第拾捌話 「新しい一日」
今日も工房の一日が始まった。
彼は日々、来る日も来る日も同じものを作り続けていた。なぜなら、同じものを作らなければ、製品として機能しないからである。
しっかりと設計図どおり、一寸の狂いもなく同じものを作らなければならない。それは、彼に与えられた、至上命令であり、彼の世界の理でもあるのだ。
彼は、工房に明かりを入れ、材料を用意し、機械を起動した。慣れた手つきで、材料を加工していく。じっくりと丁寧に、だが決して遅くはない。的確な機械操作で見る見るうちに材料が形を変えていく。
一つの部品が出来上がると、次に取りかかる。
そして、あっという間に、必要な部品はすべて出来上がった。
しかし、今日は何かが違ったのだ。
いつもどおりに作り上げた部品たちを見て、何かが違うと感じたのだ。
こんなことは今まで一度も無かった。数え切れない程の数を作ってきた彼にとって、こんな事を感じたのは初めてだった。
悪戯心なのか、出来心なのか、はたまた、克己心や向上心なのか、彼自身にもそれは分からない。
ただ、いつもと違うものを作りたくなったのだ。
まったく新しいものである。
彼は、製図台に向かい、新しい図面を引いた。
思いつくままに工夫を凝らし、仕様を変更し、面白いと思うアイディアを取り入れ、これまでに無いものを作り上げようと考えた。
彼の思うがままに、ペンが進み、定規が踊った。
出来上がった図面には、これまで見たこともない、彼のアイディアが詰まった新製品が描かれていた。
彼は図面を片手に、早速必要な部品を作り出し、いつものように丁寧に作業を進めていった。
そして、とうとう出来上がったのだ。
これまでに見たことも、聞いたこともない、彼が考えた新製品である〔一日〕が出来上がったのである。
こうして作られた〔一日〕は、地上に届けられ、いつもと違う朝が訪れた。




