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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編

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平穏の地を手に入れるために 1

 白竜召喚は空振りに終わり、私の解呪の実演に対しても第一王子の反応はイマイチ。私の爆食に関しては思わぬお褒めの言葉を頂いたのだけど、第一王子の私への印象はきっとおもしれーけど別に手元に置くまででもない女。位だったと思う。

「カノン、素晴らしい成果でした。嘘偽りなく力を開示して、その上で第一王子のカノンへの興味を見事失わせたのですから」

「・・・そうだね」

 ノアは私の第一王子の謁見について大絶賛してくれたけどね。

 第一王子の興味を引いてしまっても大変だったけど、なんだかなー。力を見せつけて、第一王子にこちらの言う事を聞かせるなんて駆け引きは私には無理だったみたいだ。

「うむ。兄上が無理を言うようなら庇おうと思っていたのだが、私が出る幕も無かった。カノンは見事、自身の力で兄上の興味をそらす事が出来たな!」

「・・・お気遣いありがとうございます、殿下」

 第二王子は何しに来たのかなと思っていたけど、第一王子が無理を言い出したら私を助けようとしてくれていたらしい。しかし、第二王子が口を出すまでも無かった。心配しなくても、第一王子はまったく私に興味を持たなかった。無駄にお手数をおかけしまして、すみませんでしたー。

 そして、期待外れの「竜と対話する乙女」からは第一王子の興味は急激に薄れ、そういえばドラゴンバスターの子孫が護衛に付いてきたよなと、第一王子はノアの存在を思い出したのだった。

 ノアは自分の素性を明らかにしてまで、第一王子の関心を私から逸らそうとしてくれたのだけど、これも無駄にノアの存在を第一王子に知らしめるだけになってしまった。こんな事ならノアには黙って付き添いだけお願いしておけば、今頃はフードファイトへの報奨金でも貰ってエスティナに帰れていたのかも。

 でもあくまでもこの考えは結果論。出たとこ勝負だったし、仕方がない。仕方がないが、本当にもう、なんだかなー。人生って、ままならないな。


 そうした訳で私が第一王子にフードファイトを披露した2日後、今度はノアの力を第一王子へ披露する事となったのだった。

「ノア、頑張ってね。怪我に気を付けて」

「はい、頑張ります」

 ノアが気負いなくニコリと笑う。

 エスティナに彗星のごとく現れた勇者、ノア・ブランドンの力を確認するために、第一王子は王都の競技場を舞台として用意した。エスティナでのアシュレイ様へのお披露目会とは規模が違った。

 円形競技場では、年に1度、王国騎士団員によるトーナメント方式の試合が行われたり、年越しには特設ステージが組まれ、篝火が照らす中、生演奏付き長尺の歌劇が上演されたりするのだそう。客席は競技場を見下ろす形でぐるりと円形に設置されている。

 観客席には満席ではないけどぽつぽつとお客さんも入っている。一般公開されてるの?

「王都の貴族達に通達が回ったようだな。エスティナの勇者を見ようと暇な貴族達が集まっている。王都の貴族達にとっては良い暇つぶしだろう」

 疑問に思っていたら、アシュレイ様から解説が入った。お貴族様達だったかー。ノアの品定めに来たって所なのかな。

 ちなみに私とミンミ、アシュレイ様達のグリーンバレーチームは一般席ではなく、競技場の脇の特設観覧席に居る。観覧席というか、競技場の端っこに椅子を置いてもらっただけとも言う。

 そして何故か私達と一緒に第二王子も居る。第二王子には毒から回復したという腹心さんが傍に控えていて、エスティナでは殿下がお世話になりましたと丁寧にお礼を言われた。いえいえ、お世話したのはほぼビアンカ様だったけどね。

 そして、私達の観覧席から真向い、上方に目を向ければ、王族達の観覧用ボックス席が見える。そこには、今日の催しを開いた黒綿第一王子と、その隣にはこれまた全身を黒い穢れで覆われた方が座っていた。あれはいったい誰。

「これはまた、数年見なかったうちにだいぶ穢れたな。カノン、第一王子の隣に座っているのが第一王妃だ。そしてその隣がジギムンド王だ」

「そうですかー・・・」

 第一王妃にも真っ黒い不透明の穢れが全身に纏わりついていた。第一王妃の穢れは黒いビニールみたいにピッタリと第一王妃に張り付いている。黒一色のソフトビニールの人形みたい。顔形の輪郭は辛うじて分かるかなー。真っ黒母子だよ・・・。

