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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
クノーテ共和国お助け編

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白竜からのお願い 2

 何気に白竜は着地が下手なんじゃないかと思う。お尻からドーンっていっつも着地するもんね。ソフトな着陸って見た事無い。まあお尻から着地してお座りする白竜は可愛いんだけど。

 白竜の元に辿り着くと、白竜は道沿いの休憩地にみっちりと腰を降ろしていた。

『我が娘』

「白竜!久しぶりだね。元気だった?レパードの親子は故郷に帰れたの?」

『白豹達は元の山へ帰した。だが、我はまた北山に行かねばならない。愛しい娘、お前に頼みがある』

「ん?私に出来る事?」

 白竜からの頼まれごとなんて初めての事だけど。

『北の地で、我の古い知り合いが穢れに呑み込まれていた』

「えっ、大変じゃん」

『あれはもうすぐ自我を失うだろう。それは今日かもしれぬし、この冬位は越えられるかもしれぬ。しかしいずれは、北方の大いなる災いとなるだろう。穢れは獣から獣へと伝わり、人の世にも及ぼう。この地にも穢れはいずれ届く。愛しい娘、そうなる前に北の地の白狼の穢れを払えるか』

「緊急事態じゃん!!」

 タイムリミットがアバウト!

 自我を失うタイミングが今日かもしれないし、次の冬が終わる約半年後かもしれないってさあ!最悪、今日には白竜の知り合いが自我を失って、穢れを巻き散らす災厄になるかもしれないんだよね?!猶予があまり無いかもしれない!

「白竜!北に行ってから1カ月以上は余裕で経ってたよ!なんでそんな大変な事をすぐに私に相談しないの。前もっての報告と連絡と相談!大事な事だよ!」

『む・・・。しばし、様子を見てから、すぐにお前に会いに来たのだが・・・』

 そのしばしに、1カ月かかったのかなあ?白竜のすぐと、私のすぐって、だいぶ違うと思う!んんんもおお!白竜時間んん!

 私の剣幕に驚いたのか、白竜は口を閉じて私を見下ろしている。ノアもびっくりして、目を丸くしてこちらを見ている。

 ・・・いかんいかん。慌てても何も解決出来ないからね。気持ちを落ち着けるように、フウと私は息を吐いた。

『・・・娘、怒ったか』

 気付くと心なしか、白竜の肩がしょんぼりとなで肩になっているような。

「・・・大きい声出してごめん、怒ってないよ。ちょっとびっくりして、慌てちゃっただけ。でも次に酷い穢れを見つけたら、様子を見ないですぐに私に教えてね」

『うむ。今後はそうしよう』

 白竜も詰めていた息を吐き出すようにブフーと、私とノアに鼻息を吹きかけた。

 私もちょっと冷静になろう。

 白竜にとっても想定外の事だったもんね。少し考える時間も必要だったんだろうし。その少しは1カ月ほどかかるみたいだから、次は考え込まずに私に知らせてくれればよし。今そうお願いしたから、もうこんな事は起こらないだろう。と、思いたい。

「よし!じゃあ、早速行こうか!」

「カノン、待ってください」

 白竜とどんどん会話を進めていると、ノアが私の肩に手を置く。

「北の地に行こうとしているのですか?しかも、白竜に運んでもらうと?」

「あ、うん・・・」

 私の顔を覗き込んでくるノアの顔が、めっちゃ真顔。

「確認しますが、南国のエスティナでの秋の装いで、今すぐ着の身着のままで北国へ向かうつもりですか?」

「・・・・・」

「それとまさか、1人で行くつもりでしたか?」

「それは無いよ!だって、ノアは何処へ行くにも絶対に一緒に来てくれるって思ってるし」

「そうですよ。私はあなたが行く場所、何処へでも。共に行きますからね」

 そう言ってノアはふんわりと笑った。

 なんかちょっと怒られそうな雰囲気だったけど、回避できたか?

「しかしいくら何でも、準備も無しに積雪も有り得る北国に行くのは無計画すぎます。防寒具をケネスさんからお借りして、北国に行く報告もしましょうね。報告、連絡、相談。確かに大切な事ですね。私にも是非こまめによろしくお願いしますね」

「は、はい」

 おぐう。特大ブーメランが自分に返ってきた。

 ちょっと圧強めにノアに念押しされて、私も思わず敬語になる。

 私、まったくもって冷静じゃなかったな。

『うむ。番、共に北に向かおうぞ。我が娘は番と離れる事をことに嫌がるからな』

 白竜がノアに向けてガフーと鼻息交じりに鳴く。

「?カノン、白竜は何と?」

「・・・ノアも一緒に北に行こう、だって」

 言いながら、私の顔がカーッと熱くなる。

 ノアが不思議そうな顔をしているけど、嘘は言ってないよ。

 白竜がノアを番認定している事を未だに伏せているだけで。

 白竜は知り合った時から私の傍に居るノアを番って呼んでたんだよね。白竜から見て、私の近くの男性オスイコール私の番認定なのかなと思って流してたんだけど、白竜はノアをちゃんと他の男性と見分けて認識しているんだよね。グイードに対しては私の番とか言わないし。

