表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遊頁譚  作者: 劉白雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

第卅話 「時の迷路」


 私は一体どれぐらい彷徨っただろう。いや、彷徨ってはいない。

 確実に目的地へ向けて歩いている筈だからだ。

 どうしてそれが分かるかと言えば、目の前に宝箱があるからだ。


「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。世にも珍しいダンジョンだよ。」

 その男はそう言って呼び込みをしていた。

 黒山の人集りに釣られ、私もその男の口上を聞いた。

「さあ、お立ち会い。この世にダンジョンなるものは星の数程あれど、ここのダンジョンはちぃと違ぇよ。何が違うって、その宝箱の数よ。なんせ、ちぃと進めば宝箱、も一つ進めば宝箱、あっと言うめに両手一杯ぇのお宝よ。

 ん?どうせ入るのに高ぇカネ取るんだろって。お客さん、あっしを舐めて貰っちゃ困りやすよ。そこいらのダンジョンは金貨一枚が相場んところを、こちとら、銀貨一枚でやらしてもらってんでさぁ。

 さあ、腕に自信のある御仁は、安いと思ったら潜ってみんな。さあ、さあ、さあ。」


 胡散臭いとは思いつつも、銀貨一枚なら損にもならないだろうと、私も挑戦した。なにせ、冒険者としてもそれなりに名を馳せ、腕にも覚えがあったからだ。


 だが、このダンジョン、何かが違った。

 入り口を入るとすぐに、扉が三つあったのだ。どれか一つを選択して進めと言うことなのだろう。私は真ん中の扉を選んで進んだ。

 扉の向こうには、呼び込みの口上どおり、宝箱が設置されていた。開けてみるとそこにはナイフが入っていた。売れば銀貨三枚にはなるだろう。いきなりの儲けである。

 部屋の奥には、更に扉が三つあった。

 今度は右側の扉を選んだ。そして、その先の宝箱には、業物と思われる剣が入っていた。売ればおそらく金貨数枚にはなるかもしれない。


 こうして、私は、扉を開けては、宝箱を開け、宝箱を開けては、扉を開けた。

 挑戦を始めた当初、攻略した人物はごまんといるだろうと考えていた。狡猾な罠も、凶暴な魔物も存在せず、ただひたすら扉を選んで開けるだけのダンジョンである。新人冒険者でも簡単に攻略出来そうだと。


 だが、実際はそうではなかった。このダンジョンの本当の恐ろしさは、持ち込んだ食料が底をつき、宝箱から食料を得なければ、進むことすらままならないことなのだ。

 歳を取り覚束なくなってしまった足取りで、私はいつ手に入れたとも分からない杖を突いて、次の扉を開けたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