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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
クノーテ共和国お助け編

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クノーテ共和国西方辺境の砦にて 6

 そしてキッチリ3日後。

 私は大人の身体に戻った。

 更に想定通りに私の食欲が爆発する。それはもう、食堂に移動するのも待てない程に。 

 結局部屋替えもせず閣下の私室をそのままお借りしていた私達だったのだけど、寝室の暖炉の前に置かれているカウチとローテーブルは私のフードファイトの戦場となった。

「カノン、大丈夫ですよ。食料は十分あります。満足するまで食べてください」

「うっ、うええーん!」

 ノアは次から次へと料理をローテーブルに並べ、空いたお皿を流れるように下げていく。

 ノアから完璧な給仕を受けながら食事を続けるけど、なかなか満足に辿り着けない!食べても食べても飢餓感が私を襲う!幼児退行を起こして気絶をした後の飢餓感は格別にキッツイんだよねー!今回も我慢できずに泣きながら爆食している。

 ノアがマジックバッグから出すエスティナの名物料理、王都の名物料理に、私は次から次へと手を出していく。

「・・・凄まじいな」

「想像以上です」

 ノアと私の言う事に半信半疑で一食分の食事の差し入れを持って来た閣下とダレンさんは、私の爆食ぶりに圧倒されていた。閣下に凄まじいと言われちゃったー。でも今は恥ずかしいよりも何よりも、食べたい!ダレンさんが差し入れてくれた一食分の食事なんて、秒で消えたからね。

 そして私の爆食は、5、6時間は余裕で続く。

 ノアのワンオペでは厳しいと判断した閣下は、私の給仕のお手伝いにお姉さま方を召喚してくれた。食堂の厨房からはワゴンでお肉がゴロゴロ入ったシチューの寸胴鍋(大)や、山盛りのパンが差し入れられた。煮込みや柔らかいパンはガブガブ食べられるので助かる!

 そしてノアが飲まず食わずで私の食事の世話をする事にならなくて良かった。グリーンバレーではノアの他に周囲の皆さんが力を合わせて毎回私のフードファイトのお世話をしてくれてたもんね。今も他国の軍人さんの好意に甘え切っているけど、ありがとう皆さん。とても助かります!

 こうして私の食欲大爆発は、砦の厨房からの応援物資、軍人さん達のご協力を頂き無事に乗り越える事が出来た。



 私の魔力はやっと全回復した。

 砦に保護されてからもうすぐ2週間にもなろうかという所だった。

 そしてその間の白竜とフェンリルは毎日同じことをしていた。

 夜は基本、2匹とも休んでいる。日が登ってしばらくするとフェンリルから白竜にしかけ始める。飛び掛かってくるフェンリルを、白竜は右に投げ、左に投げする。多少山の木々がへし折れたりしているようだけど、2匹は基本同じ場所から動かず。2匹が砦の方に近づく様子はない。

「ヴィゴ閣下、これまでお世話になりました」

「うむ。本当にカノンはスタンレーの聖女だったのだな」

 だからそう言っていたじゃーん!

 でもまあ、実際見ないと信じられないのは分かる。子供が数日で大人になるなんて、嘘だろって思うよね。でも、私の聖女の力で閣下とダレンさんの怪我の後遺症や精神的な落ち込み等が奇麗に無くなってしまい、ひょっとして?と様子見になって今に至るんだろう。はい、本当に大きくなりましたよ。

 大人の身体に戻った私なのだけど、この巨人が集う共和国軍辺境の砦では全然小さくて、男性軍人さん達からはもっと食べて大きくなれと励まされた。いや、これで大人だからね。

 お姉さま方は成人した私の顔が幼児体の頃の顔とほぼ変わらない事にぎゃー!と悶絶してから、可愛い可愛いと撫で繰り回してくださった。お姉さま方とは余裕で頭一つ分の身長差があったしね。結局この巨人の砦では幼児だろうが成人女だろうが、私の周囲からの扱いはあまり変わらなかった。なんだかなー。

 そして私達は会議室に再び集まり、今後の予定の相談をしていた。メンバーは私とノア、ヴィゴ閣下とダレンさんという前回と同じ4人だ。

「それで、白竜とフェンリルをこのままにしておけないので、ケンカ・・・、遊び?とにかく山の上で暴れて2匹が森を荒らすのを止めさせようと思います。なので、白竜と話をしに近くまで行ってきます」

 白竜を砦に呼んで良いですかと、以前ヴィゴ閣下にお伺いした事があったけど、この件に関しては許可が下りなかった。私とまだ意思疎通の取れていないフェンリルが不確定要素過ぎたからだ。敵か味方か分からないフェンリルを大森林の中に敷いている防護壁より内側に招き寄せるような行為は、やはり許可できないというヴィゴ閣下の判断だった。

