2
頭をコツコツと叩かれ目を覚ます。
「目、覚めた?」
黒髪少女だ。
まだめまいがする。
「無理して起きなくていいよ。
初めてはこうなるんだ」
こうなる。初めてはこうなる?
こいつ知ってて・・・・・・。
「知っててなんで言わなかった?て目だね。
ちょっと前までは説明してたんだけどさ。
実体験しないとわからないんだよ、結局」
実体験。そうだ、こんなもん説明されてもわからない。
一気に生きてたやつの、あの幸太とかいうやつの気持ちや記憶、
残された周りのやつらの少し先の未来が頭に叩き込まれてきた。
「いやー、説明してた頃の時にさ、
今の私は虫の居所が悪いんだ。あーっはははははははは!
て一気に寿命処理しちゃったモノもいてね」
まだ立ち上がれない俺を横目にところどころ演技を混ぜて続ける。
「一つ死ぬの決定しただけで君その有様でしょ。
当然そのモノはもう意識戻らなくてさ。強制転生。
うん、もちろん下のほうにね。そういうのがもう何回もあったから、
私が3357地区の最初の仕事に適性試験に組み込んだんだ。
この仕事にスカウトしてくるのは私なんだけど、
そうやってたまにちょっと間違えたモノ連れてきちゃったりとかもしてさ。
担当地区でしょ。そうなると後で上から怒られるのよ。始末書いっぱい」
にっこりと笑う。とても可愛い笑顔だ。
この少女のやってる事を知らなければ天使の笑顔に見える。
「さ、さっきの。さっき死んだ青木幸太。
あいつ死んだ後周りが酷いことになってた。
あれ、あいつやっぱり死んだの無しって事で、
生かしてやれねえのか?」
やっと立ち上がりながらたずねる。
「無理。言ったでしょ。
君の役目は寿命を延ばすかそのまま死なせるか。
どっちを選んだにしてもアフターケアみたいなのはダメ。
ましてや生き返らすとか・・・・・・・」
少女は珍しくしばらく沈黙した。それから笑顔に戻り。
「とにかく君は初仕事と適正試験を無事終わらせた。
こんな感じでまだ試験みたいなのもおりまぜてあるから、ま、気軽にやっていってよ。
君が一人前になるまで処理しきれないのは私がやってるからさ」
「気軽にって、お前!」
「あれえ。あれあれ?
恵まれてて不摂生だから死んでいいって気軽に決めたの。
誰だっけ?」
寒気がして体が動かなくなる薄ら笑いを残し黒髪少女はまたどこかへ消えた。