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頭の中にがんがん寿命情報が入ってきても混乱せず、
手際よく進めてゆく。ここに来てどれほど経ったかわからないが、
だいぶこの作業にも慣れてきた。寿命タンクは順調だ。
元々物資を貯めたりするゲームが得意だった。
貯める事が楽しみでもあった。ゲームの中とは言え貯蓄があるのは誇らしかった。
しかし現実の俺は・・・・・・。
溶鉱炉へ飛び込んだ時の感情が蘇る。
深くため息をつきながらも仕事を進める手は休めない。
ここに来てこの仕事をやるようになってから、
個人的な考え事や感傷、感情と仕事の事はまったく別で処理できるようになっていた。
これは俺がここに慣れたのもあるが・・・・・・。
この仕事に対応出来るように俺の能力は人間だった頃とは別次元になってるんだろう。
ミカンもそんな事を言っていた。
重要かと考えた情報のモノを処理し、休憩に入る。
しばらくは自分が決定しなくてもいい、と、判断すればオートにする。
オートにしておけば全ていいように処理してくれる。
これのおかげでまったくホワイトな職場だ。
薄暗い何もない空間へ倒れこむ。
すぐに座り心地の良いソファーのようなものに包み込まれる。
実体の体があるのか無いのかわからない。
しかし疲労感は多少はある。能力があるとは言っても流石にこたえる。
暗闇に一人漂うような感覚を堪能していたその時。
メールが入った。立ち上がり、ミカンを呼ぶ。
今のところメールは内容確認せずそのままミカンに渡す決まりだ。
「お疲れ様」
すぐに現れる。
こいつはいつどこで仕事してんだろうな。休んでる様子もないし。
能力が違うのか?元々モノではなかったようだし・・・・・・。
納得したような面白いものを見つけたような笑顔のミカン。
メールは読んでいない。直接そのまま頭に入る。俺が情報を処理してるのと同じだ。
あらゆる情報がそうなるのがこの世界では当たり前だと言っていた。
前に見せた映像は俺がそれに慣れてないため、
特別にエンターテイメントとして見せたと言う。
「なあ、ミカン」
「ん?」
「なんでメールって直接お前のところへ行かないんだ?
確認するのはお前なんだから直接行ったほうがいいだろ」
「今のところはね」
「今のところ?」
「そのうちこういうのもカツミにやってもらうからさ」
「寿命管理だけじゃなかったのかよ」
「これだって寿命管理に関わるメールなんだよ。
それ以外は私のところへ直接来るようになってる」
「なるほど、ね」
まあそれならそれでいいか。軽く返事を返す。
「ねえ、カツミ」
「なんだよ」
「これから見学行こうか」
「見学?」
「869527地区で面白いものが見れるかもしれない」
顔を近づけながら笑う。
こういう時のミカンは時々なまめかしくエロさを感じる。