第4話 激突の予兆と禁断の交換
境界の神託塔から戻った悠真とリルカは、両王国の使者を集めた緊急会議を提案した。
最終占いの結果を共有し、妨害派閥の存在を公表するためだ。
水の王国の黒い城下町では、湖の水位低下が加速し、住民たちの不安が高まっていた。
銀鋼の王国の砂丘では、ミスリル鉱脈の輝きが薄れ、戦士たちの士気が低下していた。
予知の滅亡が、現実味を帯び始めていた。
会議は中立地帯の天幕で行われた。
悠真は陰陽の鏡を中央に置き、神託の映像を再現する。
「これが真実です。結びがなければ、両国は滅ぶ。妨害者たちはそれを加速させている」
リルカはミスリル剣をテーブルに置き、兎耳をピンと立てて続ける。
「塔での襲撃は、両国からの裏切り者。白兎族の名を借りた偽者だったわ」
使者たちがざわつく中、水の王国の陰陽師派閥の長が立ち上がった。
「そんな神託など、水の民を穢すための陰謀だ! 銀鋼の蛮族と結ばれるなど、許せん!」
対する銀鋼側の戦士長が、拳を叩きつける。
「我々の誇りを踏みにじるな! 水の軟弱術など、信用できぬ!」
空気が一触即発に。
だが、悠真が勾玉を掲げ、光の鎖を呼び出す。
「これが証拠だ。神託の力は本物。妨害者こそ、両国を滅ぼす敵だ」
リルカも勾玉を共鳴させ、鎖を強める。
「私たちが……結ばれることで、融合が生まれる。予知はそう告げている」
使者たちは光に圧倒され、渋々休戦を延長した。
しかし、会議の後、妨害派閥の影はさらに暗く忍び寄っていた。
———
夜、湖畔の隠し場所で、悠真とリルカは密会した。
仮婚約の監視を逃れ、二人は名産を交換する習慣を続けていた。
今夜は特別——妨害派閥の情報を共有するためだ。
悠真がしじみ抽出液の瓶と、勾玉の欠片を渡す。
「これで君の耐久を強化できる。勾玉の力で、毒や呪いを防ぐ」
リルカは棘殻の王蟹の甲殻を加工した軽量アーマーを返す。
「これを着て。ミスリル混ぜだから、軽くて硬いわ。……貴方の詠唱を守るために」
二人は互いの贈り物を身につけ、視線を交わす。
リルカの兎耳が少し震え、赤い瞳が悠真を見つめる。
「……神託じゃなかったら、こんなこと……」
「俺もだ。でも、今は……君がいないと、戦えない」
突然、砂丘側から砂嵐が巻き起こった。
妨害派閥の刺客たちが、銀鋼の戦士を装って襲撃してきた!
「——またか!」
リルカの超速が炸裂。
兎跳で跳躍し、ミスリル剣で先陣を切る。
刺客の一人が砂根の守護根を爆発させる毒霧を放つ。
「くっ……霧!?」
悠真は即座に呪符を広げ、詠唱。
「陰陽の風、霧を祓え——」
詠唱中、リルカが割り込みのように動き、刺客の攻撃を封じる。
しじみ抽出液の活力で、彼女の速さがさらに増す。
「今よ、王子!」
祓いの風が霧を吹き飛ばし、刺客の姿を露わにする。
リルカの銀閃が連撃を浴びせ、悠真の結界が残りを封じる。
戦いが終わった後、二人は息を切らしながら寄り添った。
勾玉が強く光り、光の鎖が二人の体を優しく包む。
「……融合……これが、予知の力か」
リルカの頬に、悠真の手が触れる。
兎耳が垂れ下がり、彼女は目を閉じた。
「運命なんて……嫌いだった。でも、今は……」
二人の唇が近づく瞬間——
湖の水面が輝き、砂丘の風が穏やかになった。
滅亡の予兆が、わずかに遠のく。
だが、妨害派閥の首魁は、まだ影で笑っていた——。
(続く)




