第105話 罰
「それで今は口だけ出す面倒な存在ですかね?」
「残念ながら口だけじゃなく、足も引っ張っておるな……」
救いようがないなー……
「左様ですか……まあ、領主様には頑張ってほしいです」
「さっさと処分するべきだと思うな」
言うて、叔父さんだからなー。
難しいのかもしれん。
「さっきは途中で説明を邪魔されたのですが、あの時の兵士はロストの兵士だと思うのです」
「ほう……」
「でも、ロストはあまり関係ないでしょう」
「なるほど。お前の言いたいことはわかった」
え?
結構、はぐらかして、しゃべってるんだけどな。
ヘイゼルなんて全然、わかってないし。
「まだ途中なんですが……」
「貴様があのバカの話をしてきた段階で想像がつく。それにな、前領主様とあのバカは兄弟だが、母親が違う。あのバカの母親はロストの貴族だった」
大ヒントがあったのか……
「え? じゃあ、あの兵士はロストのスパイじゃなくて、あのば……ロイド様の差し金ってこと?」
ロイド?
そんな名前を執事が呼んでた気がする。
「だな。さっきだって明らかにおかしかっただろ。領主様に話があるかは知らんが、普通、客がいるのにそれを遮って連れ出すか? 俺だけならまだしも貴族のヘイゼルがいるんだぞ。違和感しかなかったわ」
「リヒトに占わせたくなかったってこと?」
「俺の占いなんて信じてないだろうよ。多分、当事者だった俺らに余計なことを言わせないためだ。今頃、領主様に胡散臭い詐欺師や他国の貴族に関わるなって諫言してると思うぞ」
証拠は残していないだろうが、心配なんだろう。
死んだ兵士が何かを言ったかもしれない、重要なミスをしているかもしれない。
そんな状況で俺達が屋敷に来て、気が気でなかったのだと思う。
「貴様の占いというか、未来視は何が見えてる?」
神父様が身を乗り出して聞いてくる。
「申し訳ありません。あの領主様の叔父とやらをチラッとしか見ていないため、わかりませんでした。ただ、領主様と執事には不幸が見えました」
「それで十分だ。他には?」
「私とヘイゼルにも見えますね。フィリアは問題ないです」
フィリアは当分、危険はないことがわかっている。
あいつにはここのところは幸福しかやってこないと出てる。
幸福=俺だと良いなー。
「まあ、貴様らを消すのが一番だが……ヘイゼル嬢はマズいだろうに」
「神父様、自分の信頼を落とすようなことを言いますが、バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」
「……確かに落ちたな、詐欺師。孫が心配になってきたわ」
大丈夫!
フィリアは騙してない。
ヘイゼルは……うーん、あんまり騙してない!
「神父様、私の占いも外れることがございます。フィリアに護衛をつけてはもらえないでしょうか?」
「念のため、そうしようかな……貴様らは?」
「一応、未来視がありますし、基本、フィリアといる時が多いので同じことです。ただ、まあ、フィリアといる時は襲ってこないと予想しております」
今回みたいなことがない限り、俺達は基本、一緒にいるし、フィリアのそばにいれば、フィリアの護衛が助けてくれる。
問題は俺達が別行動をした時だろう。
「私もフィリアを襲うことはまずないと思う。いくらあのバカとはいえ、教会や私を敵に回す愚行は起こすまい。だが、奴は本当にバカなのか? フィリアが結婚するということは貴様らも教会の身内だというのに……」
「まだ身内ではない……ということでは?」
「女神様の祝福をもらってないだけで、ほぼ新居に同棲している者を私や教会が身内ではないと思うと思っているのだろうか……」
その辺は知らない。
ボンクラに聞いてくれ。
「祝福を早めようかな……」
「言われれば今すぐにでもやってやるぞ……まあ、貴様はさっさとご両親と話してこい。そして、顔合わせを急げ。顔合わせをしたらその足で私が儀式をしてやる」
まあ、あっちの世界みたいに大がかりではないので準備に時間がかかるということはない。
「お願いします」
「よろしくお願いいたします」
俺とヘイゼルが再び、揃って頭を下げる。
「うむ。任せておくがよい。貴様らもフィリアをくれぐれも頼む」
神父様は快く了承してくれると、頭を下げ返した。
「もちろんです」
「共に夫を支えようと思っています」
支えてくれー。
俺も支えるから。
これが家族よ。
今、よく考えたら普通だけど、良いことっぽいことを言った!
神父様に色々と頼んだ俺とヘイゼルは教会を後にし、家に戻る。
時刻はまだ昼の1時であり、俺達はパスタをゆで、パスタソースを混ぜただけの昼食を作った。
「ご飯をいつもフィリアが作ってるけど、私も作った方がいいのかしら?」
ヘイゼルがパスタを食べながら聞いてくる。
「なんで? そもそもお前、料理できるん?」
できねーだろ。
俺を置いていくんじゃないよ。
お前はこっち側の人間だろ。
「いやさ、料理もだし、掃除もだし、洗濯もなんだけど、全部、フィリアがやってるじゃん。私、何もしてなくない? じゃあ、稼いでくるのかって言うと、フィリアが物を売った方が儲かるし……」
ヘイゼルが触れてはいけないことに気付いた。
「……それを言うなよ。俺だって気にしてんだから」
最近、俺の優位性が下がっている。
俺の優位性はあっちの世界に詳しいこと。
でも、最近、こいつらの方が詳しい気がしてきた。
「あんたはまだ転移があるじゃん、占いというか、未来視もあるし。私は? 魔法?」
「魔法。俺もフィリアも弱いんだからお前の高火力な魔法頼り」
「うーん……でも、ほら、嫁としての立場がね? 私にあのオムライスが作れるのかしら?」
「今度帰ったら作ってみるか? 俺も作ったことないし」
卵焼きすらねーわ。
「そうしようかしら? 試すことが大事だし、一歩を踏み出すことが重要!」
ヘイゼルが何か良いことを言っている。
「ちなみに、今日の晩御飯は何かねー?」
「カレー! 私が頼んだ!」
それを自分で作ればいいのでは?
「お前、カレーは食べれるん?」
「カレーパンは美味しかったから大丈夫だと思う。フィリアが辛いのがダメだから甘口らしいけど」
そういえば、こいつ、よくカレーパンを食べてるな……
「ふーん……フィリアはまだ冒険だよな?」
家事全般をやっているフィリアは今、仕事中。
一方で我らは何もしてない。
「早めに帰ってきて、アンナとミケの3人で飲むんだってさー。夕方になったら迎えに行こうよ」
フィリアも大概だったわ。
「そうするか……夕方まで何をしようか? 出かけるか?」
「さっき、危ないみたいなことを言ってたじゃない」
「昼間の町中はないだろ」
というか、今日の俺の運勢はとても良いと出ている。
襲われることはないだろう。
「うーん、出かける気分じゃないなー。そうね……トランプをしましょう!」
ホント、好きだね……
「まあいっか。じゃあ、お前の部屋でやろう」
「私の? いいけど……」
「罰ゲームありな」
「……ッ! かかってこい! 私は必勝法を見つけたのよ!」
トランプに必勝法ってあるか?
イカサマでもする気かな?
俺とヘイゼルはパスタを食べた後、ヘイゼルの部屋でトランプなどをして遊んだ。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