 しかも、第一王妃の穢れと第一王子の穢れが、行ったり来たりしているんだよ。明らかに相互作用している。あれはきっと、明らかに、よろしくない。

 その事をビアンカ様に伝えると、「む」と眉間に皺を寄せて王族達のボックス席を厳しい顔で見上げていた。ひょっとしたらビアンカ様にはそこまで見えていないのかもしれない。

 そして、その第一王妃の隣に座っている国王にも穢れがバッチリまとわりついているけど、王妃と王子程ではない。黒いもやもやの向こうに顔と体がチラチラ見えたり隠れたりしている。

 なんか、王族達が上に一塊でいるけど、いいのかな。

 ちらりと第二王子を見ると、光り輝く王子とバッチリ目が合った。

「ははは!カノン、お前は何を考えているか分かりやすいな。俺は上に居るよりもここに居る方が気楽だ。気にするな!」

「は、はい」

「それに兄上達も俺が傍に居る事を望まんからな」

「分かりました」

 私が第二王子の言葉に頷くと、何が楽しいのか第二王子はまだ声を立てて笑っていた。まあ、家族だからって仲が良いとは限らないって、良く知ってるよ。私もノアも、第二王子も、生まれる場所を選べなかったのはしょうがない。

 でも私とノアは、生きていく場所は選びたいと思っているのだ。第二王子は庶民と違って色々と身軽に決められないと思うけど、第二王子にとっても良い方向で事態が動くと良いなとは思っている。

 そんな私達が競技場の端の関係者席で観覧する中、とうとうノアの力試しが王族達の前で行われる事となった。

 やっぱり王侯貴族が観戦する実質王覧試合になっちゃったのだけど、内容としてはアストン王国騎士団の実力者10人に対してノアが何処まで戦えるか、という物らしい。

 競技場の中央に立つノアの格好は、普段着。そうとしか言えない。

 防具も何もつけずにいつも冒険者の活動をする時の生成りのシャツに黒いズボン、編み上げブーツ。そして、愛用の剣。この剣も凄い業物とかそんなんじゃなく、エスティナの鍛冶屋さんが打った、普通の冒険者用の剣。中型の獣までなら斬れる、って位の物だ。エスティナの鍛冶屋さんは包丁とか鉈とか、日用品の方が専門だからね。でもそんな町の鍛冶屋さんが普段使い用に打った剣で、ノアは大型獣を難なく斬り伏せて、森の奥から大型獣を涼しい顔で引きずってエスティナまで持ち帰るのだった。ノア位強くなっちゃうと、もう武器なんて何でも良いんだろうな。

 そんな大森林の哨戒任務時と変わらない格好のノアの前には、アストン王国騎士団の騎士が一人立った。対する騎士も訓練用の装いのようで、白いシャツに茶色いズボン、黒い編み上げブーツはノアと変わらず。そして、手には訓練用の木剣を持っていた。体が大きく、ノアの頭二つ分位背も高く、体の厚みもノアの二倍はありそう。

「・・・・防具を付けたらいかがですか?怪我をしますよ。それと、その木剣では役に立たないかと。せめて鉄剣をお持ちください」

 せっかくのノアの忠告だったんだけど、対戦相手はノアの言葉を鼻で笑った。

「田舎から出て来た冒険者風情がこの俺に傷をつけられる訳が無いだろう。お前が死なんように木剣を使ってやるのだというに、思い上がりも甚だしい。現実を教えてやろう。さっさとかかって来い、この田舎剣士が!!」

 王国騎士団から選ばれた代表の騎士は、頭からノアを見くびって馬鹿にしてきている。

 冒険者風情だって。

 冒険者にも敬意を払って一緒に領地の防衛を担ってくれているグリーンバレー騎士団とは全然違うなあ。私達関係者席にはアシュレイ様とベル様も同席してくれていて、そのため護衛のグリーンバレー騎士団も5名ほど傍に居る。護衛に付いている騎士の皆さんはポーカーフェイスなのだけど、ちょっと怒っているようなピリ付いた気配がするかも。

 ステファンさんは微笑んでいるけど、こめかみにはバッキバキの青筋が。ステファンさんはガチでノアの信奉者だからなあ。

 騎士団の皆さんは一緒に訓練をしたノアには仲間意識的な物を持ってくれているのかも。ノアが相手の騎士を全く相手にしていないので、私は割とまだ冷静でいるのだけど、ノアの為に怒ってくれる人がいるって嬉しいなあ。この観覧席に集まっている人達は、みんなノアの味方だ。見知った人達の中に居るので、ここは王都だけどとても安心できる。