 そして私がいつノアと離れる事を嫌がったのさ!と思い返してみると、あれか、あの時か。王都に白竜が来てくれる直前に、ノアを残して逃げる選択に迫られた時かな・・・。同じシチュエーションを思い返すと、白竜がエスティナに初めてやって来た時もそうだったかな。何が嫌だったのかって白竜に後から聞かれたけど、ビアンカ様から領都への避難を迫られた時、ノアと離れる事が絶対に嫌だって、そういえば思ったよねえ・・・。

 激しい嫌悪と拒絶。確かにー。

 そんな心の機微まで白竜にバレていたかと思うと、顔も熱くなるってもんだよ。

 しかし、番って。人間で言ったら、夫婦の事じゃんね。

 私とノアは、まだそこまでの仲では・・・。

「カノン、どうしました?顔が赤い。まさか、熱が?」

 ノアに両頬を押さえられて上を向かせられる。私を覗き込んでくるノアの、顔が物凄くカッコいいぃ!

顔が火照る原因が至近距離で私を見つめてくるので、ますます私の顔が熱を持ってしまう。

「う、ううう」

 間近でノアから顔を覗き込まれて呻いていると、白竜がドシーンと片肘を付いて空き地に寝っ転がった。白竜の身体が休憩地に収まりきらずに、周囲の数本の木が押し倒される。

『話が終わったら言え、娘』

 白竜が待機の姿勢を取ったので、私もハッと我に返った。白竜は様子見で1カ月過ぎてしまうタイプだった。イチャついている場合じゃなかったよ!

「ノア!時間が無いの!北にいる白竜の知り合いが穢れに呑まれて、今日にも自我を失いそうなんだって!北で災厄が発生したら、エスティナにも影響があるかも!」

「分かりました。急ぎましょう」

 それから私とノアは白竜の背中に乗せてもらって、緊急事態という事で冒険者ギルドの裏手の訓練場に直接降り立った。

 驚いて訓練場に駆け付けたケネスさんには白竜でエスティナに乗り付けた謝罪と共に、これからノアと白竜と一緒に北に向かう事、出来たら何か防寒着を貸して欲しい事を告げる。ケネスさんはギルドの備品の、冬登山用の厚手のコートとムートンブーツ、毛皮で裏打ちをした手袋を貸してくれた。用意の良い事に男性用と女性用があった。滅多にないけどゴルド大森林の奥にあるジガ山脈という山に冬期登山する時用なのだそう。私とノアはありがたく借り受け、かなり暑いけどしっかり着込んでから白竜に乗った。

 白竜の背中には翼の付け根と首の付け根の間に深さ50センチ位の窪みがあり、丁度ノアと2人で収まり良く座れるようになっている。レパードの赤ちゃんもこのポケットに収まっていたなあと思い返す。

 白竜は更に私達の周囲に結界を張ってくれたらしく、キンと硬質の音がすると共に視界に薄紫のフィルターが掛かった。ビアンカ様の結界と非常によく似た白竜の守護結界だ。

「それじゃ、行ってきます!」

 私達はケネスさんに見送られながら北の地へ向かって出発した。

 予定としては白竜の知り合いに会って、ちょっと穢れを払ったらすぐに帰ってくる。すぐに帰ってこられると思っていたのだ。

 この時、私とノアはクノーテ共和国と深く関わるようになるなんて、思ってもいなかった。



 パルンカ採取に励もうと思っていたある秋の日。

 私とノアは完全防寒をして白竜の背に乗せられ、一路北を目指している。

 私達の視界は白竜の背中と上空の空しか見えない。でも下手に下の景色が見えたらものすごく怖かったと思う。視界を遮る物が何もない空と、特に変化が無い白竜の背中だけを見ているからいいけど、これで下の様子が見えたら白竜の出すスピードが怖すぎて平然と背中に乗せられて居られなかっただろう。

 たまにね、鷹とか鷲みたいなでっかい鳥が目につくんだけど、ビックリする位あっという間に後ろに流れていくからね。音速まではまさか行かないだろうけど、新幹線並みのスピードが出ているんじゃないかなあ。

 私は白竜の背中のポケットに収まり、背中をノアに預けながらあえて変わり映えのしない空だけを見上げるようにしていた。そうしておけば案外振動も無いし快適な空の旅だった。

 私達は白竜の背中の上で昼食を取る余裕まであった。ランチを取って食休みをして、ノアに抱えられながら図太く昼寝までして。目が覚めて、おやつでも食べる?なんて相談をノアとし始めた頃、白竜が私達に北の地に着いたと告げた。

