19.川の流れのように
アオイのお話。
水の精霊王アオイがこの世に生まれたとき最初に目にしたのは、神であるシンと、兄弟とも言える五人の精霊王達。
シンと話したくて、でもみんなに気後れして話せずにいると、土の精霊王と光の精霊王が中にいれてくれたのが、すごく嬉しかった。
シンにみんなで話しかけていると、お父さまとお母さまが起きてこられた。
二人とも、優しくてアオイはホッとした。
お父さまとお母さまに呼び名を決めてもらい、アオイの人生は回り始める。
アオイはキンちゃんとチャーちゃんと一緒にお母さまにくっついていた。
お母さまは基本シンと一緒だ。ミルクを飲ませ、オムツも変える。それから、お母さまの料理はとても美味しい。
お母さまはアオイたち3人にも、お料理を教えてくれた。もちろん、簡単な手伝いからだったが、アオイはお母さまのお手伝いができることが幸せだった。
シンが話せるようになって、正式な名前もついて、アオイたちも少し成長して、少年少女となった。
アオイはお母さまのお手伝いがもっとできるとよろこんだ。チャイとキンシャも同意見で、3人はいそいそとお母さまのお手伝いをするのだった。
女の子二人とはとても気が合うし話せるアオイだったが、男の子相手にはちょっとしり込みしている。
明るくて話しかけてくるミドゥーリと思慮深いクロウドはまだいいのだが、問題は元気なアカギだった。火の精霊王らしく情熱的でぐいぐい押してくる彼にアオイは引きぎみだ。むしろ苦手意識を持っている。
なるべく関わらないようにしているのだが、どういうわけかアカギはアオイにちょっかいを出してくるのだ。チャイの後ろに隠れながら、小さな声で答えるとずいっと近づいてくるアカギにアワアワしてしまうアオイであった。
たまにいっぱいいっぱいになってしまい涙があふれそうになると、今度はアカギがアワアワしはじめる。アオイの涙を止めようと必死だ。
そんな二人をお父さまとお母さまは「若いわね~」とあたたかく見守るのだった。
やがて、アカギにも慣れ、めったに涙を流さなくなった頃、シンが成神した。
精霊王達も同時に成人し、すべての力を使えるようになった。
世界が一気に成熟して行く。
アオイは世界の海を河を池を雨を感じた。
他の精霊王達も同じように体感しているらしい。歓喜の表情を浮かべている。
お父さまとお母さまもこの世界にとどまってくださるという。
嬉しさに涙を浮かべると、アカギがアワアワしはじめた。
「う、うわぁ、泣くな!何が悲しいんだ?!」
「悲しいんじゃないの、うれしいの」
アオイの答えにアカギが首をひねる。そんなアカギにアオイはニッコリ笑った。
二人のそんなやり取りに、みんながほほをゆるめる。
穏やかな毎日が始まった。
精霊王達は皆それぞれ楽な年齢の姿をとった。ミドゥーリは壮年、チャイは30代、クロウドとキンシャは20代後半、アカギは10代半ばの少年だ。アオイは10代前半の少女となった。
ちょっと引っ込み思案な自分にはちょうどいいとアオイは思っている。
キンシャやチャイの後ろではにかみながらも交流ができる。
「いいなアオイ。泣くんじゃないぞ?!」
「わかってるわ、大丈夫よ」
アカギとアオイのやり取りは今日も続く。