 そしてそのグリーンバレーチームにしれっと第二王子が入っていた訳だけど、アシュレイ様もビアンカ様も好きにさせているので私がとやかく言う事でもない。

 この広い競技場の中心にいるノアと対戦相手の会話がこちらまでしっかり届くのは、風魔法を使って観覧席まで届けているからだ。大昔は娯楽として命を掛けた剣闘士の試合が王都では定期的に開かれていて、剣闘士の戦いの際の音をしっかりと観客席に届けるシステムは古くから魔法を使って確立していたのだそう。

 なので、ノアが相手の騎士に小馬鹿にされている様子もしっかりとこちらまで聞こえてきた訳である。

 ミンミは「あいつ、ムカつく!」と相手騎士に憤慨していたけど、あの騎士は自分の発言をすぐ後悔する事になるからきっと大丈夫。

 ビアンカ様は「5秒だな」と言った。

 そしてビアンカ様の予言通り、開始5秒でノアは相手の木剣をスパンと半分に切り、相手の身体に蹴りを入れた。対戦相手はノアの蹴りを受けて、体を九の字にしたまま5メートル以上横っ飛びになってからドオンと地面に落ちて動かなくなった。

 一瞬会場が静まり返った後、競技場は大歓声に包まれた。

 確かに、ビアンカ様が言う通りに5秒で決着がついた。

「・・・し、勝者ノア!では次の者、前へ!」

 一応競技場には審判役の人もいるけど、審議するまでも無い。ノアの対戦相手は意識を失って戦闘不能になっていた。審判者が次の対戦相手を呼んだ。

 次のノアの前に出てきた王国騎士団の人も身長がノアより頭1つ分デカい。今度の騎士は、手には木剣ではなく鉄剣を持っている。ノアを侮れないとやっと騎士団側も警戒をし始めた様子。でもこの騎士も防具無し。真剣でならノアに勝てると思っているんだろうなあ。

 2人目の騎士はノアに最初の一太刀で剣を叩き折られて、1人目と同じように胴体に蹴りを入れられて、競技場の端っこまで飛んで行って地面に落ちた。2人目の騎士も気絶して、戦闘不能となっていた。

 1試合目は、勝者ノアに対してワッと歓声が上がっていた。けれど2試合目の勝負がついた時、会場はシンと静まり返っていた。

「・・・つ、次の者、前へ!」

 審判者の上ずった声が会場に響く中、3人目の騎士が競技場の中央に進み出てきた。

 3人目の騎士は上半身に革の鎧を着こみ、鉄剣をノアに向けて構えた。そして1分もたたずにノアに蹴り飛ばされ、競技場の端に飛んで行って落ちた。

 ノアの対戦者は防具も武器もどんどん大袈裟な物になっていった。けれど、誰が出てこようが、無慈悲なまでに結果は同じだった。ノアが初手で相手の剣や武器を叩き折って、場外に蹴り飛ばして相手は失神、戦闘不能。

 中には高名な騎士も居たみたいなんだけど、会場がノアの対戦者に送る期待の声援は、終盤にはピタリと止んでしまっていた。最後の方は、蒼褪めながらノアの前に立つ対戦者たちを憐れむような空気が会場に漂っていた。しかし予定通りに、10人の対戦者がノアの前に立った。

 最後の10人目を場外に蹴り飛ばして、相手が地面に落ちると共にノアは第一王子に優雅に一礼した。ノアは髪も着衣の乱れも無く、汗1つかいていなかった。

 人知を超えた力を持つ相手には、かえって恐怖を覚えてしまうのかもしれない。競技場の観客達は、息を殺し、無言でノアを見下ろしていた。

 ノアは今、競技場に居る人達からバッチリと恐怖の対象として見られているけど、辺境の地に現れた勇者設定じゃなかったっけ。力を示す為とはいえ、容赦なさ過ぎだったのかも。頼もしい勇者が現れた!と王都の人々に歓迎されるどころか、人の身としては強すぎるやばい奴認定をされてしまったのでは・・・。

「す・・・・素晴らしい!!」

 そんな緊張漂う会場の空気を物ともせず、声を上げたのはボックス席にいる黒綿王子だった。黒綿王子はボックス席で立ちあがった。黒綿がみょんと細長く伸びる。

「素晴らしい力だ、ノア・ブランドン!なるほど、自ら勇者と名乗るだけの事はある。我が国の手練れの騎士10人全員がお前に全く歯が立たなかったのだからな。良いだろう、その力、私の元で存分に振るうが良い。お前をこの第一王子の親衛隊に取り立ててやる!」

「お断りします」

 しかし、熱のこもった第一王子の勧誘に対して、氷点下のノアの返答が静まり返った競技場に響いた。

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