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「なに?」
黒いショートカットの髪の毛をさらりと躍動させながらまたターンを決める。
「理不尽な死ってやつをやられたモノにはなんていうか、
助け、みたいなのでさ。幸せな転生ってのはないのか?」
「なるよ」
「え?」
「ん?」
「いやいやいや、お前あれじゃん。
寿命タンクに余った寿命が貯蓄されるって言ったじゃん」
「そうだよ」
「じゃあなんで生まれ変わりできんだよ」
「あー・・・・・・」
納得したような顔をして、左手のひらを右の手でポンとたたく。
「逆に聞くけどさ。カツミはまだ寿命があるのに自殺した。
その残った寿命はタンクの中。ここに存在してられるのは別の方法だから寿命関係ないんだけどさ。
更に酷い生への転生も選択肢にあったよね。どうして転生できると思う?」
わけがわからなくなって黙り込んでしまう。
「そんな考え込まないでよ。答えは単純なんだから」
「単純?」
「そう。すごく単純。ヒントは今のカツミのお仕事」
「俺の今の仕事・・・・・・」
頭の中に寿命タンクの残量がちらつく。
「あ、ああ。そうか。そうなってんのか」
「そうだよ。まったくこんなこと気がつかないで管理やってるなんて、
私の責任が問われちゃうよ」
ほほを軽くふくらませる。
寿命タンク。こいつだ。
残った命を入れたり寿命を延ばすために出したり、
生まれ変わりに言われた量の命を回す。
俺は生まれ変わりそのものには関われないが。
そのやりくりが俺の仕事だった。理不尽な死にもそれが関係してんのか。
「ごめん、あともう一つ。あ、いや二つ」
「いいよ」
「ここの元管理担当ってどれくらいいるんだ?
それとそいつらが転生してから今の映像みたいにやらかしてここへ来た場合の対応」
「一つ目の質問はね、たくさん」
「は?」
「たくさんとしかいえない。
転生したモノもいればさっき言ったみたいにここへ落ち着いて、
上へ昇進したモノもいるからさ。
私だって最初からここに存在してるわけじゃないし」
「そうなのか」
「二つ目はね、私が直接処理する。カツミは関わらなくて大丈夫」
抑揚なく処理という発音をしながら笑顔のミカンに鳥肌がたった。