第1章:俺が桜聖!?
懲りずにまた学園物、しかも高校生活を書く馬鹿な作者ですが、読んでくれたら嬉しいです!
『僕の高校生活!!』も同時に更新していく予定ですので、よければあちらも読んで下さい。
「翔ちゃん、明日から桜聖に通いなさい。」
「……は?」
「だから、翔ちゃんは明日からこの桜聖学院に通うのよ。」
「はぁぁぁ!!??」
「うるさいわね〜。 何よ。」
うるさいって……。母さんが意味不明なこと言うからだろ!
「叫ぶのは当たり前だろ!! なんで桜聖なんだよ!!俺はちゃんと、盟聖を受かっただろ!!」
盟聖とは盟聖学院と言って、世界でもトップクラスの共学校である。
「知ってるわよ。 あれは私のコネを使って取り消しにして、桜聖に変えて貰ったわ。」
「何『友達に本を貸してもらうよう頼んだの』みたいなノリで言ってんだよ!!」
「私にとってはそんな感じなのよ。」
「はぁ〜。 まぁそれは分かった。 だが、なんで通うのが桜聖なんだよ!!」
桜聖とは桜聖学院と言って、盟聖の姉妹校であり『女』学院である。
「何が不満なのよ。 あそこは盟聖の姉妹校じゃない。 それに、翔ちゃんならどっちに通ってもトップには変わりないじゃない。」
「俺は成績のことを言ってるんじゃない! 俺は『男』で桜聖は『女』学院じゃないか!! どうやって通うんだよ!!」
そう、さっきから叫んでるのは桐生翔と言う『男』である。
「そんなの女装したら良いだけじゃない。 幸い翔ちゃんは髪は長くて綺麗で、顔をも女顔だし、ムダ毛とかも全くないし♪」
そんなムチャを言うのは人は、桐生沙璃と言って、翔の母親である。
「くっ! 髪以外は認めるけど……。 髪は母さんが切るなって言うから置いといて、たまに母さんに切って貰ったんだろ。 はっ! まさか……。」
「そう、そのまさか。 翔ちゃんはきっと綺麗な子になると思ったから、髪は私が手入れしてたの。」
「じゃあ桜聖に入学させるのも……。」
「えぇ。 小学校の頃から無駄に頭良かったから、高校は絶対桜聖に通わせようと思ってたの♪」
まさか小学校の時からの計画だったとは……。なんか計画通りにいったみたいで腹が立つな。
「だけどすぐバレるだろ。 見た目でバレないとしてもだ(それだけで男としてはかなり悔しい)仕草や言葉づかいでバレるだろ。」
「忘れた? 私は昔から翔ちゃんに、礼儀作法はしっかり教えてきたでしょ。」
そ、そういえば教わったような……。だ、だが!!
「仕草はなんとかなると言うのは分かった。 だが言葉づかいは? こればっかりはどうしようもないぞ。」
「うふふふ。 私を舐めないでよね。」
何か対抗策があるのか!?いや、あるわけない!ある……わけ…な……い、まさか。
「そっ、今から私が直々に徹底的に女の子の言葉づかいってのを叩きこんであ・げ・る♪」
え……。母さんが、直々に、徹底的…に………。
「い、いやあああぁぁぁぁ!!!!!」
そして次の日
「おはよう。 お母さん。」
「おはよう。 うふふ、元から声高かったからちょっと女っぽい喋り方にして、見た目を女の子にしたら違和感全然ないわね。 やっぱり私の目に狂いは無かったわ♪」
俺は今、桜聖の制服(セーラー服)を着ている。スカートのせいで足がスースーしてなんか嫌だな……。
「うっうっうっ……。 でも母さん、なんで俺を桜聖に通わせようと思ったんだ?」
「そんなの翔ちゃんの女装姿が見たいからに決まってるじゃない!」
「本物の息子じゃないにせよ、そんなこと要求するなよ!!」
俺と母さんは本物の家族ではない。
血が繋がってないってことだ。
俺は物心ついた頃から、実の父に虐待をされていた。
母は俺を産んですぐに亡くなったらしい。
俺は痛い思いをしたくなかったから、必死に勉強して、必死に運動して、一番を取って誉められようとした。
だが、あの父は自分はかなりの落ちこぼれだったのに比べ、俺は成績、運動、性格、容姿、全てにおいて完璧だった。
それ故にさらに虐待は激しくなった。
初めは、まだまだなのかと勘違いしてもっと頑張ったら、更に酷くなった。
周りの人はいつも傷だらけの上に完璧な人だったから、周りは遠くから見てるだけで、俺は完全に1人だった。
そんな日が幼稚園の半分位まで過ぎたある日。
いつも通りまた痛い思いをするんだなっと諦め気味に帰ったら、中から血の臭いがした。
最初は俺の血かと思ったが、朝行くときは臭わなかったから違うとすぐ分かった。
なら誰の?と思いリビングまで行くと、そこには心臓に包丁が刺さったまま倒れている父がいた。それを見たとき、嬉しさと悲しさから涙が出てきた。もう痛い思いをしなくて済むって言う嬉しさと、父が死んだって言う悲しさ。その後、この場にいたくなくなった俺は何も持たずに家を出た。子供で何もない俺はやがて疲れて倒れてしまった。その時、俺を拾って家で介抱してくれたのが今の母さんだ。最初は、また痛い思いをすると思って家を出ようとしたら
「どこに行くの?」