 一瞬の浮遊感の後、ズシーンと言う音と共にノアに支えられて白竜の着地の振動に耐えた。白竜は伏せの状態でお腹から着地をしてくれたらしい。私はノアの手を借りて白竜の背中の上に立った。

 辺りを見回すと景色は一変していて、見晴らしの良い雪山に私達は到着していた。

 今日の午前中は秋の実り豊かな緑の森に居たのに、今は辺り一面銀世界だった。

 今はまだ白竜が結界を張ってくれているけど、この結界が無くなったら途端に私とノアは凍えてしまうんじゃないだろうか。

 樹木も無い禿げた雪山に降り立ったけど、周りの山を見れば真っ白に凍り付いた針葉樹林が広がっている。もうこの地の季節はバリバリの冬だった。

「白竜。結界はまだ張っていてね。きっとこの防寒着じゃ、私もノアもあっという間に凍えちゃうから」

 ケネスさんから借りた防寒着は、エスティナなら十分すぎるものだけど、この厳寒の地では氷装甲過ぎるかも。一応毛織物のコートなんだけど裏地も無いし冷風が体に突き刺さりそうだもん。

『相分かった。それと愛しい娘、我の知り合いはそれ、そこの穢れの塊だ』

 白竜が腹ばいから起き上がると、白竜の向こうには真っ黒い物が・・・。

 白竜は自分の知り合いの真ん前に私達を連れてきてくれていた。

 私達が降り立った雪山は疎らに木が生えるだけの見晴らしの良さだったけど、この禿山の天辺には真っ黒な塊が鎮座していた。

 白竜の纏っていた穢れは真っ黒のプルプルしたプリンみたいな感じだったけど、白竜の知り合いの穢れは、もったりとしていて光沢も無くマットな感じで半円に盛り上がっている。穢れの主の姿は毎度のことながら私には見えない。

 そして穢れと接している雪山は、シュワシュワと灰色の煙が立ち上がっている。非常に不穏だ。なんか毒素的な物が発生していて山の草木が枯れているのかな。そういえば、白竜の住処の一帯も高い木々がさっぱり無くて、まばらに草が生えている岩山になってたもんね。穢れが酷くなると、物理的に周囲に影響を及ぼすようになるのかも。

「・・・これは、フェンリルでしょうか。ギルドの大型獣図録で見た事がありますが、たしか大森林北部の生態系の頂点にある魔獣です」

 ノアが穢れの塊の中の存在の説明をしてくれた。

 フェンリル。ファンタジー物のゲームとかラノベで良く聞く名前だ。

 白竜がそういえば白狼って言ってた。前の世界では創作上の幻獣と言う扱いだったけど、この世界には実際に居るんだなあ。

 見た目は白くて大きい狼かな?でもこの大きさ。白竜の身体と同じくらいの大きさがあるよね・・・。

「ノア、この穢れは白竜と同じくらいのサイズだよ。これの穢れを払ったら私、幼児退行を起こして気絶コースだと思う」

 ほぼ満タンの魔力量で白竜の解呪を行って、私はバッチリ幼児退行を起こして気絶したもんね。

「でも、穢れを払うね。じゃないと、これが災厄になってきっとエスティナまでやってきちゃうし」

「はい。私がカノンを必ず守ります。思い切りやってください」

 うん。ではやろうか!

 私は白竜にフェンリルの様子を聞く。

「白竜。フェンリルは、今触って大丈夫?起きてるの?」

『白狼。・・・・。寝ているか。返答がないな』

 フェンリルは白竜の呼びかけに答えない。

「蹲って両目を閉じていますが、腹部は呼吸に従って動いています。生きてはいるようですね」

 うーん、意識があるのかは分からない。

 こんな大きい白竜がズシーンとフェンリルのすぐ隣に着地したのに、普通起きない事なんてある?ひょっとしたらまさに今、自我を失いつつあるんじゃないだろうか・・・。

「ノア、フェンリルの後ろに回りたい。お尻か足か、尻尾にちょっとだけ触って、急いで解呪するから」

「承知しました」

 ノアが私を手引きして、黒い塊の周囲をグルーッと歩き始めた。そして、ノアは歩みを止めた。

「ここに尻尾の先がありますよ」

 私もノアも、もったりとしたつき立てのお餅のような柔らかさを見せる真っ黒な穢れに両足を突っ込んでいた。幸い私とノアの両足は、穢れに触れて痛みが生じたり、煙が出たりすることはなかった。私達に実害が無いのは分かったけど、触れる事で感じる嫌悪感はどうしようもない。真っ黒いお餅のような穢れは、私の両足にベッタリとくっ付いてくる。や、柔らかそう。

この気色悪い穢れを見てばかりいてもしょうがないな。パッと払って、みんなでパッと帰ろう。

「消えろ!!」

 予想通り、私の視界は真っ白に染まり、それと同時に私は意識を手放してしまったのだった。



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