母娘
同刻
討妖庁の長官室にて綱は本日の報告をしていた。
「ーーー以上です。」
「はい。分かりました。では明日から『逢』と協力し『妖』討滅にあたりなさい」
「はっ!」
「…というわけで今日の仕事は終わり。久々に一緒に帰りましょう」
「はい、母様」
綱と頼光は討妖庁から出て、家路につく。
「ねぇ綱、今日『逢』ちゃんと話してみてどうだった?」
「?それはさっき報告したとおり…」
「じゃなくて。貴女個人としてはどう思った?」
「個人として…?それはまあ…綺麗だなぁ…と」
「あら、そんなに綺麗なの?」
「はい。今まで色んな女鬼も見てきましたけど、それらと比べるのが失礼と思えるくらいに」
「なるほどね…やっぱりあの2人の娘なのね…」
「え?はい、それは本人が言ってたので間違いありません」
「そうね…そういえば綱は『朱天』か『涼香』に遭遇したことってあったかしら?」
「恐らくないと思いますが」
「ならその2人にもあったらビックリするわよ、あの2人もこの世のものとは思えないほど綺麗だから」
「女鬼の『涼香』はともかく…男鬼の『朱天』もですか?」
「ええ。あれは綺麗、よ。」
「はぁ…ん?母様は2人にあったことがあるのですか!?」
「あら?話したことなかったかしら?昔あの2人が1度だけ都に来たことがあってね?」
「はい!?いやでも逢の両親ですよね?逢が言うには…」
「そう。2人は言ったわ。『ここを襲うつもりは無い。ただ住処に困っている同胞が多くいる。だから住処として西の山を頂く。そこに手を出さないならこちらから何かをすることはない。』ってね」
「強行的ではありますが…実質的には和睦の提案…ですか?」
「ええ。流石にその時信用できたわけではないけれど…こちらには選択肢はなかったからね。もし1人なら私が相討ち覚悟で戦ったら討ち取れたかもしれないけど…まあ無理よね」
「それから実際西の山から何かをされたことなんてありませんよね?」
「ええ。だから今はあの2人の言葉を信じてるわ。私はその時『妖』も人と変わらないんだなって思ったわ。」
「『妖』にも人と同じく悪もいれば善もいる…」
「そうよ。まあこんな事言っても他の人に言っても信じてもらえないけどね…さあ家に着いたわ。お風呂入ってご飯食べて寝ましょう」
そして2人は一緒に風呂に入りご飯を食べ、眠りに就いた…。




