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遊頁譚  作者: 劉白雨


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第廿陸話 「何度だって」


 一度あることは二度ある。二度あることは三度ある。三度あることは……。

 俺は、今救急車で病院に搬送されている。そう、命に関わるような事故を起こしたのだ。

 右直事故。

 世間一般的には良くある事故だろう。直進優先の所へ右折車が突っ込んでくる。

 だが、右直事故の過失割合は8対2。つまり、直進側にも2割の過失が付く。

 法律の言い分はこうだ。

 交差点は通行する車両や歩行者に注意して、安全な速度と方法で通過しなければならないとあるのだから、事故を起こした時点でこの方法を遵守していない、となるというのだ。


 俺は、この法律にいつも納得がいかず、最初の事故の時には、警察や保険会社に食って掛かり、裁判も起こしたが、結局俺の主張は認められなかった。

 二度目に起こした時も、俺は注意しながら進入したと主張したが、結局ダメだった。

 免停は食らうは、保険金は増額するはで、碌な事にはならなかった。相手が悪いのにもかかわらずだ。

 三度目は流石に俺も慎重に運転していた。右折車がいる時は早めに減速し、いつでも止まれるようにブレーキに足を置いて通過していたのだ。

 だが、三度目は起こった。相手の言い分はこうだ。

「急に速度を落とされて、通過するタイミングを逸した。速度を落とさなければ、その後ろを通過出来るタイミングだった。」

 そんな言い訳があるか。俺は戦ったが、結局過失が付いた。

 くそったれな法律に俺は憤り、裁判所で裁判官に対し暴言を吐いた。

 だが、そんなことで法律が変わることもなく、俺の過失がなくなる訳でもない。

 その裁判で侮辱罪に問われると言われ、慌てて俺は矛を収め謝罪したが、心の中は燻り続けていた。


 そして俺は、四度目の右直事故に遭ったのだ。

 何かが取り憑いているのだろうか。安全運転って一体何なんだよ。

 今回は、しっかり交差点の状況を把握して、進入したはずだった。まさか、時速100㎞越えで突っ込んでくるヤツがいるなんて想いもしないだろ。

 流石に今回は百零ひゃくぜろだろ。俺はそう思っていたが、俺の意識は救急車の揺れに合わせて、次第に遠のいていった。

 何度でも戦ってやる。こんな理不尽な法律を変えてやるんだ。

 俺の意識はそう誓いを立てていた。


「5時23分。ご臨終です。」

 バイタルを確認した医者の声が病院の中で虚しく響いた。


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