第拾肆話 「星の降る空に」
ネオン煌めく街を彼は独り帰宅の途についていた。
どこを見ても煌めく明かりで目がチカチカする。
彼はその煌めきに対して、あまりに自分が不甲斐なく、その情けなさに気落ちしてしまった。
家へと向かう足取りは重く、何度空で輝く星になりたいか、ビルの屋上から下を見下ろしたり、ホームから電車を眺めてみたり、陸橋の上から下を走る車を眺めてみたりしたが、星になる勇気はなかった。
相談窓口に電話したこともあったが、自分が生きている意味を諭されただけだった。
生きていて良いんだと言われはしたが、ではなぜ生きているのか、自分の価値はなんなのか、自分は何に悩んでいるのか、自分の人生設計をどうしたら良いのか、結局自分が何者なのかを知ることは出来ず、世の中に必要のない自分を思い知り、輝けない自分が唯一輝ける瞬間を完全否定された彼は、星になり損ねた。
彼は空を見上げた。
そこには都会の煌めきに掻き消された、星一つ見えない夜空が広がっていた。
生きるのに疲れた彼は、星の見える田舎へと移り住んで、自由気ままな生活をしたこともあった。慎ましやかに生き、その日食べるものさえあれば良いような、そんな暮らしだ。
しかし、彼を癒やすはずの田舎暮らしは、近所からの執拗な人付き合いの強制、プライベートなどまったくないコミュニティの圧力など、彼の心に大きな傷を与えるものであった。星空を眺めながらの井戸端会議は彼にとって苦痛でしかなかった。
彼は這々《ほうほう》の体で都会へと舞い戻って来たのだ。
結局、今の彼にとって生きることは苦行でしかなかった。
生きていれば素晴らしい何かが待っていると言われたが、その素晴らしいものが何かを示してくれる者はなく、彼は大海原の中、羅針盤も持たず漂流しているようなものだった。
この世には無数の星がいる。
その星は一つ一つが意味も無く輝こうとしている。
彼もその星の一つだった。
しかし、彼は輝けなかった。輝くことが許されなかった訳ではない。
輝こうとしたが、輝く力量が無かったのだ。
いや、輝いてはいたのかも知れない。
周りの明かりに掻き消されてしまって、見えなくなっていただけなのかも知れない。