 それもそうだよね。フェンリルはもちろん、白竜だってこちらの言う通りになると約束しかねるもんな。なので、私の方から白竜を訪ねて行きますと閣下に申し出たのだった。

 今日も白竜とフェンリルの取っ組み合いは始まっており、時折ビビビと砦が振動する。

 砦から白竜達を視認できるけど、白竜達は体高30メートルを優に超す巨体だから遠目にも確認できる訳で、白竜達のいる場所と砦の距離は結構ある。徒歩で向かおうかと思っていたら、それは無理だとヴィゴ閣下に止められた。結果としては、白竜達の傍までお姉さま方の犬ぞり部隊が送ってくれる事になった。

 犬ぞりには操縦士のお姉さま方と私とノア、そしてライフル銃を背負った軍人さん数人が同行する事になった。ライフルは白竜とフェンリルには効かないだろうけど、他の獣達からお姉さま方を守るためなのだそう。そして更には、白竜と私のやり取りを見届けるためにヴィゴ閣下自らが同行される事に。そうすると副官のダレンさんも自動的に付いてくることになる。思った以上に大所帯になってしまった。

 犬ぞりかー。前の世界でもアラスカとかでは使われていたような。ちょっと実際に乗るのが楽しみではある。

 日取りは天候をみながら決めるという話になり、数日中には白竜の元へ行く事となった。

 それからヴィゴ閣下から私は1つのお願いをされた。

「カノン。私からカノンに正式に依頼をしたいのだが・・・。この件が一段落したら、我が共和国の首都に一緒に来てくれないだろうか。昨年のスタンピードで多くの者が傷病軍人となってな。後方支援に回った者も居るが、普通の生活すら難しくなり軍を去った者も居る。我が国の医療技術では後遺症を取り除けなかった者も多い。依頼料はもちろん支払うし、魔力回復に必要な支援も当然こちらで行う。どうか、怪我の後遺症で苦しむ軍人達を診てくれないだろうか」

 ヴィゴ閣下からは昨年のクノーテ共和国のスタンピードの話も聞いた。

 聞けばクノーテ共和国もアストン王国と同じように、10年周期のスタンピードによる甚大な被害を受け続けているのだという。昨年はちょうど前回のスタンピードから10年目の年で、グリーンバレーと同様にこの辺境の砦でも十分に警戒をし、備えをしていた。エスティナの防護柵と同じように、この辺境では石造りの5メートルの高さの石壁を数キロにわたってこの10年で作り上げたのだそう。しかし、この石壁の一部はスタンピードの際に大型獣に突破されてしまい、銃火器と剣による軍人達の命を掛けた激しい防衛戦が繰り広げられる事となった。

「この砦を突破されれば、まずは我々の後方にある辺境都市ゼノーが大型獣に蹂躙される。それから内陸の町や村は成す術もなく壊滅するだろう。スタンピードで襲い来る大型獣は、普段森で出会う野生動物達とは全く別物だ。あれらは特に、人間を標的にして命を奪うまで追いかけ続けるように見える。だから我々は命に代えてもこの砦を含む防衛線を維持せねばならない」

 この砦の軍人さん達は、エスティナの人達と同じ覚悟でもってこの砦に居るんだと、ヴィゴ閣下の話からひしひしと伝わってきた。けれど、この大森林北部は生きるだけでもきっと過酷な地だ。その上、獣害を防ぎ続ける重責を担っている共和国軍の人達のプレッシャーを思うと、胸が痛くなるほどだった。この砦の人達には自然が味方しない分、グリーンバレーよりも更に過酷な戦いを強いられているんじゃないかな。

 元々この世界に居ないはずの聖女が、この世界に大きく歪な影響を与えているのではないか。元凶はスタンレーの聖女を召喚した奴らだけど、聖女の嘆きや苦しみが生まれなければその穢れに感化されて獣達が凶暴化する事も、10年周期のスタンピードも起こらなかったんじゃないかと、サージェ先生達と検証を重ねれば重ねるほどに思うのだった。

「カノン」 

私が膝の上で固く握りしめた手に、暖かい熱が触れた。

「あなたの望むままに」

 ノアが勇気づけるように私の手を包み込む。

「閣下。私の治癒と解呪が役に立つのなら、ぜひクノーテ共和国に協力したいと思います」

「そうか!カノン、感謝する」

 ヴィゴ閣下とダレンさんがホッとしたように笑顔を浮かべた。

 私でお役に立つのなら、全然やれる事はやりますとも。

「でも、この砦で色々片が付いたら、一度アストン王国に戻ります。アシュレイ様にも報告と相談をさせて下さい」

「それはもちろん、お前達の良いようにしてくれ。カノン達の都合の良い時に協力を貰えれば良い」

 ほんとはとっくにエスティナに戻っている筈だったからね。エスティナのケネスさん達も心配していると思うし、共和国軍の偉い人、ヴィゴ閣下からの依頼をお受けするなら、アシュレイ様にも報告しておいた方がいいよね。

