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4.困ったときは ~Q & A ~

 タマゴに語りかけたり、抱きしめてみたり、出来るだけ、スキンシップを心がけた。片方が家事をしてるときは、一人でタマゴの相手をしたが、基本二人の間にタマゴがいた。

 家の中のことも、よくわかってきた。ゴミは、ゴミ箱に入れておくと次の日になくなること。冷蔵庫の中身も、一晩立つと、元通り。

 掃除も必要なさそうだけど、気分的にスッキリしたかったので(主に聡が)、軽くすることにした。

 着る服も、寝室のクローゼットに、下着から一式そろっていた。サイズがぴったりだったのは、気にしないことにしようと、二人でつぶやく。

 寝るときと起きたときに、多少気恥ずかしさが残るものの、徐々にこの生活に慣れてきた。


 そんな生活もはや10日。タマゴがかえる気配がない。二人は、タマゴを間にクビをひねっていた。


「う~ん、まだかな~」


「ドンくらいかかるんだ?いったい」


「マニュアルには?」


「う~ん、なかったんだよな~。気付かなかっただけか?」


「もっぺん見直してみる?」


「そうするか」


 タマゴを台座に戻し、マニュアルを持ってソファにすわる。

 ぺラッと本をめくり、目次から見ていくと、みさとが叫んだ。


「見て!『困ったときは ~Q & A ~』ってある。こんなのなかったよね?!」


「しまった、マニュアルもタマゴの成長とリンクしてたのか!盲点だったな…」


 あわてて、ページをめくる。


「ここだ。おい!これは!!」


「え?! 『Q.帰れるのですか? A.神が一人前になったときに一つ願いが叶えられます。そのときに願えば、帰れます。』って…。帰れるの?帰れるんだ…」


 みさとの目から涙があふれだした。今まで、気がつかないフリをしてきた元の世界への帰還。どのくらい先になるかは、わからないけど、帰ることが出来るとわかり、感情が溢れてしまった。

 

「…泣くなよ。ひどい顔になるぞ」


 そう言う聡の目も潤んでる。


「ひっどーい、今日の夕飯、キライなものにしてやる!」


 そういいながらも笑えば、聡がほっとしたように、ティッシュを箱ごとよこした。こういうとこ気がつくんだよね~と思いながら、みさとはありがたくティッシュを使った。


「じゃ、続きいくか」


「うん」


 帰還のところには、望めば、こちらに来た時間にここでの記憶を消してもどれること。ここにいる間は、歳を取らないことが書かれていた。

 ページをめくると、『Q. タマゴがかえりません。どのくらいでかえるのですか?』だった。


「お、これだな。読むぞ」


 聡が確認すると、みさとはこくんとうなずいた。


「『Q. タマゴがかえりません。どのくらいでかえるのですか?A.期間は決まっていません。必要量の両親の愛情を注がれることで、タマゴはかえります。両親の愛情には、タマゴへの愛情だけでなく、両親の間の愛情も含まれます。愛し合っていますか?夫婦なのですから、ちゃんとセ「うわ~~!」しましょう。』」


 マニュアルをパタンと閉じて、聡はみさとに振り向いた。


「お前、声でかすぎ。キ~ンってなったぞ。耳元で叫ぶなよ」


「だ、だって、あからさまに言うから!」


 真っ赤になって、みさとは言い返す。


「しょうがないだろ、書いてあったんだから」


「だからって、でも…」


 困ったような泣き出しそうなみさとの様子に、聡は目をそらし口に手をやった。ほんのり頬が赤いのに、みさとは気付いていない。



「…そんなにイヤか?俺と夫婦になるの」


「さ、聡こそ。あたしなんかじゃいやでしょ」


 ぷいと横をむいたみさとの頬を聡の両手が包んだ。


「いやじゃない。むしろお前がいい。で、みさとは?」


「…いやじゃ、ない、です」



 その晩、二人は本当の夫婦になりました。

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