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遊頁譚  作者: 劉白雨


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第拾話 「闇を超えて」


 私はいつものように、懐中電灯片手に、腰には警棒を差し、巡回業務に出ていた。

 灯りが落とされた施設は、非常灯以外目に入る明かりはない。いつも恐怖と隣り合わせのこの仕事、毎回勤務に出る度に、自分の中の恐怖と格闘しなければならない。


 この施設は、最近発見されたダークマターエネルギーを扱う研究施設で、宇宙から採取されたダークマターを研究し、有用化する方法を模索しているのだ。この施設が第一級機密施設の指定を受け、アリ一匹侵入を許すことは出来ないのもそのためだ。


 私が照らし出す懐中電灯の明かりの先には、ハザードマークと関係者立ち入り禁止の表示がある。この先は宇宙服のような防護服を着用しないとならないため、巡回路からは外されている。命が惜しければ、絶対に立ち入らないことだ。

 周囲に異変がないことを確認し、私は静かに巡回路を進んだ。


 巡回経路は毎日ランダムで異なる。毎日同じ経路を辿ると巡回時間を読まれてしまうからだ。経路自体はウェアラブルの眼鏡型ディスプレーに表示されるナビが教えてくれるから、然程さほど問題は無いのだが、碁盤の目のように縦横無尽に走る廊下の曲がり角を、間違えないようにするのは、電灯の明かりの下であれば容易たやすいだろうが、暗がりの中ではなかなかに困難を極める。

 それでも、もう10年以上この仕事をしてきた、ベテランの域に入ろうとしている私にとっては、目を瞑っていても歩ける程、身体に染みついていた。


 その時、廊下の奥から微かに物音が聞こえてきた。

 この瞬間は、私でも流石に緊張する。

 不審者に気付かれないよう、懐中電灯を切り、眼鏡を暗視モードに切り替えた。そして腰の警棒に手を掛け、いつでも攻撃出来るように準備をし、一歩一歩慎重に近づいていく。

 次の角を曲がった先にターゲットがいる。

 心臓の鼓動が早くなり、額に薄らと汗が噴き出てきたが、鼻から大きく息を吸い、口からゆっくりと吐き出して、気持ちを落ち着かせ、覚悟を決める。

 ゆっくりと慎重に足を踏み出して、誰何しようとした。


 しかし、そこにいたのは無人巡回ロボットだった。人間が見落とすような隙間や、擬態したり、感知出来ないような危険物を探し出すことに特化しているロボットである。彼らのお陰で、巡回作業が楽になっていることは確かで、「なんだお前か、ありがとな」と私は声を掛けて、再び闇に染まった巡回路へと戻った。


 こうして、今夜も何事もなく、私の警備員としての夜勤業務が終わった。タイムカードを押して、施設の外に出ると、太陽の光が眩しく私を包み込んでいた。



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