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「こちらが支配の間となっております」


 燕尾服を着た女性――フローラに案内されてやってきました「支配の間」。


 あの後――衝撃的な話の後、実際にダンジョンを運営してみようということになり、「支配の間」まで案内してもらった。といってもただ単に隣の部屋に来ただけだったりするけど。


 「支配の間」は大体高校とか学校の教室くらいの大きさだった。そして、部屋へと繋がる扉とは反対側の壁に大きなスクリーンぽいのがあった。さらに、その下の部分は出っ張っていてそこに様々なスイッチが設えられていた。


 フローラはその出っ張りに近づき、ボタンの一つをポチリと押した。


 ウィーーンとコンピューターの立ち上げの時に出るような音を響かせてスクリーンが起動した。しかし、画面は真っ暗で唯一右上に白字で何か書かれていた。


 目を凝らしてよく見る。なになに……。


『○迷宮製作

 ○配下召喚

 ○商会呼出

 ○その他』


 この4つの項目だけだった。何これ?


「こちらの画面を用いてダンジョンを作製して頂きます。どうぞこちらへ」


 フローラが僕の心の中の疑問を見透かしたように説明してくれた。そして、言い終えると同時にまた何かボタンを押した。

 すると、今度は床の一部が割れて下から椅子がせりだしてきた。


「こちらにお座り下さい」


 言われるがままに座る。目の前には様々なボタンがあったが、一体どれを押したらいいものやら。


 悩んでいると僕の斜め後ろに移動して控えていたフローラが一つ一つ解説してくれた。先程とは違って真剣に聞く。ここで聞き落としがあると危険なことになりそうだからだ。大まかではあったけど全て説明し終えたフローラは一つ提案をしてきた。


「マイマスター、これらのボタンの説明は以上ですが、未だ使い方を把握できたとは言えないと思われます。そこで、物は試しと言いますように、ここは一つ初心者講習をお受けなさいませんか?」


「初心者講習?」


 何、そのいかにも車の教習所とかにありそうな講習は。ただ、その胡散臭さを脇にどけると確かに有りかもしれないな。僕はゲームとかは使い慣れていくうちに覚える派だしね。


「じゃあお願いします」


「承りました。ではまず、今回の初心者講習につきましてですが、その性質ゆえ仮想上での体験となります」


「それって実際に作ったわけではないということ?」


「仰る通りに御座います。今回の講習でお作りになりましたダンジョンは実際の運営には影響いたしませんので予め御了承ください」


「わかりました」


「では、講習モードを立ち上げます。後ろから失礼します」


 僕の後ろから手が伸びてくる。その際肩に男の夢とも言うべき物が乗っかってくる。ふにゃりとした感触と柔らかな布の感触だけ。もしかして、着けてません? 誘ってます?


 そんなとりとめもないことを考えていると、ボタンが押され画面の上に「講習モード」という文字が浮かび上がった。


「出来ました。それではまずはこちらのボタンをお押し下さい」


 右肩に魅惑の果実をのせたままボタンを指差すフローラ。義姉さんと義妹で無心になる技術が身に付いていなければ勘違いしていただろうな、これ。


 それはともかく、指示されたボタンを押す。すると、画面が「フロア選択」状態になった。でも出ているフロアは一つだけ。


「講習モードですので選べるのは決まっております。実際には千以上のフロアがありますのでご安心ください」


 千以上! それは逆に困るだけじゃないのかな……。


「また、フロアにはレベル制限が御座います」


「レベル制限?」


 新しい単語の登場に首をかしげる僕。レベルってまるでRPGゲームみたいだな。


「はい。レベルとはその人物の強さを示す指標みたいなものとなります。

 例えばレベル一の人物ですと筋力や魔力、敏捷力など肉体的な要素は軒並み低くなっております。言い換えますと攻略される可能性が低いということですね」


 フローラの言い回しに少し違和感がある。何だろう? しかし、その僕の疑問はそのままに説明は続く。


「そして、このレベル制限はフロアの構造が広大複雑になるにつれあげられていきます。

 今回こちらに用意されておりますフロアのレベル制限は一となっておりますのでご確認ください」


 感じた違和感はなんだったのか。それを考えながらも、画面に一つしかないフロアを選択し、情報を確認する。


 画面の右側にフロアの構造が、左側にフロアの様々な情報が書かれていた。ふむ、色々あるんだ。材質や属性、光源や温度とかまであるぞ。


「これらの詳細はそれぞれの情報を選択することで変更することも出来ます。ただ、その際レベル制限が変わりますのでご注意ください」


「なるほどなるほど……ん? じゃあ、最初にフロアを選ぶ意味がないんじゃ?」


「いえ、フロアの大きさや部屋の数などはフロア毎に決まっております。また、選んだフロアの種類によっては詳細の変更で選べないものも出てきます。ですので選んでいただく意味はあると存じます」


 はー、ゲームみたいに作ってはいるけどやっぱり好き勝手にはできないか。


「フロアの選択はよろしいでしょうか? 大丈夫であれば確定ボタンを押してください」


 ふむ、これか。ボタン群の右下にでかでかと存在を主張しているボタン(表面に『確定』と書かれている)があった。何だかバカにされている気がしないでもないが気にしないでおく。


 僕が押したら画面の内容が一新された。といっても半分だけ。右側にあるフロアの構造はそのままで、左側には俗にゴブリンと呼ばれている緑色のモンスターや虎挾みみたいなものが一覧で表示され並んでいた。


「こちらの配下や罠を配置していただきます。一つご注意して頂きたいのはこちら側にもレベル制限が適応されるということです。例えばこちらの配下です」


 いつまで放置しているつもりなのか、誘惑のプリンが肩に乗っかったままだ。無心でいるから今はまだ大丈夫だけど、いつまでもつか分からないからそろそろ離れて欲しいな。


 でもそれは横に置いておいて、指差された配下を確認する。配下と言ってもただのゴブリン………………かと思ったら何こいつ。ゴブリンを二回りほど大きくした感じ。普通のゴブリンが小学低学年くらいの大きさとしたらこれは中学生くらいの大きさ。名前はゴブリンモンク……格闘家?


「こちらの配下はレベル10となっておりまして、今回のフロアに配置する事が出来ません。試しに配置ボタンを押してみますと……」


 ビーという警告音が鳴って、画面に配置できませんとウィンドウが表示された。


「と、このように警告が出るようになっております。以上で大体の説明は終わりとなりますが、ここまでで何かご質問はございますか?」


 ゆるゆると首を振ると、漸く身体を離してくれた。右肩が何か物足りない感じだけど、気のせい気のせい。下手な事を言うとセクハラになっちゃうし……捕まることはなくてもゴミ虫を見るような眼で見られることだけは勘弁したい。


「では、このフロアに配下と罠を配置なさってください。全ての配置が終わりましたら、こちらの確定ボタンを押して頂くことで次のステップへと進みます。どうぞ納得のいくまでお考えください」


 ふーむ。この講習で選択されているフロアは部屋が二つとこの支配の間が一つという非常に狭い状態だ。レベル制限は一。配下はゴブリンが10匹にゴブリンモンクが1匹。でもゴブリンモンクは実際は使えない状態だから無視だな。

 罠は虎挾みが5つに落とし穴が2つ、後は滑り増し……は? 滑りやすくなるって効果が書いてある。まぁこれが1つ。以上だ。


 画面と向き合うこと三時間。漸く満足のいくものができた。よし、これでいける。僕は配置を決めて確定を押した。

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