「それからヴィゴ閣下。えーと、今年の夏位にアストン王国の賢人様達が、大森林のスタンピードの原因についての学説を発表したんですけど、ご存じですか?」

 これにはヴィゴ閣下とダレンさんが顔を見合わせるも、お二人とも知らない様子だった。賢人のお爺さん達の学説については、ノアが分かりやすく閣下達に説明してくれた。

 一通り話を聞いた閣下達は、しばらく考えこんでいた。

「・・・アストン王国の知識の塔から発信された学説だ。様々な調査に裏付けされてのものだとは思う。だが、獣を狂わせる穢れとやらがスタンレーの聖女の結界から発せられる物とは・・・。私はカノンから解呪と治癒を受け、確かに心身ともに回復したが、穢れ自体が万人の目に見える物ではない。その因果関係の証明は難しいのではないか」

「はい、証明は出来ないと思います。でも白竜は、聖女がこの地に、ゴルド大森林にどのような影響を与えるのか知っているようです。私自身が知らなかった聖女の身体に掛けられた呪いのような制限も、白竜は解除してくれました。私達は白竜の話を元にこの結論をだしました。もし、フェンリルとも話が出来れば、フェンリルからも色々と話を聞いてみたいと思います」

 別に証明する必要も感じてないというのが正直な所なんだよね。

 クノーテ共和国は魔法が無い国だから、科学技術がスタンレーやアストン王国よりも進んでいる国なんだと思う。だから説明が付かない事に尚更懐疑的になっちゃうんだろう。私も元日本人だからその感覚は分かる。

 でもこの世界は魔法と幻獣が存在する不思議な世界だからね。証明が出来ない事も真実だと信じれば本当の事になるんじゃないかな。そして証明が必要ないなら言ったもん勝ちじゃんね。なので、賢人のお爺さん達がスタンレーに突き付けた「お前んとこの結界の所為で大森林のスタンピードが起こるんじゃコラァ」という学説にも証明は必要ないのだ。今回アストン王国サイドはそのように開き直った。

 対話も出来ない、常識も通用し無さそうな相手には、こっちだって丁寧に対応する必要はないもんなー。

「それと1つ、心配な事があります。魔力が全回復した私は、穢れの影響を受けて苦しんでいる獣達の恨みの的になると白竜が言っていました。エスティナでは私を目掛けて凶暴化した大型獣が防護柵前に殺到しました。なのですみません、近いうちにこの砦の防護壁でも同じことが起こるかもしれません。でももしもそうなってもノアも居ますし、その時には白竜にも手伝ってもらいますし、大丈夫ですよ!」

「・・・・・」

 閣下はしばらく黙って私の顔を見ていると無言で立ち上がった。

 それから会議室の壁側に向かって歩いていき、壁に取り付けられている箱の蓋を開いて中にあるラッパのベルみたいな形の物の蓋を更に開けてから叫んだ。


『総員戦闘配置に付け!スタンピードの予兆有り!それと犬ぞりを3台用意しろ!30分後に出る!』


 私がビックリしていると、ダレンさんが「伝声管」ですよと教えてくれる。

 閣下が壁に向かって突然怒鳴ったので、私の報連相が遅くて激怒したのかと・・・。ノアも相談が遅かった事をダレンさんに謝っている。この件は、エスティナでも一度きりの事だったから、この共和国の砦でも起きるのか確信が持てなくて相談するか今日まで迷っていた案件だったんだよね。なまじっか軍部の砦なので、迎撃態勢を取ったら物凄い大事になっちゃいそうだし。砦全体をあげて警戒したのに何もなかったら申し訳ないなと思って・・・。

「いや、些細な事でもすぐに相談をしてくれ。何もなければそれはそれで良いのだ」

 でもダレンさんはこのように言ってくれた。

「それに前もって言ってもらえた方が、余裕をもって対応できるので助かる。何か気にかかる事があれば、これからはどうか迷わずに教えて欲しい」

 あっ・・・。今回は報告が遅くて迷惑をかけるパターンでしたか。

「ごめんなさい」

「申し訳ありません」

 私とノアは改めてダレンさんに謝った。

 今後は気にかかる事は積極的に相談していく事にします。この所、報連相の大切さを事ある毎に痛感しております。


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