑していた。ブレイは、二人の言葉に不快感を覚えるも、羽交い絞めにしているセイクが自分を引き剥がそうとしてきたため、文句を言うのを中断して拘束に力を入れる。ブレイは必死にセイクを止めようとするも、結局はフィードやエリアス同様に引き剥がされ、放り投げられてしまう。

 『うお!?』

 セイクの想像以上の力に、ブレイは自分が投げられたことを理解するのに時間がかかった。そのせいで、セイクの尻尾からの追撃をくらってしまう。

 『ぐお!?』

 そのままブレイは、地上に叩き落されてしまう。凄まじい轟音が響き渡り、周囲に粉塵が巻き起こる。

 「!ブレイ!焔!震!」

 ブレイと二人の安否を確認する風太。粉塵が晴れ、ようやくブレイの姿を認めることができるようになる。幸いなことに、ブレイは見た感じ怪我をしていないように見えた。背中の二人も無事のようである。

 「・・・大丈夫そうだな」

 『あの程度でブレイは死なないよ。二人も大丈夫。地面に落ちた程度なら、ブレイが展開している防御魔法で守れるから。』

 「・・・そうか。よかった。」

 焔達が無事ということに、風太は安堵する。すると、ブレイがこちらに飛んできて合流する。

 『おう、大丈夫か、お前ら。』

 『・・・一応、大丈夫だよ。そっちこそ、派手にやられたようだけど、大丈夫かい?』

 『セイクが相手だから、ちょっと油断しただけだ。あの程度の攻撃、痛くも痒くもねー。』

 皮肉っぽく返すフィードに、ブレイは強がって見せる。

 『・・・ブレイ。あなたが何故ここに?ワルド大陸の奪還を行っていたのでは?』

 『ひでーな。嫌な予感がして、妹と弟の危機に駆け付けてきたんじゃねーか。』

 「・・・俺の魔力、随分と使ってくれたがな。」

 「ああ、奪還に関しては、もう済んだよ。安心してほしい。」

 『・・・そうですか。色々言いたいことはありますが、今はブレイが来たことを喜ぶべきでしょう。』

 『何だ、その言い方は。助けに来た兄に言うセリフか?』

 エリアスの棘のある言い方に、ブレイは心底心外だと感じる。なんだかんだ言っても、ブレイは兄弟が心配なのだ。急いで駆け付けたというのに、そんな言い方をされるのは、少々癇に障った。

 『・・・あなたが来ても、現状が変わるとは思えないからです。』

 『何言ってんだ。いくら俺達が契約して弱体化してても、三体いりゃー何とか・・・。』

 『三体いても勝てないと思うよ。・・・今のセイクは、本来の強さより強くなってるから。』

 『・・・ヤミーのせいか?』

 「違う。・・・とんでもない契約者がいる。・・・あの子のせいだ。」

 『契約者?』

 ブレイは、風太の指す場所を見る。そこには、空に浮かぶ少女の姿があった。

 『あれが・・・セイクの契約者・・・だと!?まだ子供じゃねーか!?』

 「子供だからって侮ったら駄目だ。俺より強い。しかも、ヤミーに洗脳されているから、攻撃に全くの躊躇いがないんだ。・・・俺も渚も殺されると思った。」

 『・・・胸糞わりー話だな。あんな小さい子を・・・!』

 ブレイは、子供まで利用するヤミーの所業に怒りを思える。それと同時にブレイは、疑問を覚える。あの子供が、風太よりも強いということに。

 『・・・だがよ、お前よりつええってのは何かの冗談だろ?ヤミーのドーピングじゃねーのか?』

 「・・・僕がそう判断した。あの子供は、ヤミーの力がなくても強い。セイクを強化できるくらいにね。」

 『!?・・・ソウ様がそう言うんなら間違いねーな。二体が追い詰められて、俺が投げ飛ばされたのも納得だ。』

 (・・・ソウの言葉はすんなり信じるのか・・・。)

