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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地を目指す  作者: ろみ
アストン王国地固め編

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招かれざる客の処遇 4

 つまり、白竜が言う第二王子の命の息吹って、金色の光の事なんじゃないかな。

「白竜は、殿下の金色の光が前より小さいと多分言ってます」

「ふむ・・・。以前に白竜と会った人の王とは、ひょっとして先代のラシード王の事かもしれん。大きな獣害が出れば、その度にラシード王はグリーンバレーに訪れ、エスティナの民と冒険者を直接労わり、手厚い復興支援を行った。その際に白竜と接触したのか?」

 金色の光を見て、白竜は第二王子を先代のラシード王だと思っているのではないかというサージェ先生の考えだった。

「白竜。人の王と最後に会ったのは、いつ?」

『人の王は前に一度、我の寝床に供を引き連れて現れた。娘、お前達が我を訪ねてくれた時のように、我の前に肉と酒を置き、人に近づくなと人の王は言った。元より我は人と関わらぬ。人の王には良と答えた。人の王が我を訪れたのは、同胞達が人と争い、その多くが命を落とした頃の事だったか・・・』

 白竜から話を聞けば聞くほど、白竜の言う「人の王」はラシード王としか思えなかった。私達の白竜解呪作戦の時のように、先代ラシード王は白竜にお肉とお酒を捧げて、人里に近づかないように白竜に頼んだらしいとサージェ先生に伝えれば、「ラシード様!なんと危ない真似を!」とサージェ先生は既にお亡くなりの先王に怒っていた。

 先王の白竜訪問をサージェ先生は全く知らなかったらしい。フットワークが軽すぎる主を持つのも大変そうだな・・・。

 ともかく、白竜の証言からも、先代ラシード王はビアンカ様に見えていたような金色の光を身に纏っていたらしいと想定する。

「白竜、こちらに居るのはジュリアン第二王子殿下。白竜が会った人の王、ラシード王のお孫さんなの。先代のラシード王と、ジュリアン殿下が纏う命の息吹は似ているの?」

『・・・人の王ではなかったか。同じ光を纏っていたので人の王かと思ったのだが。人の王が纏う光は、まさに王たる者が纏う魂の輝きよ。その輝きに周囲のものは引き寄せられ、輝きを持つ存在を周囲のものは王に戴くのだ。それは人も獣も変わらぬ』

「・・・殿下が纏う光は、魂の輝きで、人や獣の王が持つ輝きだそうです。その輝きを持つものが、人でも獣でも王となるそうです」

 白竜の言葉を伝えると、ビアンカ様とサージェ先生は再び考え込んでしまった。

『穢れを払え。王の子』

「ひぇっ・・・!」

 白竜はノアの後ろで恐怖に固まる第二王子に、ノアの頭上越しに鼻先を近づけて鼻息を吹きかけている。白竜的に第二王子の穢れが気になるみたいだけど、私には第二王子の穢れが見えないんだよなあ。

「ビアンカ様。白竜が殿下の穢れを気にしています。私には殿下の穢れの位置が分かりませんが、ビアンカ様には見えますか?」

「うん?どれどれ・・・」

 ビアンカ様が第二王子に近づき、おもむろに殿下の頭をわし掴んだ。もう私達の終始不敬な言動に慣らされてしまったのか、第二王子は不敬不敬と騒がなくなってしまった。

 されるがままの第二王子の頭を掴みながら、ビアンカ様はふむとか、ほおとか言っている。

「お前・・・。悩みが無さそうに見えても、お前なりに鬱屈するものもあったのだなあ。凝り固まった年代物の呪いが奥底にあったぞ。カノン、ここだ」

 ビアンカ様が第二王子の頭から手を離し、第二王子の額をトンと人差し指で突いた。すると、私にはやっと第二王子の黒い穢れが見えるようになった。第二王子の穢れは、額の上に500円玉位の半球体として浮かび上がってきた。そして、第二王子の額に埋め込まれているかのように、第二王子の額の中央でつるりとした光沢を放っていた。それは、宝石のようなきらめきを放っていて、今まで黒いもやとか穢れに感じた事のない美しさすら感じた。

