13.きょうだいがほしい
ある日の夕方、みさとと女の子グループが洗濯物を畳んでいるリビングに、シンが駆け込んできた。
「かあさま、ぼくもきょうだいがほしい!」
キラキラとした目のシンに、みさとは固まる。
ついにきた!「赤ちゃんはどこからくるの?」イベントに並ぶハードルの高い「弟妹欲しい」イベントが!!
みさとの頭の中では、どう答えようかと、いろんな言葉がぐるぐる回りだす。ぐるぐる回って、結局
「お、お父さんにも聞いてね?お母さんだけじゃ決められないの」
と、聡に丸投げすることになる。
わかったー、とシンが聡のもとに駆けていくと、みさとは、マニュアルの元へとダッシュした。必死にページをめくり、Q&Aを探している。その必死な形相に、女の子グループは声も掛けられない。
「あった!『Q.きょうだいが欲しいと言われました。新しいタマゴはもらえますか? A.世界に神様のタマゴは一つだけです。そのかわり、育ての両親に子どもができます。神様が望めば、母親の妊娠出産が可能になりま…す』」
そこまで読むと、みさとはへなへなと床に座り込んだ。女の子グループがあわてて、支えたが、みさとはぼ~っとしたままだ。
「みさと、どうした?」
リビングに入ってきた聡があわてて駆け寄る。
「さとし~、マニュアル…」
みさとが指差すマニュアルを急いで読んだ聡が、照れくさそうにみさとを抱き起こした。
「あ~、二人目か。俺は、うれしいな。みさとは、いやか?」
「いや、なんかビックリして…」
「そっか!今度は女の子がいいかな~、イヤもう一人男でも…」
聡は、ぶつぶつ言い始めた。いくらなんでも早すぎるだろうと、みさとはあきれたが、ちっともイヤじゃないのに気がついた。ふふっと小さく笑う。
「そうねえ、次は女の子で、その次は男の子がいいかな」
みさとの答えに聡の顔がぱっと明るくなった。
「よし、じゃあ、シンに言わないとな。待ってるんだ」
聡とみさとに、赤ちゃん来るの待っててねと言われたシンは、大喜びだ。みさとに抱きついてお腹に向かって話しかけている。
「はやくきてね!まってるから」
その姿はほほえましく、みなの笑いを誘った。
翌朝、目覚めたみさとは絶叫した。ついで聡の叫び声まで聞こえたので、何事かと精霊王達もシンを連れて、駆けつける。
うろたえるみさとのお腹は、いつ生まれてもおかしくないくらい大きかった。
「なにこれ!?シンちゃんの力?」
「お、落ち着け、みさと!」
「う、痛い…!」
「じ、陣痛か?!生まれるのか!?」
あわてふためく聡に、マニュアル取って来いと指示をだし、精霊王達にシンを別室に移動させると、みさとと女の子グループは部屋にこもった。
聡と男の子グループとシンは、そわそわと待つしかない。
その日の夕方、シンは念願のお兄さんになったのだった。
《シン》
お兄さんに なったの~