14.第一村人、発見
シンの妹リンが生まれてからは、月日はあっという間に過ぎていった。みさとの記憶は半年くらいあやふやだ。心の準備もないままに、出産育児に突入したので、仕方がないとも言えるだろう。
育児は2回目とはいえ、神であるシンと、人間の子どもとでは、成長速度が違いすぎる。
(アオちゃんたちがいなかったら、どうなってたか、考えるのも恐ろしいわ~)
シンの散歩報告を聞きながら、みさとは、精霊王達に感謝した。
シンは、この1年で見かけ10歳くらいに成長していた。すっかり少年らしくなっている。精霊王達もシンの成長に伴い、今では20歳くらいの立派な大人だ。女の子グループは、家事と育児でみさとを助け、男の子グループは、見回りや力仕事で聡を助けていた。
世界は広がり、気軽に見てまわることは出来なくなった。どうするかとなった時に、リビングにテレビが登場した。もちろん、普通のテレビではない。世界を見ることが出来るテレビである。
100インチはあろうかという大きなテレビは、画面が8分割され、世界のあちこちが映し出されていた。
こうして、リビングにいながらにして、世界の発展を見ることが可能になったのであった。
「このテレビってさ~、聡と私の世界にテレビがあったから、テレビになったんだよね。きっと」
「だろうな」
「じゃあさ、テレビの無い世界だったら、どうなったのかな?」
「その時は、そうだな、水晶とか、そんなの?」
「うわ~、ファンタジーっぽい」
「今でも充分ファンタジーだと思うけど」
「それもそうね~」
あははと笑いあう聡とみさとの横で、シンが妹のリンをあやしていた。それを見て、精霊王達は、にっこりと微笑み会う。穏やかな毎日が続いていく。
ある日、きょうは、どこに行くかとテレビを見ていた聡が、声を上げた。
「おい、これ人間じゃないか?」
あわてて全員がテレビの前に集まる。聡の指差した画面が拡大された。
粗末な服を身に着けただけであるが、確かに人間の男だ。しばらく観察していると、数件の小屋のある地区へと帰っていく。どうやら、集落のようだ。
「…人間が生まれたんだなぁ」
聡がしみじみと言う。みさとも感慨深げだ。
「この世界はどうなっていくのかしら?」
みさとが、シンの頭をなでながらつぶやいた。
「いい世界にするよ。だから、父さまと母さまは、僕を見守ってて」
真剣な表情で、聡とみさとを見上げるシンの姿に、聡は成長を見た。とうしゃまと抱きついてきた子が、こんなにも頼もしく見えるようになるとは。
「ああ、父さんと母さんは、いつまでもお前を見守っているよ」
「あなたは、私達の大事な子だもの」
聡とみさとの答えに、シンはパッと顔を輝かせ、二人に抱きついたのだった。
翌日、ピクニックがてら、人間の集落をのぞきに行ったのは、言うまでもない。
《シン》
やっと人間がうまれたよ。父さまと母さまはうれしそう。ずっといて欲しい。