第拾陸話 「永遠の夢」
私は囚われた身である。
未来永劫この場から離れることは出来ない。
あなたは想像出来るだろうか。人の記憶の中でしか存在出来ない私を。
あいつはああだった、こうだった。
そう言って、語られるだけの存在に成り下がった自分を。
あなたは想像出来るだろうか。
私は想像だにしていなかった。
私の存在がなかったことになるなんて。
私は確かに存在した。あなたに出会い、あなたと笑い、あなたと泣き、あなたと怒り、あなたと愛し合った。
あなたと将来を語り合ったし、あなたの趣味についても教えて貰った。
あなたが億万長者になったり、宇宙を旅したり、超人になって美女を助けたいなんて言っても、私は黙って聞いてあげていた。
だって、私はあなたのことが好きだったから。
私の存在はあなた無しではいられなかったから。
私はあなたを愛していたし、心の底からあなたの側にいたいと願っていた。
だけど、あなたは私のことなんて歯牙にも掛けない。
まるで存在しないもののように扱った。
そう、あなたにとって私はただの厄介者でしかなかったのかも知れない。
そうよね。あなたが聞きたくもない話をし、あなたが見たくもないものを見せ、あなたがしたくもないことをさせ、あなたを恐怖に陥れたのも私なのだから。
でも、これだけは信じて欲しかった。
あなたを傷つけたいなんて、これっぽっちも考えたことなんてなかった。
あなたを悩ませたいなんて、これっぽっちも考えたことなんてなかった。
あなたと、ただ沢山の話をしたかった。
本当にただそれだけだった。
でも、あなたは私よりもあの人を選んだ。
夢という存在の私よりも、現実という存在のあの人を。
私は未来永劫、あなたに囚われたままだというのに。




