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僕らは少年探偵団  作者: フジキ リウ
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第3話「再会したはいいけども」

目を覚ますと、知らない天井だった。と言いたいが、よく見知った天井だった。


つい最近まで嗅いでいた消毒の匂いと、白くシワのない機械式のベッド。


「また戻ってきちゃったのかよ」


自分に呆れたように、顔に手をつく。


で、なんでまたここに?と意識が無くなる前の事を思い出す。


そうだ、僕は左手を刺されて。それで、出血を見てそのショックで………。って、あれで直ぐに意識遠のくとか、普通の人ならもう少し持つでしょ。持つの?どっちだろ。


取り敢えず、目が覚めた病室を見渡す。


窓を見れば、見飽きた景色。


そしてベッドの直ぐ隣にあるテレビある棚。見覚えどころか、そのままそこにあると確信できる傷。


そして、目の前に見飽きた看護師がいた。


「何してるんですか。唐鷺さん」


「いやあ、ブーメラン入院だね。話のネタになるわ」


クスクスと笑う看護師は長年の入院でお世話になった唐鷺 優奈だ。


「僕の知らないところでナチュラルに傷つけないで下さいよ」


「そう言われても、こんな仕事してるとストレスが溜まるのよ。ほら、勤務時間なんてあってないようなものだし」


そう言って鉄製のボウルの中から点滴を取り、点滴棒に吊るした古い点滴と入れ替える。


「他人のストレス解消の餌にされても嬉しくありませんよ」


僕はうなだれて、視界に入った左手を見た。


やはり包帯でぐるぐる巻きにされていた。


「まあまあ。そう言えば、さっき洋太郎君と同じ学校の制服着た女の子が君の事見舞いに来てたよ。彼女さん?」


「そんな訳ないじゃないですか、十数年も病院暮らしだったのに、そんなポンポンと彼女なんて出来ませんよ」


「なはは。それもそうか」


この人、唐鷺 優奈は、昔から僕をからかう癖がある。初めて出会ったのが、5年前の小学5年の頃。いつもニコニコしている唐鷺さんに違和感を覚え、一言、「どうして猫被ってるの?」と言い放ってしまったが故に、目をつけられ今に至る。


「それに、洋太郎君。君の病気は完全に治った訳じゃないってのは解ってるよね。なのに、この手、どういう事かな?」


そう言って、僕の左手を叩く。


「痛いですよ。別に刺されただけです」


「刺されただけって、ただ蚊に刺されたみたいに言うんじゃないの。君の病気がほぼ治ったのは、奇跡にも等しいんだから。でも………君が女の子を守ったって知った時は、誇らしく思ったよ」


そう言って頭を撫でてくる。


この人は、昔から僕を気にかけてくれている。それこそこの人には感謝しきれない。


「やっぱり知ってるんじゃないですか」


そう言って、唐鷺さんの手を払う。


「ああ、そうそう」


唐鷺さんが思い出したように言う。


「なんですか?」


「君、今日から2週間、検査入院だから」


え?何が?


「ん?どうしたの?入院だよ?」


僕の顔を覗き、ほくそ笑んだ顔をする。


そして最後に一言。


「おかえり」


「はぁぁぁぁ………」


僕は深いため息をついた。



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