次元トンネル内にて1
「ここが・・・次元の壁を抜けるトンネル・・・。」
風太は、周囲の光景を眺める。周囲は、虹色の壁の様なものに囲まれ、まさにトンネルのようであった。
「正確には、竜の力で壁にトンネル状の穴を開けているというのが正解ね。」
「・・・本当にすごいんだな、竜は。」
「ええ。・・・でも、私が使役していた時は、ここまで大きくもなければ、綺麗でもなかったけど・・・。」
「・・・やっぱり、渚の力、か。」
「ええ。・・・まさか、これほどとは思わなかったわ。戦いになれば、きっともっとすごいことになるわ・・・。」
ミリィは、まだ見ぬ渚の秘めた力に感心していた。彼女の力なら、世界を救えるかもしれないという希望が芽生えていた。
「・・・なあ、渚はお前と比べて、どれくらい強いんだ?」
「そうね・・・。単純な魔力の強さだけなら、私の百倍以上よ。」
「百!?・・・おいおい・・・圧倒的じゃないかよ。そんなに渚は魔力強いのかよ?」
「私達の世界では、化け物と言える強さだけど・・・あなたの世界では平均的な強さよ。」
「マジか!?・・・っていうか、お前は、自分の世界じゃどれくらいの強さなんだ?」
「三番目くらいね。一番は、国王に仕える賢者様だけど、それでも私の五倍程よ。・・・本当、魔法がないのに、あなたの世界の人間の平均がおかしいわ。」
「でも、平均なのに、どうしてエリアスは、渚を選んだんだ?」
「だから、前も言ったけど、分からないわ。・・・でも、エリアスが選んだのなら、間違いないはずよ。」
「間違いないはず・・・か。」
ミリィは、自信をもって断言する。風太の方は、やはり納得いかないという顔をしていたが。
「・・・緑川風太。今更だけど、どうしてあなたを捜していたか、話しておくわ。」
「・・・本当に今更だな。で、どうして俺を捜していたんだ?単に、風子が生きているのを伝えに来たんじゃないだろ?そうなら、俺に世界を救ってくれ、なんて言わないしな。」
「・・・あなたが、緑川風子の兄だからよ。」
「?何だそりゃ?」
重大な理由があると思っていた風太は、意外な理由にキョトンとする。
「強い魔力の持ち主は、その肉親も同様の場合が多いのよ。あなたは、ヤミーの器になった緑川風子の兄。だから、強い魔力を持っているんじゃないかと考えたのよ。」
「考えたって、誰が?」
「さっき言った賢者様よ。世界一の魔法の使い手であり、最強のモンスターテイマーよ。そして、私の師匠。」
「・・・そいつが、俺が風子の兄だから、強い魔力を持っているんじゃないかってことで、俺を捜させたのか?」
「ええ。・・・そして、賢者様の考えは、正しかったみたい。あなたの魔力は、渚以上よ。」
「・・・どれくらいなんだ?」
「・・・今は言えないわ。・・・ごめんなさい。」
「???」
何故言わないのか。風太は疑問を覚えたが、渚より強いということを聞いて安心したのか、それ以上聞こうとはしなかった。