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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編

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それでは私の力をお見せしましょう 2

 謁見の間は王城の2階にあり、王都を見渡せるバルコニーに出られるようになっている。

 私は第一王子の許可をとって、バルコニーに出て、白竜に呼びかけた。

「白竜―。ちょっと遠いけど、王都まで来られるー?」

 人間達の興味本位で王都まで呼びつけるなんて、申し訳ないな。でももし予定が空いていたら来てもらえないかな。

「白竜ー。今、忙しいー?」

 そんな私の弱気な内心が悪かったのか、バルコニーで5分ほど待っても白竜はやってこなかった。うん、こういう予想もしていたからね。多分、私の気持ちがどっちつかずで切迫感が無かったから駄目だったような気がする!

「ダメでした」

 体感10分が過ぎる位までバルコニーで粘って、私は謁見の間に戻った。

「そうか。大森林から王都はだいぶ離れているからな。仕方が無かろう」

 と言いながらも、黒綿人間の第一王子からホッとしたような雰囲気が伝わってくる。

 そうだよね、王都に何の注意喚起もせずに白竜を呼び出したりしたら大騒ぎになるしね。第一王子もホッとする位なら白竜を呼べとか言わなきゃいいのに。第二王子が「私は見ました」なんていうから引くに引けなくなったんじゃないかな。

 第二王子による白竜の報告もあり、内心第一王子も私の白竜召喚失敗に胸を撫でおろした感じなので、白竜を呼べなかった事に対して私へのお咎めは無かった。

「して、カノン。何やらジュリアンが言うには、他にも不可思議な力を使うとの事だが」

「あ、はい」

 あっさりと第一王子は白竜の件から話題を変えた。もともと眉唾な話だったろうしね。

「私は、人や獣に纏わりつく穢れを見る事が出来ます。穢れとは、怒りや、恨みや、嘆きと言った負の感情の呪いの塊だとビアンカ様から教えてもらいました。私の目にはその穢れは黒いもやのように見える事が多いです。そして私は、その穢れを払う事が出来ます。あとは、体を強化する支援魔法や、治癒や回復の魔法や、清浄の魔法が使えます」

 全部出し切った!

 もう私の引き出しは空だよ。もう全く、何もないんで!

「第一王子。カノンは稀有な力を持つ聖女だ。解呪の能力など、この世界においても唯一カノンだけが持つ力だろう。私もその解呪を受けて、長らく苦しめられてきた穢れから解放された。今私は全盛期の力を取り戻しているぞ。カノンは女神フォルニが我がアストン王国へもたらした愛し子だ。粗末に扱えば女神より天罰が下ろう」

 そしてビアンカ様が隣から物凄い業火で私の援護射撃をしてくれる。女神フォルニの愛し子とか、そんな設定初耳なんだけどー。

「そして、カノンは穏やかに大森林のほとりで暮らすだけで、森へ恵みをもたらす。第一王子、我が国の益を考えても、カノンは好きに過ごさせるのが一番の有効活用だぞ」

「ふむ」

 ビアンカ様の言葉に黒綿王子は再び考え込む素振りを見せる。

 しかしビアンカ様は第一王子にも敬語は使わない、敬称すら付けない。ビアンカ様は未だにお城での力が強すぎる。第一王子もビアンカ様に文句言わないもんなあ。

「カノン、そなたは色々と不可思議な存在なのだな」

「・・・そのようです」

 不可思議って、微妙な言い回し。誉め言葉ではなさげ。

「治癒や清浄魔法などは、教会の聖職者や騎士にも使える者がいるが、解呪の力とは初めて聞いた。今ここで使えるか?」

「使えますが・・・、私は解呪の対象に触らなければならないのですが」

 今、物凄く解呪すべき人が居ます。それは黒綿王子、あなたです。

 なんて、言えないなー!

