9.あんよの次は…
おやつを食べた後は、みんなで探検に出かけた。建物は、ついに二階建てに。1階がリビングと客室、キッチン、ダイニング、お風呂場と、いわゆるパブリックスペース。2階が、みんなの部屋だ。シンの部屋の両隣が、精霊王達の部屋になっていた。男の子部屋と女の子部屋である。聡とみさとの使う主寝室は、天蓋つきのキングサイズのベッドに、書斎までついている。
「わ~、書斎よ書斎!使えるの?」
「趣味の部屋にしてやる」
などと、二人が自分達の部屋で騒いでいると、子供たちはシンの部屋で遊び始めていた。
一通り自分達の部屋を見た聡とみさとは、シンの部屋の入口で思わず足をとめた。
6人の精霊王達がシンの相手をする様子は、見ていてほほえましい。それぞれの個性が出ている。
シンと一緒になって遊んでいるアカギ。それをさとす真面目なミドゥーリ。ケンカになりそうな二人をとりなすおおらかなチャイ。引っ込み思案なアオイを会話に引き入れるキンシャ。一歩ひきながら、みんなをまとめるクロウド。
「いいバランスだな」
「本当」
「あ、とうしゃま、かあしゃま!」
シンが聡とみさとを見つけて、駆け寄るのを、聡が抱き上げた。
「みんなと遊んでたのか。よかったなあ」
「はい!」
「外に散歩に行ってみるか?」
「いく~!」
「じゃ、私は、そろそろお夕飯の準備ね」
みさとがそう言うと、女の子チームがお手伝いします!と嬉しそうにくっついてくる。
男の子チームは、聡とシンにくっついていった。
10歳くらいに成長した女の子チームの腕は格段に上がっていて、作る量は増えたけれどみさとはずい分楽になった。キンシャは、ず~っとしゃべりっぱなしだったが、手も同時に動いていた。チャイは、ちょっとゆっくりだけど、確実に作業をこなし、アオイは口数は少ないが、作業は早いし出来上がりはきれいだ。こんなところにも性格が出るんだなと、みさとはふふっと笑った。
「お~い、みさと~」
窓の外から、ちょっと情けないような声で、聡がみさとを呼んでいる。なんだろうと、窓に近づくと、窓の向こうには、びしょ濡れの男子5人が立っていた。
「どうしたの!?」
「池に落ちそうになったシンを捕まえようとして落ちた…」
「全員お風呂場へ直行!!」
「「「「「はい!」」」」」
5人は、風呂場へと駆け出す。
その姿を見て、台所の女性4人は、顔を見合わせてため息をついた。
その夜、みさとはマニュアルを持って、寝室へとあがった。
ベッドで書斎の本を読んでいた聡が、マニュアルを見て片眉を上げる。
「聡、話があるの」
「ピロートークなら歓迎だよ」
「真面目な話」
聡の横に座ると、マニュアルをひざの上に置いた。
「で?」
「ん、あのね。私従姉の赤ちゃんのお世話を手伝ったことがあって、それで今までシンちゃんの育児、なんとかなってたの。でもね、従姉の赤ちゃんって1歳半だったんだよね。だから、これからどうしていいか、わからないんだ」
みさとが途方にくれたような顔で、聡を見る。
「俺は、全く子どものことはわかんないからな。でも、今までみさとが頑張ってくれてたのはわかるぞ?姉貴がちょうど妊娠したところで、お袋が不安がる姉貴に言ってたんだ。100人には100通りの子育てがある、ってな。だから、これからは、俺とおまえの子育てをすればいいと思う」
「聡…」
「さいわい、俺たちには強い見方がいるしな」
と言って、聡はマニュアルをポンと叩いた。
「さて、お父さんとお母さんの話は終わりだ。ここからは、夫婦の時間」
「ちょ、ちょっと!せっかく、人が感動したのに~」
「まあまあ」
なんだかんだいっても、仲のよい二人でした。
《シン》
いけのみず、のんじゃった~




