対話
その夜、綱は母親に言った通り、山を登っていた。昨日と同じく、一昨日ように道中襲われることは無かった。綱の脚はそのままある場所に向かう。そう、昨日あの女鬼と出逢った場所にだ。
そして開いた場所に出た。やはりそこには、大きな平たい岩に腰掛ける銀髪の女鬼がいた。
「あら、今日も来たの?」
「ええ。少し貴女と話したいことが出来たので」
「あらあら…どういう心境の変化かしら?まあ話をすると言うならこっちに来なさいな」
そう言うと女鬼は自分の隣をポンポンと手で叩いて示してみせる。綱は近づき素直にそこに腰掛ける。
「あら…素直ね。一つ間空けて座ると思ったんだけど」
「もし貴女が私をどうにかしよう、と考えたならそんな距離何も意味無いことは昨日で分かってます。なら少しでも対話の意思を見せれるように素直に座りますよ。」
「それ言ってもよかったの?」
「別に構いませんよ。というか一つ空けて座っても貴女から近づいてくるでしょう。貴女はそういう性格してそうです」
そう言うと女鬼は「ふふっ」と笑い、
「そうね、それはその通りね。全く…今日も『対話する』なんて言って近づいてきて斬りかかって来るつもりなんじゃ、とか考えてた私がバカみたいね」
「警戒するのは当然です。むしろ昨日貴女を襲った人間が近づいてきたのに何の警戒もしなかったらその時点で話をする気なんてなくなってましたよ」
「あら怖いわ…ふふっ、ふふふっ」
しばらくの間女鬼は笑ったかと思うと、女鬼はこう尋ねる。
「話をする前にこれは聞いとかないとね…貴女、名前は?」