招かれざる客の処遇 5
短いです。
この日は結局、問題の整理どころか問題が更に増えてしまった。
この日一日だけで、領主館での第二王子との面談、更に第二王子を引き連れて白竜を呼び出して色々と質問をした。一日の密度が濃かった。
第二王子の光の正体については白竜から回答を貰う事が出来た。そして新たにサージェ先生たちを悩ませる案件が浮上してしまったみたいだけど、これに関しては王城に居る王族達と偉いお貴族様達が考えればいい事だろうから後はお任せだ。
この日を境に、ビアンカ様とサージェ先生の第二王子への当たりが少し柔らかくなった気がする。
第二王子は軟禁も解かれて自由の身となったのだけど、エスティナに滞在を続けている。ビアンカ様は一応王族である第二王子を放り出す事も出来ないとぼやきながら、エスティナの領主館で第二王子の身柄を預かり続けていた。
そして、それからしばらくしてアシュレイ様から私とノアに領都へお呼び出しがかかった。
至急話し合いたい、との事だったので、私とノアも速やかに領都に向かう事にした。
サージェ先生はエスティナの調査をいったん保留にし、既に王都に戻っている。
私とノアは領都に呼び出される事を予測していたので、今日まで旅の準備を入念に行ってきた。特に私の非常食。どんな場所でも次々口に放り込める料理ね。ギャン泣きしながら爆食する事は今後二度と無いようにしたいんだよ・・・。
領都に向かう街道入り口では、私達の見送りにケネスさんとアリスが来てくれていた。
アリスの目は真っ赤だった。これは今日、私達と別れるからではなく、昨日スタンレーに旅立っていったラッシュの見送りでアリスが号泣したからだ。
冒険者ギルドからスタンレーに送りこむ諜報員の選定だったんだけど、エスティナの冒険者からはラッシュが選ばれた。ラッシュはこれまで何度かスタンレーに行った事もあって土地勘もあり、何よりラッシュのコミュニケーション能力の高さが決め手だった。領都のグリーンバレーギルドからも諜報に長けているベテラン冒険者がやってきて、ラッシュと組んでスタンレーに情報収集のために向かう事となった。
そのラッシュの見送りの際、アリスが驚く位大号泣していたのだ。ラッシュの前で泣きじゃくるアリスをよしよしと宥めるラッシュの顔は、見たことも無い位に何とも柔らかい。
んんんー?と2人を眺め、ミンミを見ると、ミンミは片手で口元を押さえていた。でも目が笑っている。これは・・・、恋の予感では?!
あんな優しい顔したラッシュ、初めて見たかも。おおお・・・!これはエスティナ伝統の秘密の乙女会を至急開催しないと!
エスティナ秘密の乙女会とは、未婚の女子が夜に集まり、夜通し飲み食いしながらターゲットの恋バナを根掘り葉掘り聞き出して吊るし上げるという、楽しくも恐ろしい集まりなのだった。
でも残念なことに、ラッシュの旅立ちの翌日には私もエスティナを発つと決まっていたのだった。これは色々と片付けて、さっさとエスティナに戻ってこなければな!