 ビアンカ様、穢れは負の感情の呪いって言っちゃったもんね。

 今第二王子も同席しているし、誰が呪ったんだとか言う話に転がる恐れもある。

「そうか、この場に穢れがある者はいるか?」

 まあ、今日は軽いジャブ位で。

 私の解呪の能力を初披露なので、ターゲットは軽い穢れの人にしておこう。黒綿王子はちょっと大物っぽいので次の機会があれば。

「第一王子殿下の後ろの騎士様と、殿下のお隣の方に穢れがあります」

 私に指名された2人はギョッとしていたけど、私の解呪披露に付き合っていただく。

 いきなり第一王子を解呪しますと言っても、ポッと出のエスティナから来た田舎娘が第一王子に触れさせてもらえないと思うので。

 第一王子からの許可もでたので、第一王子陣営であろうお2人に私の傍まで来ていただく。

「あと、解呪をした後は魔力を回復させるためにすぐ食事が必要になります。この場で食事をしても良いですか?」

「魔術士が魔力の回復のために大量に食事を要する事と同じだ」

 ビアンカ様の補足説明のお陰で、この絢爛豪華な謁見の間での食事も第一王子にご許可いただく。

 するとノアが謁見の間の壁側に寄り、カッコいい衣装を着ても肌身離さず身に付けているウエストポーチから厚手の敷物を出し、ちゃぶ台みたいなローテーブルを出し、その上に料理を並べ始めた。それを、申し訳なくも領主婦人のベル様が手伝い始める。

 そして指名されてギョッとしていた騎士さんと第一王子の側近ぽい方が、恐る恐る私の方へと近づいて来た。そんな、怖がらなくても。

 覚悟というか諦めをもって近寄ってきてくれた2人を改めて見る。騎士さんも側近さん(仮)も、2人共胸元がもやもやしているんだよね。これまた初対面だと触りにくい所に・・・。

 もやもやはそんなに大きくも濃くも無いかな。つい最近モヤッとしちゃったのかな、位の物で、年代物ではない感じだけど。

 2人に最近怪我をしたり、体に痛みはあったりするか聞くと、心当たりはないとの事。ふーむ。周囲か自身の負の感情の影響を受けた呪い系なのかなー。エスティナの冒険者達の怪我にくっ付くもやもやは、狂暴化した獣の黒いもやもやが移ったものみたいだけど、大森林から離れた王都の真ん中に居て獣に襲われる事はまず無いだろうしね。

「すぐ終わるので。ちょっと触りますね。・・・消えろ」

 私は2人に並んで立ってもらい、一息に解呪を終わらせようとした。

 最初の騎士さんの黒いもやは煙のようにあっという間に空中に溶けてなくなった。けれども側近さん(仮)の黒いもやは氷山の一角だった。

 胸に手を当てて聖女の力を行使し続けても、黒いもやもやが消えて無くならない。しばらくすると、側近さん(仮)の胸からは真っ黒い柔らかめのスライムみたいな粘着質の穢れが溢れ出てきて、私の手の甲をあっという間に飲み込んだ。黒いスライムは私の腕を伝って肘まで流れてきて、謁見の間の床にどろりと落ちた。

「うわ」

「えっ?!えっ?!な、何か?!」

 私があげた声に私以上に側近さん(仮)が驚きの声を上げる。

「大丈夫です。何でもありません」

 私の声に過敏に動揺する側近さん(仮)に私は平静を装う。

 物理的には何の問題も無いのだ。私個人の視覚的にギョッとするだけでね。

 私が何をしているかも不明だろうし、黒い穢れが見えるのは私とビアンカ様だけだもんね。ビアンカ様は「ふむ、なかなかだな」とか言っているけど、ビアンカ様に見える穢れは視覚的には私が見える物よりずっとソフトみたいだからね。白竜の穢れが黒い総レースのおくるみだったんだもん。なんで私の見る穢れはこんなに気色悪いのか。

 床にデロンと落ちた黒スライムは、側近さん(仮)から離れると、床の上でシュワシュワと溶けるように消えていった。

 このブヨブヨ且つ柔らかめの黒スライム。ゴポゴポと側近さん(仮)胸から後から後から溢れ出てくる。うううん。過去の解呪で1位2位を争う位の気持ち悪さなんだけど。それでも、ビアンカ様の黒ペンキファウンテンは超えないか?なんか、ここの胸の奥に穢れの塊とかあるのかなあ。一気に引っこ抜けたらいいのに。

