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14.もふもふ天国

短いですが、本年もよろしくお願いします。

 神の森に隣接する神殿の新年を知らせる鐘が鳴り響く中、みさとは天国を味わっていた。

 この年末年始、シンをはじめとする神族達は、子供も育ちきったこともあって、家族単位で思い思いの場所に散らばっていた。ある家族は北の国で雪の新年を、またある家族は南の国のリゾートな新年を、はたまた温泉につかりグルメ三昧な新年を迎えようというのだ。というわけで、今この家にいる神族は、みさとと聡だけなのである。(ちなみに精霊王達もでかけている)


 「お母さま」から解放されたみさとは、本能のままにもふもふ天国へとダイビングしたのだった。

 背中には火の鳥のひ~ちゃん、左右の腕にはレイとランの聖獣夫婦。胸には小さくなったブランが引っ付いている。


「あ“~、癒されるぅ~」


「みさと、なんだよ、そのオヤジなセリフは」


「いーじゃなーい、聡だってユニコーンに囲まれて癒されてるでしょ?」


「ま、まあな」


 聡はユニコーン達にスリスリされてよろめきながらこたえた。その腰には狼のボスが抱きついていて、頭には鷹が陣取っている。そんな格好で注意されても、説得力はないとみさとは思うのだ。


 普段から聖獣や動物達になつかれるみさとと聡だが、ここまでおおっぴらに囲まれるのは珍しい。聖獣達も人の目が気になるのか、みさとと聡にちょっとかまってもらっただけで満足している節があった。

 だが、みさとと聡だけの今、誰に遠慮がいるものか。聖獣達もおもいっきり二人に甘えているのだ。レンは真面目な顔をくずしていないが、それも時間の問題だろう。


「ラン、ちょっといいか?」


 聡がボス狼を引きずりながら、ランのいた場所に腰を下ろす。悲しそうにランが見つめているのに気付いた聡が、笑いながらみさとの膝をたたいた。


「ラン、ここに来るといいよ」


 みさとがうなずいたのを見てランはパッと明るい顔になると、いそいそとみさとの膝に寝そべる。みさとがランの頭をなでると、レンがうらやましそうにその様子を見ているので、聡は笑ってしまった。

 それをきっかけに聖獣たちは我も我もと二人のもとへとやってきて、あっという間にみさとと聡はもふもふに埋もれてしまった。まるで、生きている布団の様だ。


「あったか~い」


「あ~、子どもの頃あこがれたな~、こういうの。動物と生きるみたいな」


「…よ~しよしよしっていうヤツ?」


 言いながらみさとはランとレンをわしわしし始めた。つられて聡もボス狼をもふり始める。


「あそこまでとは言わないが…自然の中で動物と生きるってかっこよく見えたんだよな~」


 聡とみさとは、百年以上前の遠い記憶の世界に足を踏み入れるのであった。



 懐かしの記憶に思いをはせることしばし。ふと気付けば、レンとラン、ボス狼がうっとりと2人を見上げている。他の聖獣たちは期待に満ちた目で「次は自分(ハートマーク付)」と2人を見つめていた。状況に気付いたみさとと聡は、顔を見合わせ、引きつり気味の笑みを浮かべた。


「あ~、その、なんだ…」


「じゅ、順番にね…」


 その後、みさとと聡が一晩中聖獣たちとたわむれることになったのは言うまでも無い。

 



もふもふ(にとっての)天国でした。

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