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逢鬼物語  作者: 雅姫
2/14

出逢い

次の日の夜、妖狩りの少女は昨日と同じ山を登り、そこに巣食う妖の討伐に来ていた。


昨日も相当数の妖を葬ったが、この山にはまだまだ多くの妖が潜んでいるらしい。しかもこの山に潜む妖のほとんどが妖の中でも最上位の存在である『鬼』の種族であるとされ、並の妖狩りでは手が出せない。そこでこの少女ー名を天乃 綱というーが単身この山に潜り、妖の討伐に当たっている。


この綱、その幼い容姿からは想像出来ないほどの実力者であり、実際『当代最強の妖狩り』と呼ばれるほどである。


昨晩、綱が葬った妖はその全てが鬼であった。それらは鬼の中でも弱い方の部類、『小鬼』ではあったが並の妖狩りならば小鬼であっても一対一では危うく、二対一で安全に倒すことが出来る。しかし綱はたった1人で数十体の小鬼を疲れた様子も、怪我もなく葬り去ったのである。


現在このような芸当が出来るのは綱の所属する妖狩りの組織『討妖庁』の中でも綱ともう1人、討妖庁長官である『天乃 頼光』、何を隠そう綱の母親のみである。しかし頼光は長官であり、多忙である為に綱が単身でこの山の妖を制圧しに来たわけである。他の妖狩りを連れてこなかったのは単純に足でまといにしかならないからであった。


綱は油断なく周りの気配に気を付けて山道を歩きながらある考え事をしていた。

(昨日の夜は意気揚々と襲い掛かってきたのに今夜は全く、気配すら感じません。これはどういう事…?昨日のことが広まって警戒して隠れているんでしょうか…?)

そんなことを考え、歩いていると拓けた場所に出た。月明かりがその場を照らし、随分と明るく、綱は「そういえば今日は満月でしたね」と呟いた。その場の中心と言ってもいい辺りには大きな平たい石があり、そこには人影が腰掛けていた。


その瞬間綱は腰に提げた刀を抜いた。こんな時間の山奥にいる地点で普通の民間人のわけが無い。異形のものか、良くて妖狩りである。しかし今夜他の妖狩りがこの山に派遣されていることなど当然知らされていない。ならば必然的に答えは1つ…妖、である。


「貴様!そこで何をしている!」


綱が刀の切っ先を向けながら問いかける。すると人影はやっと綱のことに気付いたようにゆっくりと振り返った。


「何って…ただお酒を飲みながら月を眺めていただけよ?」


その声はとても澄んでいた。聴くものの耳を優しく包み込むよ

うな声であった。そしてその声を発したその者はとても美しかった。よく手入れされてあるであろう、月明かりを浴び輝く銀色の髪、大きめの瞳の目尻は少し垂れていて優しさを感じさせる。鼻はすっと通っており唇は健康的でありながら、同時に蠱惑的な魅力も放っている。


綱は同じ女性でありながら思わず呆気にとられていた。この世にはこんな美しい女性がいるのかと。いや、この者は十中八九鬼であり、女の鬼はとても美しいということも知っているし、実際その目で見てきた女の鬼は例外なく美しかった。だがこの女の鬼は群を抜いて美しかった。いや、比べるのすら彼女に失礼だと思わせる、それ程までに美しい鬼だった。

そして綱が呆気にとられ黙っているのを見ると彼女に、


「あの…大丈夫?」


と言われやっと正気に戻った綱が


「鬼…ですね?」


と問いかけると、


「ええ。そうよ。そんなあなたは妖狩りかしら?」

「そうです…ならば分かるでしょう?ここで…狩らせてもらいます!」


そう言って綱は一瞬で間合いを詰め、鬼に斬りかかったー

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