 そう考えていたら、私の掌を固いものがグーッと押してくる。

 な、なん・・・、この塊。

 両手で掴めるくらいの筒状の形だ。掴んで引っ張ると、黒い円柱がずるりと10センチほど引き抜けた。勢い付けてスポンと引っこ抜くと、側近さん(仮)の穢れは瞬時に形を変えて、霧状になり、円柱の棒が引っこ抜けた穴から勢いよく噴き出してきた。私にもガンガンと穢れが吹き付けられる。うぐうう、精神的にキッツイ。

「消えろ!」

 穢れの噴霧を受け続ける責め苦に耐えられなくなり、私は思い切り叫んだ。私が叫ぶと共に側近さん(仮)の穢れは消え去り、私は空腹を誤魔化すのも限界を迎えた。

「第一王子殿下!」

「う、うむ」

「お2人の解呪は終わりました!それでは失礼します!」

 第一王子の反応がイマイチ鈍かったような気がするけど、私はもうそれどころでは無かった。

 振りかぶって第一王子に一礼してから、私は回れ右をして謁見の間の隅の一角に準備された私の為のフードコーナーに突進した。敷物の上にスライディングして、ローテーブルの前に私は勢いよく正座する。

「いただきます!」

「カノン、お疲れさまでした。遠慮なくどうぞ」

 ローテーブルの上には手づかみで食べられるサンドイッチや焼き菓子、ミニパイが山盛り置かれている。私は空腹に任せて思い切り食べ始めた。

 食べながらちらりと第一王子の方を見ると、何だかビアンカ様が第一王子に色々と解呪についての話をしているようだ。

 私の手持ちのカードはもうこれでおしまいだからなあ。さっきの解呪が第一王子にイマイチ響かないようだったら、第一王子が私に興味を持つ事はもう無いだろう。

 そんな事を考えながらも、私の食事の手は止まらない。そして準備された料理の全てをお腹に収めて、私の空腹はやっと落ち着いた。このノアの、私のお腹の様子を把握する無駄スキルよ。幼児退行を起こしてばかりの頃も凄いと思ったけど、小食時も大食い時も私の胃袋の容量を把握しているなんて、すごすぎない?

「ごちそうさまでした!美味しかったー」

「良かったです。王都の名物料理を今度は買い込んでおきますね」 

「カノンちゃん、たくさん食べられるようになったのねえ。良かったわ」

 出された料理をぺろりと平らげると、ノアとベル様はニコニコ顔で後片付けに動き始めた。私はちょっとお腹が一杯になっちゃったので、ノアから食休みをするように言い渡される。まさに至れり尽くせり。何から何までお世話になります。

 ベル様は幼児退行を繰り返していて、小鳥の食事ほどの小食な私の印象が強かったらしく、普通の成人女性並みの食事をするだけでも良かったわと喜んでくれていた。でも今の暴食は普通の範疇から大きく外れていた筈だけど、ベル様は今の私の大食いについても一緒くたに喜んでくれる。ベル様は可憐な妖精のような見た目に反して漢気もあり、アシュレイ様を包み込む優しさもあり、非常に大らかな領主婦人だ。

 そして肝心の解呪の効果だったんだけど、2人の感想は「何やら気分爽快でさっぱりしました」と、まるで清浄魔法を浴びた後のような感想だった。確かに解呪はされたと、ビアンカ様からの説明もあったんだけどね。

「驚きの食欲であった。騎士10人前ほどの食事をお前ひとりで平らげたのではないか?大したものだな」

 と、第一王子からは私のフードファイトへのコメントをいただいた。

 違う、そうじゃない。

 見て欲しかったのは、そこじゃないんだよなあ!


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― 新着の感想 ―
奇人枠に入っちゃった!評価が下がるのはいいけど、ノアはそう言うわけにもいかないよねえ。どうなるのかな
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