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遊頁譚  作者: 劉白雨


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第廿参話 「星空の下で」


 私は芋を生産する農家である。

 広大な畑いっぱいに芋を育てて、早数十年。

 来る日も来る日も芋の世話に追われてきた。

 害獣を追い払ったり、台風の被害に戦々恐々と一夜を過ごしたり、旱魃かんばつで水を掻き集めるのに苦労するなんてことも、日常茶飯事である。

 芋の世話にも苦労はある。ただ種芋を植えて、水をやって、育てて、収穫するなんて生易しいものではない。土作りから、害虫駆除、間引きをしたり、気に掛けなければならないことはごまんとある。収穫も一筋縄ではいかない。収穫時期は短期間となるため、一挙にする必要があり、夜を徹してすることもあるのだ。

 人手が足らなければ、近所にお願いして、手弁当で手伝って貰うこともある。もちろん逆も然り、持ちつ持たれつである。


 だが、こうして日々の農作業に追われていると、ふとこの芋たちの成長に思いを馳せてしまう。

 地中に成る芋は闇の化身であり、光を集めて光合成をする葉っぱは光の化身である。子供の頃良く見たヒーローものだ。

 地下組織である闇と地上組織である光が戦うのだが、私はいつもやられてしまう悪者、闇とされる側に同情してしまうような子供だった。

 悪いことをしたのだから、やっつけられるのは当然だと親には言われたが、それが幼い私には納得がいかなかった。

 星の彼方、光の国から来たというヒーローもそうだ。悪とされる怪獣たちの言い分も聞かず、勝手に断罪して去って行く。もちろん、街を壊したりする怪獣は悪そのものであるのかも知れない。では、ヒーローが戦いの際に街を壊すのは、悪行ではないのか。

 私はそのあまりの理不尽さに、憤慨したものだった。親には窘められたが。


 そう考えたら、こうして芋農家をやっているのも、そんな幼い頃の影響かも知れない。

 芋自体は光と闇が協力し合って成り立っている世界だ。どちらが悪でもなければ正義でもない。

 今思えば子供の頃の私は、このような世界観をヒーローものに期待していたのかも知れない。

 私はこれまで星の数程の芋を育ててきた。その一つ一つが誰かの口に入り、栄養と成ってその人を生かしている筈で、人の役に立つ闇を育ててきた自負はある。

 私もこうして生きる糧を得ているのだから。

 私が育ててきた〔星空〕という名の芋は今日もすくすくと育っていた。誰かの役に立つために。



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