第8章:勉強会?
「ねぇ、3人で勉強会しない?」
「え?」
いきなり舞が変なことを言い出したぞ。
「あの、どうして勉強会をするんですか?」
「そうよ! 勉強なんて授業中にだけやれば良いのよ!」
綾よ、だからお前は成績が伸びないし悪いんだ……。
「だいたい、舞ちゃんに咲ちゃんは勉強しなくても良いじゃない。」
「いや、私達だって勉強せずに点数取れるわけ無いじゃない……。」
まぁ俺は高校レベルなら勉強しなくても満点ぐらい取れるけど……。
「これはね、綾のためにやるの。」
「私のため?」
「そ。 綾の事だからどうせ勉強せずにテストに挑んで、点数悪くて親に怒られた上に学院側から課題を出されて、それが終わらなくて私に泣き付くのがオチでしょ?」
「うっ……。」
………そんなことに成るのか。そしてそこまで予想が出来るってことは前にもこんな展開が有ったんだな……。しかも複数。何か、お疲れ様って感じたな。
「で、でも何で急にそんなこと言い出すの? 今までは一回も言わなかったじゃない。」
「今まではそこまでやる必要は無いと思ってたからよ。」
「こ、今回も必要無いよ!」
「そうも言ってられないわ。 今回のテストは結構重要なのよ。」
「え? それってどう言うこと?」
今回のテストは大事?………もしかしてあれか?
「………クラス?」
「そうよ咲、今回のテストはクラス決めが関係してるの。」
「クラス決め?」
綾、お前は学院のパンフレットを見てないのか?
「綾……、あのね、この学院では成績順にクラスが分けられるの。 この学院は受験して来た人もいれば、私達のようにエスカレーター式で来た人もいて実力がバラバラなの。 だからそれを次のテストの点数でクラスを成績順にして、授業をやり易くするの。」
「そ、そうなんだ……。」
「それで、このままだと綾は最下位辺りのクラス、咲は真ん中ぐらいになって、私は上位と皆バラバラになっちゃうの。 それを防ぐ為に勉強会をしようと言ってるの。」
成る程な。確かに、折角仲良くなったのにいきなりクラスが変わったら会いづらくなるしな。
「そうなると今回は私も勉強しないとヤバイって事ね……。」
「そうよ。 だから勉強会をしましょう。 異論は?」
「私は無いけど。」
「私も有りません。」
「オッケー、じゃあ場所はどうしよっか……」
場所は大事だ。この2人といるってことは俺は女装してるわけで、それを昔のクラスメートにバレたら終わりだから、人が集まる場所は嫌だ。
「この学院はどうでしょうか?」
「それは嫌! いくらクラス替えの為とはいえ、授業でも無いのに学院で勉強なんて絶対嫌!」
「それに学院は休日は開いてないから無理よ。」
「え? では部活の方達はどうしてるんですか?」
休日に学院が閉まると部活が出来ないじゃないか。
「文化部は休日は休み。 運動部にはそれぞれ専用の場所が違う所に有るから、そこに行ってるはずよ。」
「へぇ〜。」
それは知らなかった。だとすると一番安全な学院は候補から消されると……。しかしこれは厄介な事になったな。学院以外に知り合いが集まらない場所なんて有るのか?町中とか絶対駄目。ついでに俺の家も駄目。もしも部屋に入られたら一発で男だってバレるし……。
「う〜ん、どうしようか……。」
「私達の家は流石に無理だもんねー。」
「そうよねー。」
「「う〜ん。」」
しかし以外な展開になったな。まさか場所で困るとは。これじゃあやる以前の問題だ。
「………こうなったらダメ元でパパに頼んでみようかな〜。」
「綾のお父様に?」
「うん。 無理だとは思うけど聞いてみる。」
綾の父さんか…。どんな人なのかなぁ。テレビに出てることぐらいあると思うけど、何故か俺は見たことが無いな…。
「なら場所は綾に任せて、予定は私と咲で決めるわ。」
「分かりました。」
「うん、お願いね舞ちゃん。」
とにかくこれで少しは希望が見えてきたな。まぁダメ元って言ってるからあまり期待はしないほうが良いのだろうけど、それでもつい期待をしてしまうな。
「ならこの話の続きは明日にしましょ。 もう着いたわ。」
着いたと言うのは何時もの分かれ道で、分かれ道にいるというのは今が帰りだからである。
「それじゃまた明日ね、咲。」
「またね、咲ちゃん。」
「はい、二人ともさようなら。」
「母さん、近々勉強会するから。」
とりあえず今日のことを母さんに伝えることにした。早いうちに伝えとかないと母さん煩いからなぁ……。
「勉強会? 翔ちゃんそんなの必要無いでしょ。」
「俺じゃなくて綾が必要なの。」
俺が必要な訳無いだろ……。
「綾? あぁお友達の事ね。 でも何でいきなり勉強会を? 綾ちゃんはそんなに成績ヤバイの?」
