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やる気がみなぎってナコの事はすっかり忘れる。
「それはどれくらいここで仕事すればいいんだ?」
「優秀な仕事してくれれば担当期間は短くてすむよ。ただ・・・・・・」
「ただなんだよ」
「あんまり優秀すぎると手放したくなくなるから、
ここより上の地位に格上げで永久就職」
「なんだそりゃ」
「そのままだよ」
「やりすぎると生まれ変われないのかよ・・・・・・」
「ごめんごめん。説明不足。全部選択肢があるんだ。優秀でここで働きたいなら、
ずっとここで働いてもいいって事。もちろん昇進するから現場も変わるけど。
転生以外の選択肢にそういうのが増えるの。ここに就職したモノもいるよ」
安堵の息をもらす。
「んで、もし俺がそんなにまで成績上げたらどんな転生できるんだ?」
「そうだね。
ここで働くっていう選択肢がでるような実績出したら、半永久の幸福な生、かな」
「半永久の幸福な生?」
「さっき言った約束された転生の一つ。
口で説明するよりこれ見てもらった方が早い」
ミカンがスクリーンを出現させる。
「映画観る気分でどうぞ。
ビールとポップコーンでも出そうか?」
「そんなもんあるのかよ」
「私たちは飲み物も食事も必要ないけど、
そういうのも出せるようになってる。福利厚生の一つかな。
嗜好品としてはあった方がいいでしょ」
こいつ、というかここの福利厚生ってどうなってんだ。
よくわからん、と思いながらせっかくなのでビールを頼んだ。
自殺する前に飲んだ最後のビール。
そんなに月日も経ってないはずなのに妙に懐かしい。
ビールを受け取りスクリーンを見る。
周りは優しく何不自由なく生活する幸せな人間が主役で、
その主役に正直イラっとする。
その主人公は性別や場所を変えながら、
常に幸せに生まれ変わり育ち死んで生まれを繰り返した。
「ルールを犯さない限りこの地球が無くなっても、
また別の星で別のモノとしてこうやって暮らせる」
ミカンがつぶやくように言う。
「別の星?ルール?」
ビールを飲みながら聞く。
うまい。ビールうまい。福利厚生に納得した。
「さっき半永久って言ったでしょ。
約束された転生でも永久はないってこと。
ホラ、ここからだよ。別の星とかについてはまた今度ね」
初めて会った時のあのニヤリとした笑い。