って聞かれた。俺はどこに行く当ても無かったから、何も返せず俯いた。
「どこにも行く場所が無いなら、ここで住む?」
それは嬉しい誘いではあったが、当時の俺は大人はみんな怖いって思ってたから
「嫌だ! どうせあなたも俺に痛い思いをさせるだ! そんなことされるぐらいなら、今すぐ出て行く!」
痛い思いをされると思っていたから、急いで出ようとしたら質問をされた。
「ど〜して痛い思いを私がさせるの?」
ど〜してそんな質問をっと戸惑いながらも俺は答えた。
「大人は自分にとって不快なことがあれば、直ぐに子供を攻撃する酷い人だからだ!」
あの時の俺にとって、大人はみんな父みたいな人だと思っていた。
「そうね。 確かにそんな大人もいるわね。 でも、どうして君はそんな風に思ってるの?」
母さんはあの時の俺にとっては意味不明なこと聞いてくるから、いつの間にか逃げるのも忘れ話込んでいた。
「だって俺の親がそうだったんだから。」
「……そのこと、聞かしてくれる?」
俺は聞かれたとき、何故か話してしまった。きっともしかしたらこの人は違うのかもって、感じたからかもしれない。
「う、うん。 実は………………ってことがあったの。」
喋ってる間、ずっと俯いてたから言い終えた後に顔を上げて、俺は言葉を失った。何故なら、目の前の人が泣いていたからだ。
「そう……なのね。 そんな辛い目にあったのね。 大丈夫、もう大丈夫だからね。」
そう言って俺を抱きしめてくれた時、俺は泣き出した。それからしばらくして
「ねぇ君。 一緒に暮らさない? 私も夫を亡くして1人なの。」
「あなたも、1人、なの?」
「えぇ。 だから、一緒に暮らさない?」
そう誘われた時、すでに俺の心は母さんに完全に傾いていたから、すんなり受け入れた。
「うん。 俺、あなたと一緒に暮らしたい!」
「うふふ、これから一緒に暮らしましょうね♪ あっ、そうだ名前は? 私は桐生沙璃よ。」
「俺は今井翔。 あの、桐生翔って名前に変えても良い?」
「えぇ。 今日からあなたは私と家族なんだから、桐生って名乗りなさい♪」
「うん!!」
あの時から俺は、今井翔から桐生翔に変わり、母さんの家族の一員となった。
あれから母さんに鍛えられて、身体能力は常人を軽く凌駕してしまった。母さんは昔、自分で自分の流派を作ったらしい。そしてそれは、当然に俺にも受け継がされた。あの時は何回死ぬと思ったか……。母さんの期待には、絶対答えたいと言う思いがあったから何とかなったけど、それが無ければ今頃どうなってたか。考えるのも恐ろしい……。
「そんなの関係無いわよ! 私が女装させたいからさせるのよ!ってどうしたの、翔ちゃん。」
「ちょっと母さんとの出会いのことを思い出してた。」
「そう。」
母さんの顔がとても優しくなった。
「どう翔ちゃん。 今幸せ?」
うん。 母さんに大事にされて、とても幸せだよ!」
「それは良かった♪ さて、今からちょっとメイクするわよ!」
「メ、メイクゥゥゥ!!??」
「そうよ。 これから女学院に通うのだから、少しでもバレないようにしなきゃ!!」
「母さん、それもあるけど本音は俺にメイクしたいだけだろ……。」
「当たり前よ! 今までは無理やりだったけど、これからしばらくは本人の了承を得てできるのだから、これほど嬉しいことは無いわ!!」
今回も無理やりとほとんど変わらないだろ……。でもこんなにも嬉しそうな母さんの顔を見てると……。
「はぁ〜。 分かった、素直にメイクされるよ。」
「あれ、やけに素直ね。 もっと抵抗するかと思ったのに。」
「抵抗しても無駄ってのは分かってるし、母さんの嬉しそうな顔を見てるとまぁ良いかなって思えてきた。」
「やったー!! 翔ちゃんから許可が下りたー!! さ〜て、時間もあまりないしさっさとやるわよ〜。」
そんなに嬉しいのか。まっ、時間も無いのは確かだし大人しくしとくか。
「ここをこうして、ここは……………よし、完成!!」
どうやら終わったみたいだ。どれどれ、どんな感じかな〜。
「…………。」
「ど、どうしたの翔ちゃん。 私、どこか失敗した……?」
母さんが心配そうに聞いてきた。おっと、あまりの出来の凄さにしばらく呆けてしまったぜ。
「いや、大丈夫だ。 あまりの出来に声が出なかっただけだ。」
「そう、ならよかった。 さっ、翔ちゃん。 早く食べて行かないと時間無いわよ。」
「うわっ! ほんとだ!」
時計を見て時間が無いのが分かったら、急いで食べて急いで準備した。
「えっと、忘れ物はっと…………よし、ないな。 母さん、行ってきます!」
「あっ、ちょっと待ちなさい。」
「何? 時間無いから早くしてくれよ。」
「分かってるわよ。 行く前におさらいね。 まず昔教えた作法通りに振る舞いなさい。 言葉づかいは昨日みっちり叩き込んだからそれを。 名前は、翔のままじゃバレるから向こうでは咲って名乗りなさい。 良いわね?」
「分かった。 今度こそ行ってきます、母さん!」
「行ってらっしゃい。」
こうして、俺の女学院で女装しての生活が始まった。