12.散歩に行きましょう
シンが成長すると、この世界が成長する。つまり、この家の周りの森も広くなるわけで――。
聡は、昼食の後、散歩がてらこの森を見回りにいく。生えてる植物や生息する生き物の変化を見るためだ。
みさとはシンの昼寝があるので、女の子グループと留守番だ。部屋を片付けたり、おやつを作ったりしている。
男の子グループは聡に着いてくる。たまに、アオイが着いてくるのは、見つけた川の様子が気になるらしい。
最初は、家の半径5メートルだけだった森も、今では半径5キロを超えるまでになった。端まで行って帰っておよそ2時間。これ以上先まで行くとしたら、朝から一日かける様だろうなと聡は思っていた。
今日も男の子グループと散歩に出る聡。ミドゥーリが風に乗って、偵察してくれるので、無駄な労力を使うことは無い。森の生き物達は、シンの親である聡とみさとに牙をむくことはないのだ。
先行してきたミドゥーリが、あわてて帰ってきた。
「お父様!森が終わって、草原が広がっています」
ミドゥーリの報告に、皆が色めきたった。
アカギが飛び出し、いつもは冷静なクロウドまでもが、聡の腕を引っ張った。
「おいおい、そんなに急がなくても、草原は逃げないよ」
そういう聡も、楽しそうだ。
「うわあ」
森を抜け、草原に足を踏み入れた一行は、言葉を失った。一面の緑が風になびいている。
「緑の海だな…」
聡の言葉に精霊王達は首をひねる。
「お父様、ウミとはなんですか?」
「ああ、お前達は知らないよな。まだ、この世界にはないからな。そうだな、お~~っきな池みたいなもんだ。水がしょっぱいんだぞ」
「しょっぱい水?!」
アカギが嫌そうな顔をするのを、ミドゥーリがたしなめる。
「興味深いですねえ」
クロウドは腕を組んで考え込んでいる。
聡は、三者三様の反応をする彼らを見て、微笑んだ。
「シンが大きくなれば、出来るだろう。楽しみにしてるといい」
「「「はい!」」」
三人は元気に返事をした。
家に帰ると、ちょうどシンがお昼寝から起きたところだった。
「とうしゃま~!」
駆け寄るシンを抱き上げる聡は、すっかりお父さんだ。
「おかえりなさい。いまおやつを作ってるところよ」
みさとの声に、みんなでキッチンまで移動する。今日のおやつは、ホットケーキだった。
ホットケーキを食べながら、今日の報告をする。みさとと女の子グループは、草原が出来たことに興味深々だ。
「じゃあさ、明日ピクニックにいかないか?お弁当持って」
聡の提案に大喜びだ。
シンはいまいちよくわかっていないが、みさとと女の子グループが嬉しそうなので、笑ってる。
みさとが一番喜んでるじゃないかと聡は思ったが、口には出さなかった。
聡だって、学習してるのだ。
次の日、帰り道に聡がシンをおんぶする羽目になったのは、言うまでもない。
《シン》
おさんぽ たのしい♪