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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編

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平穏の地を手に入れるために 7

 王都を発つ私達の見送りには、新しい国体の構築に大忙しであろうジュリアン王と、筆頭賢人を退任してジュリアン王の専従相談役となったオーガスト様、そして空席が出た賢人の1人にとうとうさせられてしまったサージェ先生が見送りに来てくれた。

 仕事が早いサージェ先生は賢人のお爺さん達にスタンレーの聖女の結界とそれが及ぼす大森林への影響についての学説を国内外に発表し、ジュリアン王の名の下に質問状をスタンレーにすでに送っていた。

 国交断絶状態のスタンレーからアストン王国へ返事が来る可能性は限りなく低いけど、今後の聖女召喚に対して牽制をする目的なので、出来る限りの事はアストン王国としてもやった状態だ。

 一仕事済んだ訳で、エスティナに戻って大森林の調査を再開したいサージェ先生なのだけど、信頼できる人間がとにかく少ない新王の為にサージェ先生はしばらく王都に留まる事になった。

「ビアンカ、お前の力を貸してくれないか。俺の傍に居て欲しいのだ」

「甘ったれるなジュリアン王。オーガスト老とサージェに両脇を固めてもらっておるのだ。2人が力を貸している内に、英雄王の体制をさっさと作るが良い。私はグリーンバレーに骨を埋めると、もう決めているからな」

 ジュリアン王は最後までビアンカ様を王都に引き留めようとしていた。

 ジュリアン王はエスティナで確保されてから、何だかんだとビアンカ様のお世話になっていたからね。ビアンカ様は終始厳しい事をジュリアン王に言っていたけど、その言葉にはジュリアン王を叱咤激励しているような温かみが感じられたもんな。ジュリアン王が懐いてしまうのも仕方がないかも。

「ビアンカ、俺の妾妃にならないか。世継ぎが必要だから正妃には迎えられんが、俺の傍に居て欲しいのだ」

「クソガキが!!」

 そして調子に乗ったジュリアン王はビアンカ様に思いっきりアイアンクローを食らい、頭を抱えてうずくまっていた。

「いつまでもふざけた事をぬかすな。いい加減腹を決めて妃を迎えるがいい。どの家から迎えようが、妃の実家を押さえられるかはお前の手腕に掛かっているのだからな」

 あの大騒動の後に色々と王家の実態が分かって来たのだけど、ジギムンド王が即位してから十数年以上、国政に無関心なジギムンド王を第一王妃の実家の侯爵家がほぼ言いなりにさせて来たのだそう。所謂傀儡政治と言う奴だよね。

 王宮の要職に付いている人も殆どが第一王妃の父親である侯爵家の派閥で固められていて、今国政に関わる人員の刷新が進められているのだという。

 生家の力がありすぎる妃を迎えるのも問題があるし、かといって後ろ盾が無さすぎると貴族達に言う事を聞かせられなくなる。王様って、結婚相手選びは本当に大変そうだなー。

「ははは、分かった。だが、逞しい年増が俺の好みなのだ。ビアンカ、お前は俺の理想の女だ」

「クーソーガーキーがあああ!!!」

 ジュリアン王は再びビアンカ様からアイアンクローを食らっていた。このじゃれ合いが楽しくてジュリアン王はビアンカ様にちょっかい掛けるんだろうなあ。

「いい加減母親の呪縛から離れろ。母親と正反対の女にこだわるな。姿や特性ではなく、その者の心を見定めるがいい。そうすればお前を心から慕い、お前の支えになりたいと願う女に必ず出会えるさ」

「・・・ああ、そうだな。ビアンカ、世話になった!!」

 一瞬寂しそうにトーンダウンしたジュリアン王は、すぐにいつもの陽気な様子に戻り、文字通り輝く笑顔を見せた。

 即位したジュリアン王は、私には直視が厳しい位にますます光り輝いている。白竜が言うところの、人の王が纏う光がますます強くなっている気がする。私はもう薄目じゃないとジュリアン王を見られないからなー。

「励めよ、英雄王!」

 私が薄目で2人を見守る中、ビアンカ様はジュリアン王と力強く別れの挨拶をした。ビアンカ様は、やっぱり厳しくも優しい人なのだった。

 穢れに長い間侵され続けていた第一王妃と第一王子は、穢れを払われた後、廃人の様になってしまったそうだ。ジギムンド王は、意識は戻ったけど、自分から王族の直轄領での療養を申し出たそう。廃人になった2人と元国王は王宮を出る事になった。

 王家直系の血を引くのはジュリアン王だけになってしまった。

 王宮の体制を立て直さないといけないし、新しいアストン王国の害にならないお妃様を探さないといけないし、世継ぎの事も考えなきゃないだろう。ジュリアン王は生きるために王になるって言ったけど、そのために果たさなければいけない責任のなんて大きく、多い事か。

 でも、こちらを振り返って太陽の様に笑うジュリアン王は、何となく周囲の協力をガンガン集めて、助けられて困難を乗り越えていきそうな感じもする。

 お爺さんのラシード王は強力なリーダーシップを発揮した素晴らしい王だったんだろうけど、ジュリアン王は何だか、この人大丈夫かなって周囲が思わず手を差し伸べたくなる感じがある。それって、人の上に立つのには最高の素質なんじゃないだろうか。

 天性の人たらしって、ジュリアン王みたいな人の事を言うんだと思うなあ。

 城下町では「俺はジュリアン王のダチなんだぜ」という庶民が溢れていて、「私、妃に望まれた事があるわ」という庶民も溢れているそうだ。これからは庶民にも貴族にも愛される王様になったら良いねと思う。

 私達は今日、グリーンバレーに戻る。なので、私達が辺境で平和に暮らすためにも、ジュリアン王は王都でしっかりと国の運営に努めて欲しい。

「カノン、ノア!お前達にも世話になった!」

 ほんとにね!

