第参話 「世界の始め」
新しい朝が来た。いつもの日常の始まりだ。
彼はベッドから起き上がると、カーテンを開け、窓を開けた。すると気持ちの良い朝の風が小鳥の囀りと共に彼の部屋へと届いた。
穏やかな朝の空気が彼の身体を包み込み、新しい一日の始まりを祝福してくれているように感じた。
日々の仕事にストレスを感じつつも、こうして穏やかな朝を迎えると、彼の心は洗い流され、仕事への意欲がゆっくりと湧き上がってくるのだ。
彼は身支度を調えると庭に出て、草花や庭木への水遣りをし手入れをし、庭の清掃をした。一日の始まりは気持ちよく始めたい。これも彼の日課である。
家の中に戻ると、台所で朝食を用意する。
彼程の身分になれば、家政師が準備してくれるものを食しても良いのだが、彼はいつも自分で用意した朝食をいただく。
大したものを用意する訳ではないが、ご飯を始め、小麦粉やオートミール、コーンミールなどを使ったパンを作ることもある。もちろん前日から準備し、朝は焼くだけになるが、それでも、それを準備する時間は彼にとって至福の時間である。なぜなら、モノが出来ていく過程というのは心が踊るからである。
最後に、ちょっとしたおかずを添えて、朝食とする。いつものメニューである。
彼は朝食を終えると、作業室へと向かった。
作業室には、実験器具が所狭しと並べられ、昨日までに取りそろえた材料が積み上げられていた。
彼は、作業室の中央に設置された巨大な装置を起動させた。装置が安定動作したことを確認すると、積み上げられていた材料の一つ一つを取り出し、手順どおり投入していく。
昔は大変だった、この装置がなかった時は、混沌が部屋に充満し、闇に包み込まれて作業しなければならなかったからだ。
だが、今は違う。混沌は装置の中に収まり、彼は材料を投入口から投入するだけで良いのだ。闇の中で作業をする必要はない。まさに隔世の感である。
彼は装置の中に出来上がった風船にも似た創造物を確認した。今回の出来は上々だ。
そう、彼が作り上げたのは宇宙であった。こうしてまた新たな宇宙が、彼の手によって誕生したのである。




