03.どうして私のが!? 謎と悪意の贈り物
14日、ホワイトデー。2年1組の女子22人にもプレゼントが届いていた。送り主は〝総合コースのタクヤ〟だった。
「すごいよね!? 女子全員分ちゃんとしたの用意してるんだよ! どこの坊っちゃんだー?」
竹浜が須江にそう言いながら小箱を開けていた。
「何これ!? 女子、もらったの見てみ!? こいつ変だよ!」
竹浜の話を聞いて、清水も贈り物の中身を見た。箱の中にゴミや石ころがぎっしり詰まっていた。
「私のは違う! 箱に何か書かれてるだけだった!」
「何かって?」
清水ら女子だけでなく、男子も須江の周りに集まった。
「ちょっと読みづらいなぁ。えっと……『前言撤回。貴様らを消す事はしない。ただし、須江珠綺。貴様の家宝には気をつけろ』」
「家宝?」
皆が同時に聞き返した。
「うん……あ、お母さんからだ」
須江が電話に出た。
「珠綺、大変! お父さんの書斎に泥棒が……」
須江の母の声が漏れている。
「泥棒!?」
「それでね、落ち着いて聞いて。亡くなったお爺ちゃんからもらってた本あるでしょう? あれがね……盗まれたの」
「嘘!? あれって……犯人は!?」
「私達は見ていないの。ただね、裏の奥さんが、高校生くらいの女の子がうろうろしてたけどもしかしてって……|
「どんな子か聞いてない!?」
「確か――」
須江の母が語った本泥棒の特徴は、これまでに聞いた〝ぎっちょん〟のと完全に一致していた。
「――そう。まだ捕まってないんだよね?」
「えぇ」
「うん、分かった……」
須江が電話を切った。
「気をつける以前に取られちゃった」
「どんな本なの?」
倉埣が須江に尋ねた。
「分からない……ただ、すごく古くて、江戸時代頃の事が書かれてるみたい。高校卒業したら見せてもらう事になってたんだけど」
「そっか……ぎっちょんも、タクヤ君も何でその本狙ったんだろ。今起きてる事と関係ないよね?」
「だよね……本当、何でかなぁ?」
須江がため息交じりに呟いた。
教室のゴミが一気に増えたのを担任が不審に思い、女子のクラス委員が〝総合コースのタクヤ〟からのプレゼントについて報告した事によって、1組で起こっている問題が公になった。3組と6組でも異変があったようで、ホワイトデーでの盛り上がりは一転し、2年生中に「次は自分のクラスが狙われるかもしれない」という不安が広がった。
「1組大丈夫?」
放課後。清水らは同じ頃に部活が終わった蛇田に会った。
「大丈夫な訳ないよぉ……同級生んちにも被害出たし」
アコが家宝泥棒の事を蛇田に告げた。
「うーん……一体何なんだか。関連性なさそうに見えるけど、気になるね」
「蛇田だっけ? やっぱ気になるっしょ?」
竹浜が須江と一緒に近寄って来た。
「うん」
「だってよ、須江」
「そっか。それなら蛇田さん、あの本の事も調べてくれないかな? 私もよく分からなくて……」
「いいよ、任せて!」
蛇田が自信ありげに応じた。
「それにしてもさ、あたし達が今やってる事、あれに似てるよね」
「あれ?」
竹浜が蛇田の言葉に反応した。
「夏にあったじゃん。仙台の女子高生が家族だった人達にしつこく迫られたやつ……お父さんから聞いたんだけど、あれね、同級生皆が狙われてた子守ったんだって。犯人追いかけたり取り押さえたりしてさ」
「そうだったんだ。確かに似てるわぁ」
この後、帰る方向が同じだという竹浜と須江も一緒に、不穏な空気が漂う学校を出た。