「カノン、ノアさん、ミンミ、行ってらっしゃい!」
そんなアリスは、昨日のラッシュとの別れの際の大号泣とは打って変わって、今日は一切泣く気配無し!目元は昨日の号泣の名残で赤みが残っているけど、全然余裕の笑顔だった。
昨年私が領都に行くときはあんなに号泣してくれたのになあ。あなたの大好きなお姉ちゃんがしばらくエスティナから離れるんだけど?うん、全然泣きそうにないな。
でも笑って送り出してくれるのも、残す人達を心配せずに旅立てる。お見送りってやっぱりありがたいものだなあ。
「カノン、ノア、ミンミも気を付けてな。お前達の帰りを待ってるからな」
そして前回の領都行きの時と同じように、ケネスさんが色々な人から預かった餞別をノアに渡す。ケネスさんは背負ってきた大きなリュックから、次々と携帯食や果物、大きなサラミとかを出す。どんどんと出し続ける。ケネスさんのリュックはマジックバック機能が付いていたみたいで、見た目の10倍は容量があるそう。それでも見た目が大きいマジックバッグはお安い価格帯だそうで、ノアがビアンカ様から貰った小さなポーチタイプはまず庶民には手が出せない代物だそう。この見た目の小ささで、ケネスさんのマジックバッグの数倍量の収納があるというから驚きだ。そして今回の餞別は、ノアが時間停止機能が付いたマジックバッグを持っていると話が広がったからか、日持ちする携帯食以外に具沢山のサンドイッチとか、鍋丸ごとの煮込みとかまであった。ありがたい。いざという時は頼らせてもらうからね。
ケネスさんから貰った餞別は余裕でノアのポーチに全て収まった。
「カノン、幼児退行を起こす程に聖女の力を使っても大丈夫ですからね。2回の幼児退行を凌げるほどの食料は私一人でも準備していますから」
「私のポーチにもご飯入っているからね!」
ノアの隣でミンミが腰のポーチをポンと叩く。
今回もミンミが私の護衛として付いて来てくれるので、心強い事この上ない。今回グイードは防衛主力としてエスティナに残る事となった。グイード達パーティは単独で動く事もあるので、今回も適材適所、ミンミとラッシュは単独任務をそれぞれ請け負う事となった訳だ。
しかし、ノアとミンミが大量の食料を持っている事の安心感が半端ない。
魔力が減った時の飢餓感は、幼児退行後は本当にとんでもなく辛かった。出来れば幼児退行するまでの魔力の行使は避けたい所だけどねー・・・。魔力がゆっくり回復するのって、逆にあの狂おしい飢餓感を防ぐためのセーフティ機能だったのかなと、今更ながら思ったりして。
でももう、制限が解除されてものすごいスピードで魔力が回復すると共に物凄い空腹を覚える体になってしまったからね。魔力を使ってもすぐ回復できる体になった事を喜ぼう。そして、絶対にご飯のストックを切らさない事を肝に命じないと。私も多少の携帯食は常に持っておくようにしよう。
「よし、カノン、ノア。そろそろ行くか」
そして、私達と一緒にビアンカ様も領都に戻る事となった。春にサージェ先生達とエスティナにやってきてから、ビアンカ様にとっても思わぬ長期のエスティナ滞在になってしまったよね。
「よし、者共。そろそろ出発するとするか!」
そして、なんとというかやっぱり。
私達と一緒に第二王子も領都グリーンバレーに戻る事となった。
第二王子の護衛としてエスティナに残っていたビアンカ様が領都に移動する事になったから、まあ護衛の都合上当然の措置ともいえる。エスティナの領主館に第二王子一人を置いておけないしね。取り合えず第二王子は現状王都から距離を取れていれば良いんだろうから、今後のお世話は領都のアシュレイ様に直接お任せしようという事になったのだ。
第二王子の馬車の護衛にはグリーンバレーの騎士団が付いている。昨年の領都行きと比べると結構な大所帯となった。
調子に乗ってリーダーよろしく号令を発した第二王子は、騎士さん達によって丁重に馬車に詰め込まれていた。一緒に馬車に乗るかと第二王子に声を掛けられたけど、それは丁重にお断りしておいた。私とノア、ミンミは前回と同じく馬で領都を目指す。セイラン号、またよろしくね。
今後の動きがどうなるかは、まずは領都に行ってから。
アシュレイ様が打合せしたいという案件について、取り合えず話を聞かないとね。
次エスティナに戻ってこられるのはいつになるのかな。
夏の盛りのエスティナを離れ、私達は領都へ向けて出発した。
誤字報告、ありがとうございます。
助かります!(*'ω'*)/★




