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第6章:母さん、それは……

事件はある日の学校の帰りのHRで起こった。







「明日は身体測定の日です。 数日前に渡した体操服を忘れないで下さい。」


「………え?」


明日が……身体…測……定……?し、身体測定ってあの体の大きさを測るあの身体測定!?マジですか!?俺どうするんだよ!皆の前で測ったら一発で男ってバレるじゃん!


「咲〜、一緒に帰ろうってどうしたの? 何か顔が真っ青だけど……。」


「え!? あっ、舞か……。 いえ、大丈夫です。 ちょっと体調が優れないだけです。」


「そお? 無理はしちゃ駄目よ?」


「はい。 それで帰るお誘いは良いですよ。 綾さんが待ってるでしょうから早く行きましょう。」


「えぇ。」


兎に角今は出来るだけ平静を装わないと駄目だ。こんなことで二人をを心配させたく無いし、これでボロが出たら目も当てられない。兎に角家に帰るまでの我慢だ。きっと母さんなら何とかしてくれる。きっと!







「明日は身体測定か〜。 嫌だなぁ。」


「確かに嫌よねぇ。」


二人共身体測定は嫌なのか。ってか女子は大体嫌ってたけど、何でそんなに嫌がるんだ?自分の体を測るだけなのに……。


「お二人共どうして身体測定が嫌なんですか?」


「どうしてって……。 知りたく無いことって有るじゃない? 特に体重とか。」


「体重、ですか。」


やっぱり体重か。何でそこまで体重に拘るんだ?重いか軽いかの違いだけじゃん。


「舞さんはどうして嫌なんですか?」


「私? 私も体重ね。 あれを知るのがどうしても怖くてね……。」


舞も体重か……。女子はほぼ全員体重の事が一番の問題みたいだ。こればっかりは男の俺には理解できないな。これを理解したとき、俺は女になるのかもな……。


「そう言う咲は身体測定嫌じゃないの?」


「私もあまりに楽しみでは有りませんね。」


今回は特別だから。何たって明日は俺の生死が決まるようなもんだからな……。


「やっぱり咲も嫌なんだね。 あ〜明日が来なければ良いのになぁ……。」


俺も心の底から思う。明日なんて来なければどれだけ嬉しいか……。


「あっ、もうここね。 じゃあね咲。」


「ばいばいー。」


「お二人共さようなら。」


このさようならが最後のさようならにならないことを祈るよ……。







「只今ー。」


あれ?返事が無いぞ?母さんは出掛けてるのかな?せっかく大事な用があったのに……。どうしよう、今から電話するか待つか。んーー買い物って可能性も有るから暫く待ってみるか。


「「にゃぁ〜。」」


「おっ、お前等は留守番か。 ちょっと待ってろ、着替えてきたら遊んでやるからな。」


そう言い残して俺は自分の部屋に戻った。それから着替えてメイクを落としてから、下に降りた。いつも思うのだが健全な男子高校生が家に帰ってメイク落としって……。まるで変態みたいじゃないか……。でもあまり気にしない。気にしたら余計に悲しいから。


「カナ、コナ、おいで。」


俺が呼び掛けたら二匹ともすぐ寄ってきた。それから俺はカナとコナに癒されながら遊んでいたら、いつの間にか寝ていた。







「ん……。」


あれ、俺寝たのか?今何時だろう。ん?顔が動かないぞ?何でだ?俺は今横を向きながら寝てるだけの筈だが……。手を顔に持っていったら暖かい 何かに触れた。これはカナか?それともコナか?どっちにしても退けるか。


「よいしょっと、犯人はカナか……。 なんでお前は俺の頭の上なんかで器用に寝てるんだよ……。 そしてコナは何処に行った?って目の前で寝てるし。」


どうやらいつの間にか俺が寝て、それにつられて二匹とも寝たみたいだ。ってか時間は?そして母さんは帰って来たのか?とりあえず母さんがいるかどうかの確認をするか。


「母さんー!」


「何?」


「あっ、母さん帰ってきてたんだ。」


良かった、母さん帰ってきてたみたいだ。これでようやく頼むことができる。


「少し前にね。 それで、何か用?」


「実は明日、学校で身体測定があるんだけど……。」


「それで?」


それでって……。反応薄……。


「俺が男だってことが皆にバレるじゃん! どうすんだよ!」


「あ〜そう言うことね。 確かに普通に受けたらバレるわね。 どうしましょうかねぇ。」


母さん……、全然困ってるようには見えないんだけど……。


「何とか出来ない?」


「んー出来ないことは無いわよ。 そうね、これは少し手を打つ必要がありそうね。」


「マジで!? 流石は母さん! それで、どうするの?」


母さんなら何を仕出かすか分からないからちゃんと心の準備をしないと。…………よし、大丈夫だ!


「学校に電話して、翔ちゃんの記録は家で測って提出するから明日の測定には出ませんって言うのよ。」


「そ、それだけ?」


やけに普通だな……。まぁ学校にそんなことを頼むこと自体おかしいけど、何時もの母さんに比べたらかなり優しい方だ。


「えぇ。 早速今から電話するわ。」


「頼んだ。」


これで明日の事は安心だな。母さんがこんなことで失敗する筈無いし。暇だから母さんの電話の会話でも聞くか。



「もしもし桜聖学院の理事長さんですか? 私は桐生咲の母です。 この度は少しお願いがあって電話させて頂きました。 明日の身体測定に娘は出ず、家で測って記録を提出すると言う形をとりたいのですが宜しいですか?」


随分ストレートに頼んでるな。普通ならこんな風にお願いしても通るはずが無いんだが、母さんだから絶対これで終わるはずが無いんだよな……。理事長さん可哀想に。


「え? そんなのは無理? どうしてですか? ちゃんと記録は誤魔化さずに書きますよ。 え? そんな保証は無い上に一人の生徒だけを特別扱いはできない? そうですか……。 では少しお話でもしませんか? つい最近とても面白いことがあったんですよ。 これは昨日の夜9時ぐらいでしたか、町を歩いていたらある人物が女の人と腕を組ながら歩いていたんですよ。 これだけならなんとも無いのですが、実はこの人物は私の知ってる人でして、しかも結婚してるんですよ! これどう思いますか? やはり直ぐに妻に連絡するべきだと思いませんか? え? さっきの頼みは許可するからその事は誰にも言わないでくれ? 別にあなたのことを言った訳じゃ無いですけど許可してくれて有難うございます。 それでは。」


どうやら終わったみたいだな。ってかさっきの会話の後半は誰がどう見ても脅迫だろ……。でも理事長さんも何やってんだろ……。まぁオレには関係無いから別に良いけど不倫は人としてどうかと思うぞ……。


「翔ちゃーん、許可貰ったわよー。」


「ありがと母さん。 これで心配の種が一つ減ったよ……。」


本当に良かった。これで今回はバレる心配は無くなったな。っと言ってもこれから何があるか分からないから安心はできないけど……。はぁ〜、面倒だ……。でも面倒なことって大概は大事な事だからやらなきゃ駄目なんだけど……。


「それじゃあ翔ちゃん。 早速測りましょうか♪」


「え? 今から? ってか何でそんなに楽しそうなんだよ。」


「だって早めに終わらした方が後が楽でしょう? それに楽しみじゃないわよ♪」


「まぁ、な。 母さんの言う通りだし、サッさと終わらすか。」


早く終わらして心配事を減らすのも良いな。そして母さんは絶対に楽しみにしているな。何が楽しみなのか知らないけど……。それから母さんにあれこれ調べられ、身心共に疲れたところで晩飯を食べて、今日は終わった。

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