 でも穢れは穢れだからね。

「ビアンカ様、見えました。払います」

「うむ」

 ビアンカ様の指と入れ違いに私は第二王子の額に指先を添える。

「消えろ」

 私が念じると共に、第二王子の額に嵌まった宝玉のような穢れはパリンと儚く割れて、粉々になって空中に溶けて消えた。

「あっ・・・」

 第二王子にも自分の中の穢れが消えた感覚が分かったのかもしれない。小さくつぶやくと、それからフーッと息を吐き出した。

「・・・娘。お前、私に何を?私が常に抱えていた漠然とした不安と気の重さが奇麗に消え去ってしまった。こんなに晴れ晴れとした気持ちは、長らく感じた事が無かった。まるで何の憂いも無かった幼い頃に戻ったようだぞ」

「お、おわー・・・」

 私に第二王子が話しかけてくるけど、私はそれどころでは無かった。

 第二王子が、私が直視できない位に金色に輝きだした!

「眩しい!!」

 それと、お腹が猛烈に減った!!

 私が目を両手で押さえると同時に私のお腹が鳴る。こんな、女性の沽券に関わるような体質になってしまって・・・。ちょっと聖女の力を使うと、私、お腹が鳴るのを免れない恥ずかしい体になってしまった。

「カノン、ローストエルクのサンドイッチですよ」

「いただきます!」

 私は第二王子の隣で恥も外聞もなくノアから貰ったサンドイッチに齧り付く。うま!肉分厚い!

 第二王子に引かれているかもしれないけど、第二王子はまるで太陽のように発光しているので表情がさっぱり分からない。眩しすぎるので、第二王子には背中を向けて、私はもりもりとノアから手渡されるサンドイッチを食べ続け、大皿三つのサンドイッチを空にした所で私の食欲は落ち着いた。

「よしよし。すごい勢いで魔力が回復しているぞ」

 頷きながらビアンカ様が私の頭を揉む。

「カノン。お前は、魔力感知はさっぱりだが、人の呪いや穢れ、魂の強さと言った物を見られる魔眼を持っているのだ。私と同じだな。お前の魔眼は私よりも見えすぎるようだがな」

 魔眼!

 私の黒いもやが見えるのは、そんなチートスキルだったんだー。

「第二王子が眩しくて直視できぬのだろう?焦点を合わせ過ぎだ。遠くを見るようにしながら、第二王子の姿をぼかすようにして見てみろ」

「はい。う、うう・・・」

 ビアンカ様の言う通りにしてみると、直視できない太陽状態だった第二王子の光が収まってくる。最終的には室内の暖色系ダウンライト位の発光程度の見え方になり、第二王子の顔も視界の端に見られるようになった。そして第二王子は、突然成人男性の食事3食分のサンドイッチを平らげた私に未だドン引きしていた。別にいいけどさ。

 私が額に浮かび上がった穢れを払った後の第二王子は、もうピッカピカに光り輝く王子となっていた。

「ビアンカ様。殿下が物凄く光ってます」

「うむ。先代と遜色のないほどに光っているな」

『うむ。本来の強い輝きを取り戻したな。新たな人の王の誕生だ』

 私とビアンカ様の会話に白竜が自然に参加してきた。

「白竜が、新たな人の王の誕生だと言っています」

「・・・・・」

 ビアンカ様とサージェ先生は再び黙り込んでしまった。

 第二王子の発光現象の謎を解くために白竜に会いにやって来たら、新たな問題が持ち上がってしまった。

「ふ、ふふ。ははは!」

 そして問題の根源となっている第二王子は、何が面白いんだか笑い始めた。

「聞いたか、サージェ。ビアンカ。白竜が俺を王と認めた。これ以上の後ろ盾があろうか!オーガストと白竜の支持を得て、俺は王太子になる!俺が王となった暁には、お前達に手厚く酬いると約束しよう。お前達、俺のものになれ!」