 ブレイの現金な態度に、風太は呆れる。

 「・・・おいおい冗談だろ・・・!パワーアップした五大竜とやり合えって言うのかよ・・・!?」

 ここに来るまでに消耗した焔は、これから戦うべき相手に戦慄する。万全でも勝てるかどうか分からないのだから、当然である。

 「!来る!」

 セイクがブレスを三体に向けて放つ。三体は散開してブレスをかわすと、遠巻きに飛行する。

 『ブレイが来てくれても、あの子供をどうにかしないと勝ち目はない!』

 『ソウ様の【絶対制御コード】はどうした!?セイクには効くはずだろ!』

 『何故か効かないのです!』

 「・・・正確には、セイクを対象にしているのに、あの子供に自動的に対象が移っちゃうみたいなんだ・・・。」

 『んな馬鹿な!あれを逃れる方法なんてねーはずだ!いくらソウ様の言葉でも、そいつは信じられねー。』

 「事実なんだから仕方ないじゃないか!」

 (・・・神の強制力が効かない・・・いや、対象を変えられてしまう、か。しかも、ソウ自身も理由が分からないなんて・・・。やっぱり何か変だ。)

 唯一の武器が全くに役に立たないことに、涙目になるソウ。一方、震はそんな状況に一人、不信感を抱く。

 「あの子供が原因で効かねーなら、遠ざけたら効くようになるんじゃねーか?」

 「電波で動く玩具じゃないんだぞ!そんな簡単に・・・!」

 「・・・いや、使えるかもしれない。」

 焔のあまりに単純な方法に、否定的な風太だったが、震はそれに賛同する。

 「今まで君達は、あの子供が近くにいる時に【絶対制御コード】を使ったはずだ。それで、効かなかった。なら、彼女をセイクから離せば、効くようになるかもしれないというのは、決して的外れとは言えない。」

 「・・・でも、もしそうじゃなかったら?」

 「敵がどうやって【絶対制御コード】の対象を移しているのかは分からないし、知るすべはないんだ。どの方法が使える使えないと分かることの方が重要だよ。それに、焔は戦いに関することだけ・・は冴えているからね。うまくいくかもしれない。」

 「だけとは何だ!だけとは!」

 「・・・でも、あの子は強い。俺が全力で取り押さえようとしたのに押し返された。・・・体格差があるにも関わらずだ。」

 「なら、俺と一緒にやればいい。男二人掛かりなら、何とかなるかもしれねー。それに、俺はお前と違って元から鍛えてっからな。」

 「・・・あの力は、そんなことでどうにかなるものじゃないぞ?」

 「・・・緑川風太。彼女の力はそんなに凄かったのかい?」

 「ああ。俺が全力で押さえ込んでも駄目だった。」

 「素手でかい?」

 「いや、鍔迫り合いでだ。」

 「・・・なるほど。」

 風太の言葉に、震はしばし考え込む。

 (・・・さすがの震でもいい案は出ないか・・・?)

 風太がそう思ったその時、震は口を開く。

 「なら、焔の作戦で行こう。」

 「おお!お前もか!」

 「・・・それでいいのか?」

 「現状、その方法しかないなら、その作戦でいくしかないよ。それ以前に、これ以外にいい方法が思い浮かばないね。」

 「・・・。」

 震の言葉に、今度は風太がしばし考え込む。そして、意を決したかのようにその場にいる全員に告げる。

 「・・・分かった。それでいこう。焔、俺とフィードに乗ってくれ。」

 「おっしゃ!任せろ!」

 「君と焔があの子を引き離してくれ。僕と青野渚は二人の援護、三体の竜はセイクを惹き付けてくれ。」

 「分かった。」

 『セイクのことは、任せてくれ。』

 「ソウ。君は、いつでも【絶対制御コード】が使えるようにしておいてくれ。タイミングは、君の判断に任せるよ。」

 「それしかできないのが悔しいね・・・。分かった。」

 「よし!皆行くぞ!」

 風太達は、三体の竜と共に、再度、セイクに向かって行く。

 近付いてくる三体に、セイクはブレスを放つ。三体はそれをかわしつつ、セイクにさらに近付いていく。

 すると、セイクは光竜の剣製ドラゴニックシャイニングソードを展開し、三体を近付かせまいとする。

 「同じ手をくらうか!フィード!」

 フィードはセイクの周囲に竜巻を展開し、光竜の剣製ドラゴニックシャイニングソードを消し飛ばす。

 「今だ!」

 光竜の剣製ドラゴニックシャイニングソードがなくなった瞬間、フィードは全速力でセイクへと近接する。そして、風太と焔はセイクに跳び乗る。焔にとっては初めて、そして、風太にとっては再びの対峙である。

 「・・・本当に子供だな。遠くから見たから半信半疑だったぜ。」

 「・・・今度こそ取り押さえてやる!」

 「・・・。」

 少女は何も言わず、風太達に襲い掛かるのだった。

一部内容を修正します。

タイトルを変更しました。

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