平穏の地を手に入れるために 8
私、今回王都では頑張ったと思う。
私にしか出来ない事を頑張って、エスティナで暮らす権利を見事勝ち取った。ノアも王族達とやり合ってくれたし、私も自分史上最大の頑張りを見せたと思う。
だからやっと言えると思った。
私はノアに、待っていてもらった告白の返事をした。
その翌日、私とノアが食堂に降りていくと、瞬く間に私の身柄はアリスとミンミに捕獲された。
「カノンちゃん、その顔はいけないわ。独身男達に目の毒よ」
「カノン~、何があったのか丸わかりよ!」
「ええー?!」
私はアリスの部屋に押し込まれて、ほぼ押し倒されるようにアリスのベッドに座らせられた。
「そんな、そんなに顔に出てた?」
食堂に降りる時も足元がフワフワして、顔もちょっと熱いなあとは思ってたけど、そんなに何があったか丸わかりだった?!ますます顔の火照りを覚えて、私は両手で頬を押さえた。
「うふふ。でもカノンちゃん、おめでとう。お互いに納得の上よね?まさか無理やりじゃないものね?」
「そんな訳ないよ!だって、私も望んだんだから!」
言いながらもますます顔が火照ってくる。
そうなんだよ。お互いに望んだ結果なんだもんね。
「はあー、そっかそっか。ノアさんもやっと念願叶ったのね。カノンも幸せそうだし良かった」
「あ、ありがとう。ミンミ、アリス」
は、恥ずかしい・・・。昨夜何があったかバレバレだったなんて。
「カノンちゃん、多分初めてだったわよね?体は大丈夫?」
「・・・別に、元気だけど」
そしてミンミに突然、体の調子を尋ねられる。
何で?
何故に体を気遣われるのか。
「なら良かったわね。初めては痛いって良く聞くもの。でもきっと、ノアさんなら物凄く優しいわよね!」
言っている途中からアリスが頬をポッと桃色に染める。赤面するアリスは可愛いけども。
「痛いって、なに?」
2人は一体、何の話をしているの?
首を傾げた私に、2人もあれ?と首を傾げた。
「まあ、個人差もあるみたいだけど。カノンちゃん、体の痛みは全然ないの?」
「初めての夜を夫と過ごした妻は翌朝起き上がれないから、夫が朝食をベッドに運ぶって聞くけどね?カノンは元気よねえ」
「ふあ?!!」
ここでようやく、私は2人が物凄い誤解をしている事に気付いた。
初めての夜?!それって、し、しょ・・・。
「し、してない!私とノア、まだしてないから!!!」
「「えっ・・・」」
2人はしばらく機能停止した。
「だ、だって。結婚も、まだなのに、そんな・・・。あ、でももちろん、いずれはって考えてるよ。でもまずは、け、結婚を視野に入れながら、恋人として、私と付き合って欲しいって昨日お願いして、ノアからは了解してもらったの!」
ひゃああ、恥ずかしい!
昨夜の事を思い返すと、何度でも顔が火照ってしまう!
ノアから告白されて、これまでずっと返事を待ってもらっていた。ちょっと待って、もうちょっと待ってと。申し訳ないと思いながら、ノアにこれまでずっと待ってもらっていたのだ。
いつまで待たせるつもりだったのかと言うと、結局は私がノアのパートナーとして隣に立つ覚悟を持てるまで、って事だったのだ。
つまり、私もノアの事をとっくに異性として好きだったって事じゃないか。
私は、カッコ良くて強くて冒険者として物凄い実力もあって、エスティナで皆に頼りにされるノアの隣に立つ自信をなかなか持てなかった。でも何かを頑張って成し遂げたら、何か頑張った!って自分で胸を張れることが出来たらその時は、ノアの彼女になる勇気を持てるんじゃないかと思った。
なので、その時が来たら、ノアにきちんと自分の気持ちを伝えようって心に決めていたのだ。
私は王都で、庶民の身でアストン王国の王族に啖呵を切って頑張った。私と、ノアが安心してエスティナで暮らせるように、物凄く頑張った。周りが評価してくれるんじゃなくて、自分が胸を張って頑張ったと言えるし、そしてそれに伴い最高の結果も勝ち取る事が出来たのだ。
やっと覚悟が付いた私は、昨夜ノアに自分の気持ちを伝えた。
私の恋人になってください、と!
「・・・えーと、つまり」
「カノンちゃんとノアは、男女の関係にはなったけど、体の付き合いはまだしていないと」
「そうなの!」
色々な考えもあると思うけどさあ!
私は男性経験皆無なので、恋人同士になるけどゆっくりお願いしたいってノアには伝えてある。ノアはとっても優しく微笑みながら、カノンのペースでゆっくり行きましょうねと言ってくれたのだ。
「・・・私、ほんと、ノアさんを尊敬する」
「ノアの鋼の忍耐力には、エスティナ中の男達が驚きと共に敬意を表しているわよ」
ノアが周囲から尊敬される素晴らしい男性である事には私も同意。でも2人がこちらを見る目は、あーあと言った残念な者を見る目をしている。
何かな?!何かご不満でも?!
「カノン、私ですらラッシュとキス位したわよ」
「・・・えええーー?!!」
突然に、アリスが爆弾をぶち込んできた。
「えっ、ええっ?!2人は、付き合って?!いつから!!」
怪しいなとは思ってたけど!
「まだ付き合ってないけど」
「そうなの?!」
「カノンちゃん、私だってたまに、グイードと、ね?」
「!!!」
ね?と言われても!
ちょっと、朝からするには、話す内容が大人過ぎる!私にはまだ早い!
「え、え、ミンミと、グイードは」
「恋人未満って所だけど、同郷だしお互いを良く知っているし。このまま相手がお互いに見つからなかったら、その内一緒になろうかって話はしてるの。庶民では、婚前交渉はよくある事よ」
「こ」
んぜんこうしょう。
経験皆無、知識も乏しい私には刺激が強すぎる。
「だって結婚した後で相性が合わなかったら悲惨じゃない。お互いの為にも確認は必要よ。でもノアさんはもう、ねえ?」
「何があってもカノンちゃんを逃がさないと思うけど」
「ひええええ」
頭が沸騰しそう!!
「あはは、まあカノンちゃんの気持ちをノアが大切にしてくれてるなら良かった。あとは2人の問題だもの」
「そうね。カノン、私達も早とちりして悪かったわ」
そう言いながら、ベッドに沈み込みそうになっている私を、2人はよいしょと立ち上がらせる。
ただでさえ足元がフワフワしていたのに、2人の話の所為でますます足元が覚束ない事に。私はアリスとミンミに介助されながらヨロヨロと食堂へと向かった。
食堂には宿を利用している見慣れた冒険者の面々が揃っている。
奥まったテーブルにはグイードと一緒にノアが座って私達を待っている。
ノアが私達に気付いて、笑顔で手を上げた。
信じられる?
あんなにカッコいい人が、私のこ、恋人になってくれるんだって!
異世界で、生まれて初めて、私に彼氏が出来たのだった。
これにて、「アストン王国地固め編」は終了となります。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次から「クノーテ共和国お助け編」スタート予定です。
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