「いや、断る」

「クソガキが」

 元気を取り戻した第二王子に対して、サージェ先生とビアンカ様はブレない対応を返している。

「白竜!俺を人の王と認めたな!ならばこれから俺の味方をしてくれ!」

『我は人の営みには関わらん』

「ありがとう、白竜!」

 第二王子、ポジティブー。白竜の鳴き声を思い切り都合よく脳内変換している。

 元々底抜けに陽気なポジティブキャラって感じだったけど、そこに今は勢いよく溢れ出して止まらない万能感のようなものが加わっている。

「娘。いや、カノン。礼を言う。長年頭を押さえつけていた重しがすっかり取り払われたような心地だ。このような晴れやかな気持ちになったのは生まれて初めてだ」

「あ、はい。どういたしまして」

 穢れを内部に抱いていてなお、あのご陽気キャラだったとは驚きである。

 あの額に埋まっていた宝石のような、見た目は美しい穢れは、第二王子に何かしらの身体的不調をもたらすものではなかったようだけど、心を重くする作用はあったみたいだ。

「・・・・母上の言いつけがずっと心にあった。兄上より目立つな。兄上より優れた所を周囲に見せるな。それが俺と母上を守る事になるからと、幼い頃から何度も言われ続けて来た。だが、母上は俺を王宮に残して去った。常に兄上を立てて母上の言いつけを守ったが、それが俺の身を守る事にはならなかった。だからもう、俺は俺が思うがままに生きる事にするぞ!」

「眩しい!」

 第二王子は破顔すると共に強く輝いた。私は不意打ちの目潰しを食らって両目を押さえる。

 この光の強弱は、第二王子のテンションで左右される感じなのかもなー。今、第二王子のテンションは無敵ゾーンに入っているみたいで、とにもかくにも私にとっては眩しい。見かねたノアが私と第二王子の間に立ってくれた。ふう。

 胸のつかえがとれたのか第二王子は非常にご機嫌だったけど、そんな第二王子にビアンカ様は一つ質問をした。

「王子。このままお前が身を引けば第一王子が次代の王となる。その方が国の混乱も少なく済むだろう。それでもお前は第一王子と争うというのか。第一王子と争い王となり、お前はこの国をどうしたいのだ」

「正直に言うと、王になってやりたい事は特に無いがな」

 ビアンカ様の問いに、第二王子は悪びれることも無くそう答えた。

「だが、俺は王になる。王族の務めとして、自己を犠牲にして兄上に殺されろというのか?俺に恐れをなして俺を殺す事に執着するのは、ひとえに兄上の心が弱いからだ。兄上の弱さの尻拭いを、俺は俺の命をもってしてやらねばならないのか?そんな馬鹿な話があるか。無責任に母上を召し上げた父上にも、俺を産み落としただけで碌に俺を守ってくれなかった母上にも、俺の言葉を聞こうとせず俺を一方的に敵視する兄上にも、俺はもう気を使う事はやめる。国の混乱だと?第一王妃と兄上に阿っていた者達が混乱するだけの話だろう。王が誰になろうとも、国民の生活は変わらずに営まれていくのだ。だが、それでいい。俺が王太子に、国王になりたいのは、俺が憂いなく安らかに生きていくための唯一の手段だからだ。それ以上でも以下でもない。何か文句があるか!」

 第二王子は一息に言い切った。

 第二王子は依然強烈に発光しているので、私はノアの背中を見ながら第二王子の主張を拝聴した。

 しばらくすると、サージェ先生がくっくっくと喉を鳴らして笑い始めた。

「ふん、開き直りおって。だがまあ、文句は無い」

「あっはっは!俺も文句は無いな」

 第二王子のぶっちゃけに、サージェ先生は大笑いし始めて、ビアンカ様は矛を収めた感じ。

 気軽に私に呼び出された獣の王たる白竜は、人の王の命の息吹が勢いを取り戻した事に満足して自分の寝床に帰っていった。

 帰り際にお返しだ、と言って右手に握っていたニードルボア(5メートル級)をキュッと絞めて第二王子の前にどさりと落とした時には、第二王子は腰を抜かしてしまった。辺境に生まれて初めてやって来た箱入り王子様だから、魔獣に免疫無くてもしょうがない。

 白竜は前にもらった肉と酒のお礼だと言っていたので、第二王子のお爺さん、先代のラシード王へのお礼みたいだった。ラシード王は白竜へのお願いの為にお供えをしたのであって、白竜からのお礼なんて期待してもいなかったろうけど、白竜は義理堅いなあ。

 第二王子は腰を抜かしながらも、白竜にお礼を言っていた。

 ついでに私にまでお土産の大型魔獣を更に数匹もらった。お肉も素材もエスティナだけで消費できないから、値崩れするのも構わずにガンガン領都に運んでいるらしい。

 白竜だけで結構な数の大型獣をだいぶ間引いてくれたんじゃないかなー?


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