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僕らは少年探偵団  作者: フジキ リウ
2/5

第1話「彼はここから始まる」

僕は朝が嫌いだ。この間まで、同じ天井、同じ風景を見つめて日々を生きた。何度あの光景を見た事か、何度あの顔を見た事か。


正直うんざりしていた。


窓から見える光景は、ただ広いだけの駐車場。冬になっても雪も何も積もること無く、ただ地面が凍るだけ。轍の後も付かず、何台もの車が門を入っては出て行った。


十何年も同じ白いベッドでチューブに繋げられる。


それが僕の唯一無二の日常だった。


毎日出てくる味噌汁の薄い味付けも、嫌々ながら飲み込んだ治療薬も、それが僕の日常だった。


ところがある日、そんな日常は崩れ去った。


たった数時間の手術で僕の病気は治った。 あの十数年と言う時間は何だったのだろう。これまで過ごしてきた病院での生活は全て嘘だと神様に言われてしまったような気分だ。


体がまだ怠い。あと一週間ほどで退院できるそうだが、このあとはどうやって生きていこうかと、考えるだけで精一杯だった。


そうだ。彼女に報告せねば。


同じ白い部屋で過ごした、初恋の彼女に。






















一ヶ月後────




















僕は朝の気怠さを残しながら、駅構内を歩く。様々な電子音や靴の音、人の喋り声が駅全体に木霊す。定期をセンサーに通し、改札を通る。


人々を吸っては吐き出すを繰り返す改札を抜け、プラットフォームに着く。


今日は少し肌寒い。電車の抜け口から風が吹き抜く。周りには、僕と同じ制服を来ている若い男女がいくつかコミュニティを作っていた。


ずっと病院生活を送っている僕としては、制服というものはすこしむず痒く感じる。ネクタイはまだ慣れてない為か、不器用に結ばれ、ワイシャツにはもうシワが出来ていた。


普通の学生生活というものは何だろうか?


そうこう考えているうちに電車が来た。


中に乗り込むと、空席がある。未来にタイムスリップしてしまった侍の様に、座ってもいいのだろうかと迷っていると、まんまと座られてしまった。辺りを見回すともう空席は一席も無い。仕方なくドアの近くで立っている事にした。


電車の中には、通勤中であろう、老若男女の社会人、ちょっとした旅行に行くであろうグループなどが乗車していた。


ずっとあの部屋から出ていなかったのだから、電車に乗るというのは初めてというものの、テレビドラマで見た感じとは一つも変わりはしなかった。


周りの人々は暇つぶしに携帯電話、今ならばスマホと言うべき箱状の物を弄りながら、個々の時間を費やしている。


そんな中、電車に揺られ約1時間。混雑する改札を出ると、直ぐに目の前に自らがこれから通う学校が見えた。


この学校が3年間通うことになった『白神高校』だ。





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