第107話 あーあ
朝ご飯のオムライスを食べた俺達は片付けをすると、ソファーに座って一休みする。
「やっぱソファーは良いなー」
ご飯を食べる時はフィリアもヘイゼルも俺の対面に座る。
でも、ソファーだと隣にぴったりと座ってくれるので非常に嬉しい。
これを王様気分と言わず、何と言う?
「私もソファーは好きだなー。柔らかいし、ここで飲むお酒が美味しく感じる」
「前に使っていたベッドよりも柔らかいもんね。あのベッドで寝るよりこっちの方で寝た方がぐっすり眠れそう」
「だなー。ちょっとゆっくりしようぜ」
これ、2人共、もっと近う寄らんか。
わはは!
「ゆっくりするのはいいけど、電話は?」
内心、お殿様ごっこをしていると、フィリアが水を差してくる。
「午後からにしようかと思ってるんだけど……」
もうちょっとゆっくりしたいし。
「お義父さまもお義母さまも外国でしょ? 時差があるんじゃなかったっけ?」
あー……そういえば、そうだ
この前、朝に電話した時、向こうは夕方だった。
昼に電話したら夜になっちゃう。
下手すると、寝てるかもしれん。
「それもそうだな。ちょっと電話するわ」
電話をソファーの前のローテーブルに置き、通話ボタンを押した。
長い呼び出し音が続いていると、ようやく通話がつながる。
『はいはーい、リヒトちゃん、どうしたのー?』
母親の声だ。
そして、ものすごく上機嫌っぽい。
「機嫌が良さそうだけど、どうしたん?」
『リヒトちゃんにも見せてあげたいわー。この100ドル札の数を! あははー!』
カジノで儲けたのね……
「良かったね。で? いつ帰るん?」
『もう帰るわよー。これ以上やると出禁か、裏に連れていかれそうだしねー。この辺が引き際よ』
災害を読み、人々を救う能力である未来視をこんな風にしか使えない巫女様が僕の自慢のお母さんです。
「早く帰ってきてよー」
『あらあら。子供はいくつになってもお母さんが恋しいのねー』
何をとち狂ったことを言ってんだ?
「もうそれでいいからはよ帰れや。紹介するって言ってんじゃん。あと、色々と聞きたいことがある」
『もう帰るから……えーっと、そっちの時間では3日後くらいかな? ちなみに、聞きたいことって? パパがシャワーを浴びてて、ちょっと時間があるから聞くわよー』
パパはシャワーだってさ。
プールでも行ってたのかな?
まさか……いや、ないか。
「じゃあ、ちょっと聞くけどさ。あんたはなんで日本語をしゃべれるの? フィリアもヘイゼルも日本語が通じないんだけど……」
『そりゃ頑張ったもん。パパに教わりながらねー。リヒトちゃんがママのお腹にいた時は必死だったわよー。子供が言葉を覚えるのにママは変な言葉でパパは日本語でしょー。リヒトちゃんが困るわよ』
なるほど。
確かにそうかも。
「母さん、日本語が上手いな。普通の日本人と変わらん」
『文法は一緒だし、実はそんなに難しくはないわよ。ママは英語もしゃべれるけど、そっちの方が苦労したわ』
英語もしゃべれるんだ。
バカみたいな雰囲気なのに優秀なんだな。
「私らも勉強した方がいいかな?」
これまでまったく勉強をしてこなかったヘイゼルがフィリアに聞く。
「そりゃねー……やろうよ」
『教材がないからホント大変よー? 私が作ったノートがあるからあげるよ』
そんなんあるんか。
「ありがとうございます!」
「助かります!」
ヘイゼルとフィリアがお礼を言う。
『いいのよー。もう使わないしねー』
「そのノートはどこにあるん?」
『ママの部屋だけど、鍵をかけて封印もしてあるわー』
「あの謎の部屋?」
封印って……
そこまでするか?
『そうそう。あの部屋にはロストの王家のちょっとマズいやつとか、巫女時代のちょっとやばいやつとか色々とあるのよー。リヒトちゃんが入ってイタズラされると困るから人払いの結界をかけて封印してるの』
それ、ホントにちょっとか?
「家を譲ってくれるのはありがたいんだけど、その辺も片付けろよ。怖いわ」
『あー、今度帰った時に引き払うわ』
「いや、早くね? どこに住むん? マンションとか言ってたけど」
『マンションはもう持ってるわ。隠し……倉庫代わりにしてるの』
隠し?
うん、聞かなかったことにしよう。
「まだいい?」
『いや、今度にしましょう。そろそろパパもシャワーを終えるし、ベガス最後のディナーを楽しんでくるわ』
ホント、人生を満喫してるなー。
「じゃあ、3日後ね。えーっと、24時間の充電があるから……」
明日の昼に戻って、向こうでも仕事をせずにダラダラと過ごすか。
「俺らは3日後の朝には戻ってくるから。準備あるし、昼ぐらいに帰ってきてよ」
『まあ、そんなもんかしらねー。日本に戻ったら連絡をするわ』
「はーい」
『じゃあねー、2人も会えるのを楽しみにしてるわー』
母親はフィリアとヘイゼルにも別れの挨拶をする。
「はい。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
フィリアとヘイゼルはロボットみたいに同時に頭を下げた。
『はーい』
母親の声と共に電話が切れた。
「お前ら、大丈夫? 3日後だけど……」
「大丈夫、だと思う」
「ちょっと服を見てくるわ」
「あ、私も!」
フィリアとヘイゼルはリビングを出て、親に会うための服の確認に行ってしまった。
「ああ、お殿様ごっこがー」
寂しいね……
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