会っても無い相手に名前でちゃん付けか……。流石は母さんだ。何が流石かは知らないけど。
「結構ヤバいらしい。 しかも今回の実力テストは、今後のクラス替えに影響するテストだから、出来るだけ皆の点数を会わせたいんだ。」
「成る程ね。 それで成績の悪い綾ちゃんの為に勉強会をするのね。」
「そう言うこと。 まだ詳しいことは決まってないから決まったら教える。」
「分かったわ。 あら? 確かお友達ってもう一人いなかった?」
「舞のことか?」
「そうそう舞ちゃんよ。 確か二人とも財閥の娘だったわよね?」
「あぁ。」
「そっかぁ、何で忘れてたんだろう……。」
母さんが忘れるなんて珍しいな。まぁそんなこともあるか。
「それで、舞がどうかしたのか?」
「あっ、忘れるところだったわ。 舞ちゃんって成績良いの?」
「舞は常に上位だったらしいぞ。 だから問題は無い筈。」
「てことは綾ちゃんだけがピンチなのね……。 まぁいざとなったら二人が会わせれば良いんじゃない?」
「まぁな。」
確かにそれもありだな。俺は勉強会で綾の実力を見極めて、それに合わせたら良いし、舞は長い付き合いだから何となく分かるだろうし。まっ、いざとなったら舞と相談するか。
「オッケー貰ったよ!」
学院に着くなりいきなり綾が言ってきた。
「ホントですか?」
それがホントならかなりの進歩だ。後は予定を決めたら終わりだし。
「うん! 何か勉強会するって言ったら即答してくれたの。」
………親御さんは綾には勉強して欲しいと本気で思ってるみたいだな。
「それでね、土日ならどっちでも良いらしいよ。 何なら二日連続でもとかも言ってた。」
二日連続はまだ分からないとして、土日なら時間もたっぷりあるから十分出来そうだな。
「分かりました。 では、あとは舞さんと話し合って決めます。」
「うん。」
さて、舞は何処かな?っと自分の席に座ってるみたいだな。早速話に行くか。
「舞さん。」
「咲? どうしたの?」
「綾さんからオッケーを貰ったと聞きましたので、早速舞さんと予定について相談しようかと。」
「咲も聞いたのね。 ならまずは何時にする? 個人的には午前中からやりたいのだけど……。」
「私は構いませんよ。 でも何で午前中から?」
「綾のことだからきっと休憩を何回も挟んで、中々進まないと思うから時間は出来るだけ多く欲しいの。」
成る程な。綾みたいに勉強に慣れてないとすぐにダウンしそうだしな。
「分かりました。 では時間は午前からと言うことで。 では次に日にちですが、今週の土日しかやる日は無いので土曜日にしませんか? それで、土曜日の進行具合を見て日曜日をどうするかは決めようと思うのですが。」
「えぇ、それで良いわよ。」
「後はどの様な形でやって行くかですね……。」
「とりあえず綾が苦手としてる教科からやっていくとして。 咲は何の教科が得意なの?」
得意な教科か……。正直全部分かるから教科に得手不得手が無いんだよな……。まぁここは適当にそれなりに好きな教科を言っとくか。
「強いて言うなら私は数学が得意です。」
「数学かぁ。 それなら私とは被ってないから良かったわ。 流石に私一人で教えるのは疲れるしね。」
「そうですね、私で役に立つなら頑張ります。 それで、綾さんが苦手な教科って何なんですか?」
「綾は………基本全部駄目。 でも得に酷いのは英語ね。」
英語か……。まぁ英語が苦手な人は多いから綾もその一人だろう。あれは覚えるだけで良いから楽っちゃ楽なんだけどなぁ。でも覚える量が多いから苦戦するんだろなぁ。俺はすぐ覚えたから得に問題なかったけど。
「ではまず英語からやって、次に数学、次に……………って感じで良いですか?」
「そうね。 それで行きましょう。」
「分かりました。」
よし、これで予定は決まったな。後は帰って母さんに報告をして終わりだな。その前に授業があるけどな。さて、今日も一日適当に頑張るか。
学院から帰ってきた俺は、母さんが帰ってくるのをカナとコナで遊びながら待っている。それにしても今日は珍しく遅いな……。
「ただいま〜。」
「あっ、母さんお帰り。 今日は母さんに伝えたいことがあるだよ。」
「伝えたいこと? もしかして勉強会の日時が決まったの?」
「あぁ。 今週の土曜日の午前中から。 進行具合を見て日曜日やるかを決めることになった。」
「あらそう。 なら昼と夜は要らないのね?」
そう言えば飯はどうするんだ……?まぁ昼は適当に何とかなるとして夜は……。まぁ一応金を用意しとくか。
「昼は適当に食べるけど夜は分からないからその時にメールする。」
「分かったわ。」
これで報告も終り。後は適当にこいつらと遊んどくか。それから暫く遊んだ後、いつも通りに過ごして時間が過ぎていった。