 あれよあれよとジュリアン王達の勢いに呑まれて、私はジュリアン王に協力をする事になったし、なんか白竜が見守る中での突発的戴冠式は王国で大きな話題になったし、いつの間にか白竜の聖女とグリーンバレーの勇者はジュリアン王の親友になっていた。

 そうなると、私とノアを庇護しているグリーバレー領主アシュレイ様もジュリアン王を支持しているという事になる。国防の要、グリーンバレーのホーン辺境伯がジュリアン王を支持した事は非常に貴族社会では影響が大きく、そう時間も掛からず国内の貴族達を掌握を出来るだろうと、サージェ先生がジュリアン王の隣で言っている。そんなサージェ先生だって、俺は中立派だとあんなに言っていたのにねえ。

 いつのまにやらジュリアン王の周囲の人達は、みんなジュリアン王に協力する形になっているから驚きだ。私もなるべくジュリアン王と距離を取ろうとしていたのにな。結局最後はジュリアン王の望む形になってしまったような。これが人の王たる輝きを持つ者の力なのかな。

「ジュリアン王、お元気で!」

 でも不思議と憎めないジュリアン王だった。

「わが友よ、息災でな!」

 ノアの顔はスンと真顔になっていたけど、私達はジュリアン王と握手を交わした。

「聖女カノン」

 オーガスト様が私の方に手を伸ばすので、私はオーガスト様に近寄って、オーガスト様の手をギュッと捕まえた。

「うむ。充実した清浄な気が清々しく巡っている。聖女カノン、すっかり元気であるな」

「はい。オーガスト様、たくさんのお料理とお菓子をありがとうございました!食べきれない分はお土産に持って帰ります。大切に食べますね」

「フォー」

 オーガスト様は約束通り、王都ラーテ名物料理や評判のお菓子を沢山ホーン辺境伯邸に差し入れしてくれたのだ。

 食欲爆発の際に少しは食べさせてもらったけど、ゆっくり楽しんで食べたいからお土産にする分もマジックバッグに取っておいてもらった。王都名物の試食会をしたら、エスティナの料理上手の皆さんが王都の味を再現してくれるんじゃないかなーという目論見もある。

「聖女も勇者も、その地に必要な存在であるからこそ生まれるのだと儂は思う。グリーンバレーでそなた達が存在を示したならば、その地で健やかに在ってくれればそれでよい。それだけで、ジュリアンの治世の始まりの後押しとなる。聖女カノン、勇者ノアよ。此度の助力、深く感謝する」

「色々、成り行きでしたけど。皆さんの役に立てたなら、良かったです。オーガスト様、お元気で」

「私もやりたいようにやったまでです。どうぞお気になさらず」

 内心では色々思う所もあるだろうノアだけど、オーガスト様には礼を守り丁重に握手を交わしていた。

 私が握手をしたとき、また「フォー」と声が出ていたので、聖女の祈りの力がまたもオーガスト様に流れ込んだのかも。ジュリアン王はまだまだオーガスト様を頼りにしているから、長生きをして、お元気でジュリアン王を支えてあげてくださいね。

 アシュレイ様のタウンハウスの皆さんにも惜しまれながら、私達は王都を後にしてグリーンバレー領へと無事に帰る事が出来た。



 今回はそう時間も掛からないでエスティナに帰って来る事が出来た。

 昨年は秋の終わりまで領都にいたから、エスティナで秋を過ごすのは初めてだ。

 エスティナは春からずっと森が恵みをもたらしてくれる豊かな土地だけど、さすがに冬ともなれば森の恵みは春まで途絶える。雪は降らないので、冬の間も行商人がエスティナと領都を行き来するので食料に困ったりしないけど、冬に楽しむための保存食作りとか、アシュレイ様へ税を収めるためのエスティナ唯一の農作業とか、秋から冬の季節の作業がエスティナにはあるのだ。

 昨年の冬はとても楽しかったので、今年も季節の仕事をお手伝いしたいなあ。

 今年のエスティナの夏は昨年と比べ物にならない位に、森の獣達は穏やかだった。白竜が私に貢いだ大型獣は30匹を超え、絶対にその所為だとケネスさんとグイードは言っていた。

 狂暴化した大型魔獣の姿はこの夏の間は一切見られず、大森林を哨戒していても行き合うのは普通のサイズの野生動物達ばかり。人に会うと向こうが逃げていくので、今の大森林は冒険者じゃなくても採取活動が出来る位に安全な場所になっているという。

 聖女の穢れがスタンレーから放出されなければ、ゴルド大森林はこんな平和な森になるんじゃないかな。

 生活を守るために冒険者達が命を脅かされることも無く、森の獣達と共存しながら暮らす日々。エスティナの人達が焦がれていた暮らしが、ひょっとしたら実現できるんじゃないかな。

 私もノアも、そうなって欲しいと願うし、その夢が叶う時、私達もエスティナの一員で居たいと思う。



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オーガスト爺様好きだから、長く出てきてほしいな
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